
広瀬郁氏<プロフィール>

株式会社トーンアンドマター 代表取締役/東北大学大学院 非常勤講師/経済産業省中心市街地活性化専門家
東京生まれ。東京理科大学工学部建築学科卒業、横浜国立大学大学院建築専攻修了。
飲食店や美容サービス店、大型商業施設などのプロジェクトにコンサルタントとして参画。ホテル「クラスカ」(東京)ではコンセプトメイキングから事業企画・プロジェクト推進まで総合的なプロデュースを担う。最新プロジェクトに、コワーキングスペース「ドリノキ」(札幌)。著書に『建築プロデュース学入門-おカネの仕組みとヒトを動かす企画』(彰国社)。
大学で磨いたスキルを、社会でどう活かすか。
その考えが広がっていく、有意義な講演会となりました。
建築や空間、街づくりの総合的なプロデュースをおこなう、株式会社トーンアンドマター 代表取締役の広瀬郁氏。ホテルのリノベーションや飲食店の事業企画、さらに上海万博の子ども向けパビリオンの企画など、国内外のさまざまなプロジェクトを手掛けています。そんな「プロデュース」のプロからさまざまなお話を伺い、実社会に通じる学びを得るために、10月10日(水)、現代社会学会・メディアプロデュース学会主催の講演会が開催されました。演題は、「プロジェクトを総合的にプロデュースするクリエイティブ・ヴィジョン」。会場にはメディアプロデュース学部の学生をはじめ、他大学の先生や学生も集まり、熱いまなざしで広瀬氏の講演に聞き入っていました。

大学で建築を専攻していた広瀬氏は、大正末期~昭和初期に建てられた代官山アパートの再開発にふれて「世の中のおカネのしくみ」に興味を抱きました。大学院修了後は、外資系のコンサルティング会社や建物のプロデュース会社に勤務。そして積み重ねた知識や経験を活かして独立し、株式会社トーンアンドマターを設立されました。そうしたキャリアに関する話題から、今学んでいることが将来どう活かせるのかといった視点からもお話しされ、学生たちは、熱心にメモを取っていました。
「建築や設計、デザインを学ぶことで、"抽象的と現実性の両側面で物事を捉える力" "コミュニケーション能力" "プレゼンテーション能力" "チーム力" "空間認識力" など、社会人としてのさまざまなベーススキルが鍛えられます。こうしたスキルを活かして新たなビジネスや社会事業を始める人も増えていますよ」と語った広瀬氏。そのひとつとしてご自身がおこなっている「プロデュース」についても、国内外でのプロジェクトの事例を交えてわかりやすく説明してくださいました。



ワークショップにチャレンジした学生たち。
「新しい価値観」を生むチームワークの重要性を実感しました。

プロデュースとは、"ヒト" "モノ" "カネ" を総合的にコントロールし、プロジェクトを成功へと導くこと。特に広瀬氏が力を入れているソーシャルビジネスでは、民間企業や公的機関では解決できない社会的な課題に取り組むため、組織の経営やプロジェクトの運営がより難しくなります。そこで広瀬氏が重視しているのが、協力者の満足度向上をめざした「新しい価値観」の提供。そのアイデア創出のプロセスを学生たちが体験的に学べるように、今回の講演会では特別にワークショップもおこなわれました。
ワークショップのテーマは、「地方都市の中心市街地に建つビルの利活用」の企画提案。学生たちは学年や大学をこえて3つのグループを組み、ビルをどう活用すれば人が集まり、まちの活性化にもつながるか、「新しい価値」を言い表したコンセプトを考案していきました。また、広瀬氏のアドバイスのもと、学生たちは活発に意見を交わしてイメージを広げ、さまざまなアイデアをひとつの提案として形にしていました。



「真のコミュニケーションが生まれる、サッカー好きのためのスポーツバー」「学生と社会人が一緒にプロジェクトに取り組み、互いに高め合う "場" 」「 "出会い" がコンセプトのカフェ+トレーニングジム」。各グループの学生たちが個性的な案をプレゼンテーションすると、広瀬氏は的確に講評しながら、「どの案もおもしろい!」とニッコリ。学生たちはプロからお褒めの言葉をいただき、とても嬉しそうでした。そして、仲間と話し合う中で魅力的なアイデアが生まれ、よりよいプロジェクトの立案につながると実感したようです。
広瀬氏のお話はもちろん、ワークショップを通じて、向学心や好奇心が大いに刺激された今回の講演会。学生たちは「プロデュース」の意義を学び、実社会を見据えた学修や制作活動にいっそう力を注いでいくでしょう。