随想

若き日の母(平成17年度 『大学だより』より)

学長 小林 素文

 ようこそ愛知淑徳大学へ。在校生・教職員こぞって皆さんお一人お一人を歓迎いたします。
 大学生となられた皆さんは、これまで生徒といわれていたのが学生と呼ばれるようになります。このことは、制服により守られていたことや制約されていたことから自由になれることを意味します。当然、自由には責任がともないます。
 皆さんのほとんどは、まだ親から経済的な支援を受けておられるでしょうから、完全に自由とはいえませんが、制服と訣別した今、将来負うべき責任について考えていただきたいと存じます。
 星が丘キャンパスに接する平和公園に「若き日の母」という像が立っています。子供を背負う母の姿や表情は、どんなことがあってもこの子を育てるのだという「強さ」と、その子をいとおしく思う「やさしさ」にあふれ凛としています。
 よく平和公園を散歩する私はこの像にいつも勇気づけられています。
 大人になるということは、仕事とか家族とかいろいろなものを背負っていくことだと思います。どうせ背負うなら「若き日の母」の像のように凛として背負っていきたい。そのためには背負っているものがかけがえのない大切なものに思っていきたいものです。
 学生という自由な立場となった今、いろいろなことに挑戦し、歩きながら、ときには走りながら、自分自身が背負うもの(それは社会での役割や責任、あるいはそれがかけがえのない大切なものなら夢といってもいいでしょう)について思いを馳せていただきたい。
 そして、強くやさしく凛とした人生を送るステップが本学であってほしいと願って止みません。