
2022年12月3日(土)長久手キャンパス ミニシアター
日本で発見された恐竜化石の理解を深めた講演会。
恐竜の進化と絶滅の過程を紐解き、地球の未来と人類の絶滅について考えました。
創造表現学部の創造表現学会では、第一線で活躍されている方を講師としてお招きし、プロの経験や視点、考え方を語っていただく講演会「知求儀」を定期的に開催しています。専門家のお話を聞く中で、学生は専門分野についての理解や興味を深め、学修へのモチベーションを高めます。

2022年12月3日(土)の講演会では、北海道大学総合博物館教授の小林快次先生に教壇に立っていただき、日本の恐竜化石を通じて恐竜絶滅直前の世界について紹介。恐竜の絶滅から解き明かした、今日の私たちに対するメッセージについてお話していただきました。
はじめに地球のエネルギー問題についての動画を紹介。映像は、国連総会で人語を話す恐竜がエネルギーと人類の絶滅について演説を行うという風刺的な内容でした。現代のエネルギー問題は非常に深刻で、「現時点で人類全体が生きていくには地球が3つ必要で、50年後には地球が7つ必要」だと言われているほど、地球上のエネルギーは供給が追いついておらず、人間が地球に負荷をかけています。その上で小林先生は度々議題として挙げられるという「人類は絶滅するか?」という質問に対し、「100%絶滅する」と断言しました。このままでは人類絶滅は避けられませんが、人類が滅んでしまう前にどう行動すべきかとうことが、今回の講演会の肝となるようです。


続いて小林先生は「恐竜はまだ生きている」と、またしても衝撃的な内容を紹介。恐竜は約6,600万年前の隕石衝突によって地球環境が大きく変わり、絶滅に至ったとされています。しかし恐竜の一種である始祖鳥の仲間が進化して鳥になったことから、「鳥類は恐竜である」という説が専門家の間で広く認知されているようです。さらに恐竜は脊椎動物としては爬虫類に分類されるため、鳥類は恐竜かつ爬虫類の一種であることが明らかになりました。
ここからは恐竜が絶滅する直前の世界について紹介し、絶滅の意味やその怖さなどを解説していただきました。白亜紀やジュラ紀など、恐竜が活動していた時代を1年に換算すると、ティラノサウルスやトリケラトプスなど有名な恐竜が現れたのは12月28日に相当。つまり映画などで描かれる恐竜の世界は最後の3日間しか描写されていないそうです。この“最後の3日間”を詳しく研究することは、恐竜絶滅のメカニズムが解明できるという点で非常に重要になります。
生命の進化においては、「食べること」「子孫を残すこと」が特に重要で、恐竜にも当てはまっています。ハドロサウルス科の恐竜は洗濯板のような歯を持ち、本来は哺乳類のみができる“咀嚼”が可能で、食物の消化に役立っています。これによって栄養の吸収率を高め、生物としての進化にも繋がっているとのことで、食事や咀嚼の重要性を語られました。
また、恐竜は町おこしにも一役買っています。ハドロサウルス科に属するカムイサウルスは北海道むかわ町で発掘された恐竜で、元々は首長竜だと考えられていましたが、小林先生が化石を鑑定して恐竜だということが明らかになりました。カムイサウルスは2019年9月6日に論文が発表される予定でしたが、2018年の同日に北海道胆振東部地震が起きていたこともあり、アイヌの言葉を使用した「カムイサウルス・ジャポニクス」と命名。現在も、むかわ町の震災復興のシンボルとして、さまざまなイベントや展示などが開かれています。


世界的に見ると恐竜の化石は内陸で見つかることがほとんどですが、日本の恐竜の化石は海岸沿いなど海の地層から発掘されることが多いです。海の地層から発見される恐竜は全体の5%ほどしかなく、海沿いで生活していた恐竜については未知なことが多いため、島国で海の地層が豊富な日本は、恐竜の秘密を紐解く上で重要な役割を担っているといいます。
小林先生は日本のみならず、世界中の化石探査にも携わっており、2022年はアラスカやモンゴル、ウズベキスタンを訪れました。現地の方々とのコミュニケーションや、移動手段の一つであるセスナについてのエピソード、グリズリーへの対処法など、興味深いお話を多数ご紹介いただきました。中には地雷が埋まっているような場所にも足を運び、命がけで恐竜を研究しています。
恐竜の研究を進めることで、現代の人類へのメッセージが明らかになったといいます。その答えが「絶滅」です。4億5000万年前に地球上の6割の生命が失われた最初の絶滅を機に、これまでに5度の大きな絶滅があったとされています。そして6度目の絶滅が現在進行形で起きているとのことです。地球温暖化と急激な人口増加の影響で、通常の10倍以上の早さで多くの種の生命が滅んおり、200年後には全体の75%の生命が消えることになります。現在起きている大量絶滅を少しでも食い止めたいと考える際に、最近起きた大量絶滅である恐竜の絶滅が参考になるそうです。


そして、今回の講演会の最初にお話しされた「人間は100%絶滅する」ことについて改めて言及。人間に寿命があるように、種にも寿命があり、人間=ホモサピエンスもいずれ滅んでしまうと小林先生は考えます。また人間が地球に負荷をかけ続けていると、他の種も減っていき、そのツケが人間に回ってくるそう。それではどのようにして地球を維持していくかという問いには、「人間が滅ぶこと」だと回答されました。ただ、人間の絶滅を延ばすことは可能だとし、人間の数%でも手を取り合って、節水や節電などを行い、地球への負担を減らすことで人間の絶滅を遅くすることはできるのではないかと語られました。人間が持つ知識や能力、協調性をもって、環境のために活動することで、人類という種が延命できる、という絶滅した恐竜からのメッセージを明かし、講演会の幕を下ろしました。
学生たちは今回の講演会を通して、恐竜研究がロマンだけでなく、地球環境や人間が生きていく上でも重要な意味を持つことを学びました。今後、彼らが環境への意識をより高め、自分たちだけでなく未来の人間や動物、地球を守るために、より主体的な環境に配慮した活動に取り組むことを期待しています。