追究
2026年08月04日
講演会「都市と家具のあいだ」大野 力氏
2026年度 展示会・講演会・発表会 建築 建築学部(2025年4月開設)

2026年7月18日(土) 長久手キャンパス 8号棟824教室
大小さまざまなスケールで活躍する建築家の講演会を開催。
学生たちの「学び」の先について考える機会となりました。
本学の建築学部では2025年より「建築・まちづくり」と「住居・インテリアデザイン」に専攻が分かれ、専門的に学べる学習環境を構築しています。


インテリアを学ぶことは、空間の質や体験、人の行動、感覚などについて考える力が必要で、その先にある「空間そのものを設計する」という発想にたどり着くことが重要となります。そこで、インテリアの役割や専門性について理解を深めることを目的に、2026年7月18日(土)、株式会社sinato(シナト)の代表を務める建築家・大野 力氏をお招きし、「都市と家具のあいだ」というテーマで講演会を開催。本学の建築学部に所属する学生や教員だけでなく、学外からも多くの人が聴講しました。
大野氏はsinatoを設立して以来、住宅から大型商業施設まで、さまざまなスケールの設計を手がけてこられたほか、インスタレーションアート作品を発表するなど、多岐に渡る活躍で注目を集めている気鋭の建築家です。2016年に竣工したJR新宿新南エリア(改札内外コンコース・駅前広場・NEWoMan新宿)のプロジェクトは、建築業界で大きな話題を呼びました。大野氏は設計事例をピックアップし、どのような点を重視して計画を立てたのか、進行する中で得た気づきなどについてお話しされました。特に重点を置いたのが、シェアオフィス「12 KANDA」と大型商業施設「NEWoMan高輪」の事例です。




「12 KANDA」は、施主の「貸せるオフィス面積を増やしたい」という要望のもと計画。オフィスの収容可能人数に対し、エレベーターを本来であれば2・3基は設けたいところ、1基のみに。本来、裏側にひっそりと設置される屋外避難階段を、表側でバルコニーとつなげることで日常動線を確保し、オフィス面積を広げたアイデアを披露しました。その過程で、単に屋外避難階段とバルコニーを接続するのではなく、階段にボリュームを出して突き出たせたり、バルコニーを拡張したりすることで、各階ごとに機能が変わる空間を生み出す設計プランについても語られました。さらに、当初の施主からの「全室シェアオフィス会員用スペースにする」という要望とは反して、一部を公共スペースにする提案をしたことも紹介。結果として、1~3階は一般の人も使える小規模店舗スペースやシェアキッチンなどのオープンなオフィス区画となりました。神田という立地も踏まえ、街と関係性が持てる建物の必要性について説かれたとのことです。建物と街、人との関係をデザインする、インテリアや空間デザインの考え方をわかりやすく示した事例でした。




「NEWoMan高輪」は、JR高輪ゲートウェイ駅周辺の「高輪ゲートウェイシティ」再開発プロジェクトの中核となった大型商業施設です。大野氏は同施設の2つの高層ビルの南北を接続する1~5階の施設全体設計を担いました。設計で最もネックになったのが、約360mにおよぶ南北の動線。大野氏は、施設を回遊しながら歩くだけで30~40分はかかる施設において、単なる移動にならない空間を検討したと言います。通常、大型商業施設では開口部を設けることは少ない一方で、本計画では屋外の景色を望める動線や、開放的な空間を点在させることでエリアごとに印象を変え、歩くたびに新たな景色と出会えるよう工夫したそうです。そのほか、回遊性が低くなるフロアへのアプローチや、休憩エリア・複数店舗の共用飲食スペースの配置など、来館者が多様な目的で施設を利用できる工夫をさまざまな視点で思考したと語られました。建物のスケールが大きくなるほど、人の行動や体験をデザインする範囲も広がることがうかがえました。


質疑応答では、受講者からさまざまな質問が寄せられました。中でも、「さまざまなスケールの仕事をされている中で、一貫した考えはあるか」という質問に、大野氏は「大きなスケールの仕事で50mや100mなどの話をしている中でも、ミリ単位で考えることが私たちの役割だと思っています。スケールが大きいからこそ、『そうした細かいスケールのことまで見えているのか』と驚かれます。逆に、100㎡などの小さなスケールの店舗設計のときには、都市的な広い視点を持って話をすると喜ばれます。どんな規模の設計であっても、それぞれの視点を持っておくことは非常に重要だと捉えています」と述べました。本講義のテーマである「都市と家具のあいだ」につながる、大小さまざまなスケールで活躍されている大野氏ならではのお言葉でした。
本学の建築学部では、「専門的に学んだ先にどのような将来があるのか」を考えられる機会を積極的に設けることで、学生たちが今ある学びへの関心や理解を深め、主体的な学修に取り組めるきっかけを提供していきます。












