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「ながくて学長フォーラム」にて愛知万博へ提言

 「第3回 ながくて学長フォーラム」公開シンポジウムが、平成13年10月24日(水)午後6時30分から、長久手町文化の家 森のホールで、本学 小林素文学長、愛知医科大学 加藤延夫学長、愛知県立大学 森正夫学長、愛知県立芸術大学 島田章三学長、愛知学院大学 小出忠孝学長と加藤梅雄 長久手町長の出席のもと、パネルディスカッションが行われました。

 今回のテーマ「愛知万博とまちづくり」−大学がまちづくりに果たす役割−のもとに、長久手町内及び隣接する5大学の学長と町長・町民が一同に会し、2005年の愛知万博開催にむけて行政と大学の連携のあり方、大学がまちづくりに果たす役割について熱心な討議がなされました。


本学 小林学長は、愛知万博とまちづくりに対しての次のような3つの提言をなされました。

1. 万博という国際的イベントが夢あふれる未来志向のものとなるためには、大前提があります。
 それは、世界が平和であるということにつきると思います。かつて、1980年モスクワオリンピックではソ連のアフガニスタン侵攻という国際情勢をうけ、日本は参加を見あわせたことは記憶に新しいところです。
 現在、英国に属する北アイルランドでは、イギリスからの独立およびアイルランド共和国との合併を望む少数派のカトリック系住民とイギリスへの残留を望む多数派のプロテスタント系住民との間で、約80年間対立が続いています。とくにカトリック系住民の一部がアイルランド共和軍(IRA)を組織し、テロ活動を展開したことで、幾度にもわたり流血の惨事がひきおこされてきました。
 なぜ、この北アイルランドの話をもちだしたかといえば、本学の姉妹校アルスター大学が、北アイルランドにあり、そこでの Peace Study(平和学)は、世界的な評価を得ているからです。なぜ、世界的となったのかは、アルスター大学がまさに紛争地帯の大学であること、そして、あくまでも中立の立場で平和について考え、重要な提言をしてきたからにほかならないからです。
 2005年に万博が長久手町で開かれるにあたり、町長の言う「大学のある町 長久手町」として、各大学が中立の立場で平和を願い、考え、提言していくことが何よりも大切なことだと思います。
 愛知万博のメッセージに「人間らしい交流の原点とは何だろう。それは人が人と出会い、語り合い、理解し合い、尊敬し合い、愛し合うことにあるのではないか。そのための交流の舞台 "EXPO 2005 AICHI" をつくろうと思う」と書かれています。まさにこの「人間らしい交流」こそが平和の原点であると思います。そして、このことは、本学の理念「違いを共に生きる」と合致しています。本学としても万博を機に、この理念をどう学生に、地域社会に伝えていくかを考えていきたいと思っていますが、町全体での企画等があれば喜んで協力をさせていただきたいと思います。

2. 万博の計画骨子によれば、万博では「地域大交流を体験するにぎわいゾーン」が設定されていますが、この部分では、学生を含む若者達の自由な発想と企画を期待したいと思います。
 先日、「日本ど真ん中祭」を栄で見てきました。その実行委員長が本学現代社会学部2年の女子学生であったので、どの様な祭なのかを知りたかったからです。
 それは、予想をはるかに越えた活気あふれるお祭りでした。若者たちが守るべき規律を守りつつ、思い切り若者らしく、無心となって踊っている姿には感動いたしました。
 何でもこの祭は純粋に若者の間で企画され、昨年第1回、今年が2回目とのこと。
 若者は場を与えられ、自分達が納得することならば相当なことができることを実感しました。神戸大震災のあとの若者ボランティアの活躍、タンカーからの油にまみれた日本海を美しくもどした若者達の活躍と同一線上にある若者パワーだと思いました。是非万博でこの若者パワーを生かしていただきたいと存じます。

3. 万博に伴い東部丘陵線が敷かれ、長久手町が便利になりますが、そのことで長久手町にお願いがあります。それは、交通が便利になることが町の活性化に必ずしもつながらないことがあるからです。
 明石大橋ができ、徳島県は神戸大阪圏とつながり、便利になりましたが、徳島の大学は学生が神戸大阪圏にすいこまれ、逆に学生集めに苦労するようになりました。徳島の町自体も通過客が多くなり、活性化にはつながっていないと聞きます。
 今回東部丘陵線が敷かれることとなりましたが、便利になったが、栄、名古屋駅への通過点にすぎなくなったのではさみしいと思いますから、そうならない様な工夫をお願いしたいと存じます。
 たとえば、長久手町内の中核となる駅には、若者が常時イベントを開けるような広場をもうけたり、長久手町には温泉が湧き出したとお聞きしますが、温泉での魅力あるイベントを開催するなどして、是非、長久手町自体の活性化を図っていただきたいと存じます。
 約4万人の人口の長久手町には、2万人の学生がいるわけですから、その学生達とともに長久手町を活性化していかれることを心より願っております。

 また、他大学学長も、各大学独自の理念や研究・取り組みをもとに、救急医療体制、緑の生態環境観察・回復対策、異文化体験、社会の新しい変化への対応、自己啓発、魅力あるものの構築などで貢献できるのではないかと語られました。町民参加者との意見交換でも、それぞれの立場や視点から貴重な意見を交わされ、今回の様に、情報を発信しあって、知り合うことの重要さが認識されました。そして、愛知万博を最高のおもてなしの空間にし、夢のある心の通った万博となるよう、学生にもいろんな切り口から参加してもらい、将来の財産としてもらえるよう、参加者はさらなる期待と希望で胸を膨らませたシンポジウムとなりました。