報告

2014年09月30日

メディアプロデュース学部 メディアプロデュース学科 都市環境デザイン専修 内藤廣講演会「アタマの現場」

内藤廣講演会「アタマの現場」

平成26年7月30日(水) 長久手キャンパス 511教室

挑戦的な建築をつくり続ける内藤氏の講演会を開催。

 建築の本質を追求し、新たな空間の価値を提供し続ける建築家・内藤廣氏は、総合的な街づくりを実現するための専門家ネットワーク「GS デザイン会議」の発起人として、また、東日本大震災以降は国・岩手県・陸前高田市などの復興にも尽力するなど、さまざまなジャンルで活躍しています。この内藤氏の思考の過程を伝える展覧会が7月26日(土)から8月10日(日)までの16日間、長久手キャンパスにて開催されました。この会場づくりや運営に力を注いだのが、都市環境デザイン専修の3年生32人です。会期中は建築業界の方や建築を学ぶ学生、オープンキャンパスに来場した高校生、さらに内藤氏が訪れ、学生たちが創り上げた空間をじっくりと鑑賞していました。

 7月30日(水)には、関連イベントとして「アタマの現場」というタイトルの講演会を開催。内藤氏は講演会の前半は加速度的に進化していく社会における建築の在り方について語り、後半はこれまで手がけた建築作品についてスライドを用いて解説していきました。本学の学生だけでなく、建築業界の方や内藤氏のファンの方など、学外の方々も多数参加していました。

社会や未来を考えることで、建築のあり方が見えてくる。

 「たとえば、耐久性の高い建築を考えるというとき、具体的には100年ぐらい保つ建築を考えようとするはずです。しかし、100年とは一体どんな時間なんでしょう?」と問いかけた内藤氏。「建築は人が生活する空間に向き合っているものです。ですから、社会の動きや世の中のあり方と切り離して考えることはできません。この10年前後を振り返ってみても、9.11のテロが起こり、新潟県中越沖地震が起こり、リーマン・ショックが起こり、東日本大震災が起こりました。10年後にはコンピュータの情報処理スピードが今の1000倍になっていると言われる時代です。この流れの中で建築はどうあるべきか、考え続けることが何よりも大切なことではないでしょうか」と建築を学ぶ学生たちに語りかけました。その上で、現在も関わっている被災地の現状や渋谷の再開発についてエピソードを交えながら解説。超高齢化による人口減少の問題やリニア新幹線の開通についても話題が及び、社会と建築を深く見つめる内藤氏の話に、来場者の皆さんは引きこまれていました。

一つひとつの建築の姿は違うが、その中に流れる空気感は一緒だ。

 防災安全性を追求しつつ地場産の木材を外壁などに多用した「安曇野市庁舎(2015年竣工予定)」。国内最大の3000人を一堂に収容できる「九州大学 椎木講堂」。コンクリートで徹底的につくりあげた「島根県芸術文化センター」など。メインとなる構造体にも、建築物の形にも限界を設けていないように見える内藤氏の建築。「自分の中に、建築に対してスタティックに考える部分と表現主義的に考える部分、2つの対極的な考え方が混在しているのです」と自身の建築に対する考えを話されました。愛知巡回展で披露された作品にも両者のせめぎあいが見て取れます。そのひとつが「静岡県草薙総合運動場体育館(2015年竣工予定)」です。大地震が予想される静岡県に建設されるため、耐震基準は東京の1.5倍。最先端の建築技術を導入しながらも、主構造には静岡県産の杉の木でつくった柱を256本使用し、一方で屋根部分は鉄骨トラス構造を採用しています。内藤氏は解説の締めくくりに「完成した建築の形はそれぞれ異なるかもしれませんが、私のつくる空間に流れる空気は等しいものだと信じています。それは私が建築を通して表現したいものが一定だからです。ぜひその空気感を肌で感じてください」と語りました。
 社会における建築の力と、内藤氏の信念に触れた都市環境デザイン専修の学生たちは、あらためて建築の存在意義を見つめなおし、これからの授業や制作活動に打ち込んでいくことでしょう。