五十嵐淳氏 <プロフィール>
1970年北海道生まれ。
1990年北海道中央工学院専門学校卒業。
1991-95年BEN建築設計事務所勤務。
1997年五十嵐淳建築設計事務所設立。
現在、北海道工業大学非常勤講師、名古屋工業大学非常勤講師。
主な受賞に、2003年第19回吉岡賞(矩形の森)、2005年BARBARA CAPPOCHINビエンナーレ国際建築賞グランプリ、2005年JCDデザイン賞優秀賞、グッドデザイン賞(大阪現代演劇祭仮設劇場)、2007年JIA環境建築賞優秀賞(Annex)、2009年JIA北海道支部住宅部会大賞(間の門)、2010年第21回JIA新人賞(光の矩形)など。
著書に、『ディテール別冊五十嵐淳/状態の表示』(2010年、彰国社)、『五十嵐淳/状態の構築』(2011年、TOTO出版)がある。
北の大地に根ざした、五十嵐氏の建築家としての歩み。
国内外で高く評価されている建築家・五十嵐淳氏の独立後初の個展となった「五十嵐淳展 状態の構築」の巡回展が、長久手キャンパス8号棟5階プレゼンテーションルームにて7月23日(土)から8月7日(日)まで開催されました。この会場づくりや運営に力を注いだのが、都市環境デザインコースの3年生25人です。16日間の会期中、建築業界の方や建築を学ぶ学生、オープンキャンパスに来場した高校生、さらに、五十嵐氏ご本人も訪れ、学生たちが形にした「五十嵐淳の世界」をじっくりと味わっていました。そして7月30日(土)には、五十嵐氏を講師としてお迎えし、「ローカルな必然性」と題した講演会がおこなわれました。定員192人の限定イベントのため開場前から長蛇の列ができ、即、満席状態。立ち見が大勢出てしまうほどの大盛況ぶりでした。
会場が熱気に包まれる中、五十嵐氏が登壇すると割れんばかりの拍手がわき起こり、講演がスタートしました。五十嵐氏は「独立して間もない15年前、自分の建築を探していました。今日は模索しながら歩んできた僕の回顧録として、時系列で作品を紹介していきます」と語り始め、スクリーンに作品の写真や設計図を次々と映し出しながら話を進めていきました。来場者の皆さんは目を輝かせて聞き入り、ときおり五十嵐氏の言葉をノートに熱心に書き留めていました。
五十嵐氏が拠点としている北海道では、「風除室」「凍結深度」「雪荷重計算」など、北の大地特有の厳しい気候に対応するための建築の条件が法的にも定められています。五十嵐氏はそうした条件、その土地のすべてを「状態」という言葉で捉え、「状態の構築」としての設計を繰り返してきました。そしてローカルな特性のある建築だからこそ生まれる形を活かし、五十嵐氏の建築を確立していったのです。



「居場所」を自由につくる空間をめざして。
五十嵐氏が自身の作品を紹介する上でキーワードとしていたのが、「居場所」でした。「人が大草原に投げ出されたとします。そこに1本の木が立っていたら、人はその木を拠り所として居場所をつくるでしょう。僕はそうした心理を設計に活かしています」と五十嵐氏。たとえば五十嵐氏の自宅「矩形の森」の設計では、「居場所」という概念を突き詰め、役割を決めつけない空間づくりに注力したそうです。間仕切りして小さな空間をいくつもつくるのではなく、広いワンルームの中に何本もの柱を立て、その柱を拠り所として各自が居場所をつくれるようにする。空間としてひとつにつながりながらも、パーソナルスペースを確保できる。こうした五十嵐氏の着想のおもしろさを知り、来場者の皆さんは感心した表情を浮かべていました。
約2時間、五十嵐氏ご自身に作品について語っていただくという贅沢な時間は、あっという間に過ぎていきました。質問コーナーでは、学生や一般の方々からの質問が次々と飛び出し、そのひとつひとつに五十嵐氏は丁寧に答えていました。
高校生の頃、建築家・安藤忠雄やインテリアデザイナー・倉俣史朗の作品に衝撃を受けて建築家の道へ進もうと決めたという五十嵐氏。その地に足のついた歩みはこれからも建築界に新鮮な感動を与える、そんな期待を抱かせた講演会でした。都市環境デザインコースの学生たちにとって、建築の魅力を再認識するだけでなく、自分の志を新たに立てる貴重な時間となったことでしょう。



