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レポート

カナダ・米国東海岸視察レポート(その1)

10月7日より、カナダのダルハウジー大学 ( Dalhousie University ) を視察し、その後中部経済同友会の米国経済視察団に加わり、米国東海岸で急展開しているIT革命の現場を視察した。これはその5日間のレポートである。

10月7日

JAL6便 JAL6便。
 かつて成田空港は北ウィングと南ウィングがある第1ターミナルだけであったが、第2ターミナルができ、今は地下で第1ターミナルとつながっている。第2ターミナルから飛ぶこのJAL6便別ウィンドウで開きます。はニューヨークまで12時間20分の直行便である。長い1人旅ではあるが、電話もかからず、呼び出しもない至福の一刻である。

10月8〜9日

 ダルハウジー大学はカナダ東海岸のハリファックスにある。この大学は学部の学生数が7900人と本学より少し大きい程度であるが、カナダの大きな総合大学と同等の評価を得ている。規模が小さいながらも高い評価を受けている理由を知るべく、またこの大学で特に評価の高い学科についての詳細を知りたいとダルハウジー大学を訪れた。


Welcome to Dalhousie University

ウェルカムサイン 歯学部の前にウェルカムサイン別ウィンドウで開きます。があった。この大学は学生数は少ないが、歯学部、医学部、保健学部、人文学部、芸術学部、法学部、経営学部等を擁する総合大学である。ダルハウジー大学(以下、こちらでの通称、ダルと略す)は「the smallest of "big" universities」をモットーとしている。これは総合大学でありながら学生数が少ないという文字通りの意味だけでなく、smallest の良さを生かし、学生一人ひとりに小さい大学ならではのきめ細かい配慮をしていくという、ダルのアイデンティティを保持しているように思われる。


一軒家の学科やセンター
フランス語学科 スペイン語学科 国際交流センター

 ダルは1818年に創立された、カナダでは歴史のある大学である。もっとも初の卒業生を出したのが1866年と、創立50年くらいは開店休業の状態であったとのこと。その間のいきさつは省略するが、こじんまりとした大学として19世紀そして20世紀半ばまで続いてきたが、ここ40年の間に学部増設が次々と行われ、急速に総合大学に成長した。そのため、新しい学部の近代的な建物が立ち並ぶ一方で、フランス語学科別ウィンドウで開きます。スペイン語学科別ウィンドウで開きます。国際交流センター別ウィンドウで開きます。等の一軒家の建物も多く混在していた。
校舎がこうした昔からの一軒家であるため、学生との緊密な交流ができ、smallest of big universities の良さが保てるとの説明があった。もっとも、スタッフからは、木造建築のため個室でも足音や声が伝わるので、新しい校舎に移りたいという本音も聞かれた。


図書館
図書館 Writing Workshop 掲示板

 感謝祭の休日ではあったが、図書館別ウィンドウで開きます。は開いており、中は多くの学生でにぎわっていた。図書館の中にWriting Workshop 別ウィンドウで開きます。の部屋があった。ここは予約制で、レポートや論文の書き方を指導するところである。主に大学院生が学部学生に指導しており、ほとんど予約で一杯となるため、個別だけでなく、10人単位のグループでの指導も行なっているとのことである。こんなところも、"smallest" のきめ細かさなのだろう。
  図書館の中に図書館学科の研究室もあった。そこの掲示板別ウィンドウで開きます。に大学院生のクラス写真を見つけた。写真を見るとほとんどが社会人である。クラス写真を撮り、お互いに早く知り合おうとしているところにもダルの細やかさと暖かさが感じられる。


学生会館
表示板

 学生会館には、カフェテリアや書店やホールなどの他に学生の運営するFM放送局や出版局があった。FM放送は大学だけでなく地域の放送局ともなっており、出版局は週刊で大学新聞をだしている。その運営費はほとんど広告収入でまかなわれているとのことである。この学生会館の入り口にある映画館のような表示板別ウィンドウで開きます。で知らせているように、学生主催のライブコンサートやパーティなどが頻繁に企画されており、こんなところには、small ではあっても big universityと変わらない雰囲気が醸し出されていた。


大学の中の大学

 ダルのキャンパスの中に小さな大学があった。キング大学(University of King's College,以下通称のキングと呼ぶ。手前の青い屋根がキングの校舎、後ろのはダルの校舎)別ウィンドウで開きます。である。
 キングはダルよりも歴史が古く、1789年、英国圏カナダで最初に設立された由緒ある大学である。しかし1920年に火事で校舎をすべて消失したため、ダルのキャンパスの中に校舎を建てることで存続を図り、以来ダルとの密接な連携のもと、今に至っている。そのため入学基準はダルと全く同じで、ダルの図書館、学生会館、体育施設などはダルの学生と同様に使用できる。
  キングは2学部あるが、その1つの人文学部は1年次を除きダルと共同運営されており、もう1つのジャーナリズム学部は単独運営である。学部学生数はダルが7900人であるのに対してキングは800人と少ない。しかし、この大学は「大学の中の大学( University within University )」をむしろ誇りとしていて、小さいながらも図書館や体育館も独自で所有している。
  この大学の特徴はダル以上に " small " を大学のアイデンティティとしているところにある。つまり、小さな大学ならではの学生や教員がお互いに全員を知っているという一体感があるのだ。
  そのためにキングの1年生には、Foundation Year Program( 以下FYP )という科目を設け、1年次で取得可能な単位の80%がこれにあてられている。FYPは毎日2時間全員(200人)で1つの講義を受け、その後、3時間20人単位のグループディスカッションを行なうことが週4日間続き、2週間ごとに全員がレポートを提出するよう義務付けられている。そのレポートの書き方については上級生が個別指導を行なう。誰がいつ個別指導を行なうかが、キングの掲示板に張り出されていた。
  FYP におけるリーディングリストは膨大であるが、上級生を含めたきめの細かい指導等、この授業を1年間続けることでキングの学生の誇りを持たせ、small の良さを徹底して引き出し、「大学の中の大学」としてのアイデンティティを保っている。


キャンパスは秋色
アイビー どんぐりやきのこ

 季節の訪れは名古屋よりも1ヶ月早い。理学部の校舎のアイビー別ウィンドウで開きます。は真っ赤に染まっていた。足元を見ればどんぐりやきのこ別ウィンドウで開きます。、まさに秋色である。


ハリファックス
ハリファックス 六稜郭 セントメアリー大学

 ダリのあるハリファックス別ウィンドウで開きます。はカナダ東海岸に面する人口33万人のノヴァスコシア州の首都である。かつては軍港として栄えたが、今もその名残が見られる。町には函館にある五稜郭より1つ角が多い六稜郭別ウィンドウで開きます。があった。タイタニック号の難破の時には救援の中心となった港としても知られ、最近では1995年にG7のサミットが行なわれたことで知られている。大学はダルやキングの他、セントメアリー大学別ウィンドウで開きます。や、マウントヴィンセント大学など7つの大学があり、落ちついた雰囲気の大学町でもある。


セキュリティー
セキュリティーオフィス

 落ちついた雰囲気のハリファックスに所在するとはいえ、ダルのセキュリティーはしっかりとしている。多数の無線やテレビ画面があるセキュリティーオフィス別ウィンドウで開きます。はキャンパスの中心にある。また休日にも関わらず、学内で何度も巡回ガードマンを見かけた。やはりここは北アメリカの都会であることに変わりはないと実感する。そういえば学生会館にはエスコートサービス(夜間図書館などで遅くまで残っていた時に送って行くサービス)の受付があった。

終りに

エリザベス公園

 ダルハウジー大学が小さな大学ながら高い評価を得ているわけは、自ら誇りを持って、" smallest of big universities " と称していることに尽きるだろう。大きな大学の幅広さと小さな大学のきめ細やかさとを併せ持つということである。そのために大学院生や上級生を充分に活用し、個別指導やエスコートサービス等が行われている。
ダルハウジー大学よりもさらに小さなキング大学は、大学の中の大学 ( University within University )との誇りを持ちうるべく、FYP という独自のプログラムを行ない、小さいがゆえのアイデンティティをさらに徹底していた。このような、small をむしろアイデンティティとしているところや、本文には割愛したが、本学にとって興味深い学科についても詳細を知ることができ、意義のある2日間であった。
ホテルの近くのエリザベス公園別ウィンドウで開きます。の秋色に別れを告げ、ニューヨークへと向かった。

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