2021年10月18日（月） 長久手キャンパス732教室

愛知淑徳大学が取り組んできたジェンダー教育を振り返りながら、
ジェンダーに対する価値観の変遷をたどりました。

　本学にはジェンダー・女性学研究所があります。本学の男女共学化とともに実質的な活動を開始し、これまで性別役割分担の実態の研究や地球規模でみられる性による差別や人権侵害について情報を収集・教育・研究し、男女共同参画社会の実現のために力を尽くしてきました。この研究所の主な活動の一つとして挙げられるのが、定例セミナーの実施です。ジェンダーに関する情報を発信することで、ジェンダーに対する正しい理解を広めようとコンスタントに開催をしてきました。
　2021年10月18日（月）には、第40回目の定例セミナーを開催。「ジェンダーのいまを考える～愛知淑徳大学のジェンダー教育を振り返って～」と題し、本学のジェンダー教育に邁進された文学部教授の平林 美都子先生と本学の元副学長である石田 好江先生のお二人をお迎えし、人々のジェンダーに対する考え方が時代と共にどのように変化しているのかお話をいただきました。

　講演会の冒頭に自己紹介を終えたお二人はまず、愛知淑徳大学のジェンダー教育の草創期の様子について回顧しました。愛知淑徳大学の男女共学化に伴い「ジェンダーセンシティブな教育をしよう」と始まったジェンダー教育が、社会の流れを受け、2000年頃にはジェンダー教育への機運が落ち着いてくることに。そこで、学生に身近なアニメーションや映画などの映像作品を教材として、その作品を比較検討する中でジェンダーへの理解を深めるといった、学生に寄り添った教育を展開してきたことを語りました。
　その後、1996年と2016年に実施されたジェンダーに対する学生への意識調査の結果を基に、この20年で「若者のジェンダーに対する意識はどのように変わったのか」を解説。女性において「家庭志向が強まり、仕事と家庭の両立志向と職業意識が弱まっていることから、女は家庭・男は仕事という意識が強まっているように感じますが、詳細なデータを紐解くと、必ずしも“保守的になっている”とひと言でまとめられない現状が見えてきます」と解説されました。また現在は価値観の形成が個にゆだねられていることから、「社会が悪いのではなく、自分自身が悪いのだ」とジェンダーの問題が個の問題として矮小化してしまっていると、現代におけるジェンダーの課題を挙げられました。

　そして、話題は「女性同士の絆」へ。「女性同士」とは、生物的な性別ではなく「人間とは傷つきやすいものだという立場に立った人と人との関わりである」と定義し、そのうえで、かわいそうだという感情を伴う「シンパシー」ではなく、相手のことを理性的に想像する「エンパシー」が女性同士の関係性づくりには大切になってくると語られました。このエンパシーを、たとえ自分が相手と違う考え方でも、その人の立場に立って考え想像する能力であり、助けてもらう、助けてあげるという関係ではなく、対等な関係性を持ちながら一緒にやっていくこと、と解説。このことはジェンダー教育の中で一番学んでいただきたいことです、と講演会を締めくくりました。