随想

輝 く(平成20年度 『大学だより』より)

学長 小 林 素 文

『わたしを束ねないで
あらせいとうの花のように
白い葱のように
束(たば)ねないで下さい わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂』

 先ごろ、生物多様性条約第10回締約国会議、通称COP10が2010年、名古屋で開催されることがほぼ確定となりました。
 人間を含め、未知のものも含めれば三千万種からの多様な生物が地球には生きているといわれます。しかし、現在一年に四万種もの生物が絶滅しており、その原因のほとんどは、生物の一つにすぎない人間の活動が引き起こしているともいわれています。
 生物の多様性を守ることは、人間の生存を守ることでもあるため、COP10は世界から注目される重要な会議となりましょう。
 生物の多様性を守ることが大切であるように、人間社会での多様性を尊重することも大切なこととなってきました。
 多様性を「違い」と置きかえれば、国による違い、年の差による違い、男と女という違い、障がい者と健常者という違い、そうした違い・多様性を認め合い尊重しあうことが大切となっているのです。その意味で本学の理念「違いを共に生きる」は今の時代のテーマと言えましょう。
 冒頭の新川和江さんの詩のように、人も他のどの生物も束ねられることなく、一つ一つが、一人一人が輝いていたいものです。

※ 冒頭の詩は、新川和江『わたしを束ねないで』の最初の一節を引用