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インタビュー

愛知淑徳大学理事長 小林素文氏に聞く

=常に時代を先取りした教育改革に取り組む=
―まず最初に、愛知淑徳大学の成り立ち、および特徴についてご説明ください。

小林:本学は昭和50年に設立されましたが、母体となる愛知淑徳学園の歴史は、明治38年に開校した愛知淑徳女学校までさかのぼります。翌明治39年に、愛知県で初めて文部省に認可され、私立高等女学校となった本学は、私の祖父にあたる小林清作が創立いたしました。元新聞記者だった創立者は、進取の気性に富む人物だったため、当時の女学校の常識を打ち破るさまざまな教育方針を取り入れ、日本の女子教育の発展に大いに貢献してまいりました。例えば、英語や理科、体育の授業を必須科目としましたが、女子に学問は不要と考えられていた明治時代においては、非常に画期的な取り組みでした。また、洋装の制服の採用、伊勢への修学旅行の実施など、先進的な教育方針を次々と打ち出し、女子教育の新しい時代を築いてきたのです。  戦後の学制改革やその後の学校改革により、本学園は女子中学、女子高校、大学、大学院を擁する総合学園に成長してまいりました。そして現在もなお創立者の進取の気性を受け継ぎ、「十年先、二十年先にも役立つ人材の育成」をモットーとして、本学は時代を先取りした教育体制の構築に尽力しております。

―近年の具体的な大学改革の取り組みについてお聞かせください。

小林:本学が昭和50年に女子大学としてスタートした当時は、文学部の入学定員は英文学科、国文学科それぞれ50名ずつ、合計100名という小さな規模でしたが、その後ユニークな学部・学科を新設し、現在は全学で約6000名を擁する規模になりました。具体的には、昭和60年に文学部「図書館情報学科」を設置、平成3年には、文学部に日本初の「コミュニケーション学科」を設置して注目を集めました。さらに平成7年には、日本初の「現代社会学部」を設置し、併せて全学の男女共学化を図りました。その後も改革を推進し、現在では、国文学科・英文学科・図書館情報学科から成る文学部、現代社会学部、コミュニケーション心理学科・ビジネスコミュニケ−ン学科・言語コミュニケーション学科から成るコミュニケーション学部、文化創造学部の4学部8学科の体制を整えることができました。

【人格教育を通して社会に役立つ人材を育成】
―各学部・学科の教育内容について、愛知淑徳大学ならではの特徴をご説明ください。

小林:本学では、「学生の役に立つもの」「将来にわたって変わらない大切なもの」という2つの観点のもとにカリキュラムを組み立て、学生たちの将来の幸せや充実した人生を送るための教育を施していきたいと考えています。例えば、将来必ず役に立つ英語教育については、入学者全員にTOEICの試験を受けさせて一人ひとりの英語力を評価し、それぞれの英語習熟度に応じたクラスに振り分け、全員がレべルアップできるような体制を採っています。また、現代社会学部では、都市や建築のあり方を文化的・社会的視点から学ぶだけでなく、従来の工学部建築学科の領域まで踏み込んで教育研究しており、卒業後2年の実務経験を経た後、一級建築士の受験資格を取得することができます。この他、コミュニケーション心理学科では、心理療法やカウンセリングなど、臨床心理学を総合的に学習できるカリキュラムを構成しており、大学院まで修了した学生の多くが、難関といわれる臨床心理士の資格を取得しています。さらに「将来も変わらない大切なもの」とは、取りも直さず「人と人とのふれあい」を意味しており、少人数のゼミ教育を通して、世の中を見る目を養い、人間としての根本的な生き方を学べるような人格教育にも力を注いでおります。

―愛知淑徳大学の大学院には、たくさんの社会人が入学しているそうですね。

小林:私どもは、社会人として「『違い』を認めあって共に生きる」という理念を、教育現場に反映したいと考えています。本学では、大学院に多くの社会人を受け入れているだけでなく、教養科目においては一般の方々も幅広く受講していただける制度を整えており、「世代間の違い」を認めあう機会をつくっています。男女共学化に踏み切ったのも、「男女間の違い」を理解しあうためであり、多くの外国人教員や留学生を受け入れ、充実した留学制度を整えているのは、「国と国の違い」を理解して学ぶためでもあります。今後の課題としては、「障がい者と健常者との共生」というテーマに取り組み、さらに社会に役立つ人材育成に尽力していかなければならないと考えております。

―ありがとうございました。

(PHP7月号 No.638)