追究

2024年03月06日

2023年度創造表現学会主催講演会「自分だけのデザイン世界の歩き方」

2023年12月27日(水)長久手キャンパス 512教室

プロのデザイナーによる講演会を開催。
社会の課題に対する取り組み方やデザインの考え方を、実例を用いて解説していただきました。

 2023年12月27日(水)、創造表現学部の科目「現代デザイン論」の中で、創造表現学会の主催する講演会が開催されました。この日は、デザイナーで、武蔵野美術大学の教授でもある清水恒平氏をお招きし、「自分だけのデザイン世界の歩き方—『認知症世界の歩き方』の事例を中心に」というテーマで、社会課題に対するデザインアプローチについてご講演いただきました。

 まずは、“デザイン”そのものについての解説から。デザインはグラフィックやプロダクトなど、分野や領域ごとに分かれています。しかし、近年は多くのデザイン領域が融合しており、多様化が進んでいるとのこと。その点について清水氏は「分野ごとに分けたりせずに、一つの『デザイン』として捉えることで、多様な可能性が生まれると思います」と語られました。
 続いて清水氏がこれまでに取り組んできた社会課題についてと、その課題解決のためにどのようにデザインの立場から関わってきたかをお話しいただきました。社会課題を解決するデザイン事例の一つが、『認知症世界の歩き方』です。これは認知症の方の視点や生活を体験できるWebサイトで、現在は書籍化やアニメーション化もされています。たくさんのインタビュー記事などをベースに制作したサービスで、認知症の方が見ている世界を体験してもらうことで、認知症患者やその支援者への理解を促します。そのほか、認知症の症状とそれによる生活への影響をわかりやすくカテゴリ分けしたグラフを作成。清水氏は「“知ってもらう”の先にある“解決”を考えてもらいたい」と、グラフを見た人が症状について理解するだけでなく、その解決策を考えられるようなデザインにされたそうです。

 課題に取り組む際には、いきなりデザイン成果物をアウトプットするのではなく、まずその原因や背景を掘り下げることが重要だと清水氏は語ります。これは社会で解決が望まれているようなスケールの大きなものだけでなく、大学で取り組む課題にもいえるそうで「どんな問題でも、原因を考えてからアプローチ手段を探すようにしなければ、解決方法は見つかりません」とコメント。この言葉によって、日々の課題への取り組み方を見つめ直す学生もいたのではないでしょうか。

 質疑応答の時間では、デザインに関心を持つ学生から多くの質問が寄せられました。「デザインで1つの課題が解決しても、それによって新たな課題が生じた場合、どのような考え方で取り組むべきでしょうか」という質問には、「それは考え方を変えれば、今まで隠れていた課題が見つかったと捉えることもできます。問題解決ではなく問題提起としてのデザインだと考えても良いのではないでしょうか」と回答。不安に感じるようなことでも少し視点を変えるだけで、心持ちが大きく変わることを伝えていただきました。
 講演会を通じてプロのデザイナーの視点や取り組み方を学べたことで、学生たちのデザインに対する興味はさらに高まったことでしょう。また、清水氏の課題解決に対する考え方は、デザイナーを目指す学生以外の人にも大きな武器になるはず。今後、学生たちは広い視野と多角的な視点を持って、さまざまな課題に挑戦していきます。