追究

2026年08月31日

創造表現学部 創作表現専攻 高校生のための一日体験講座

2026年8月7日(金)  長久手キャンパス7号棟721教室

高校生を対象に「創作表現」を学ぶ体験講座を開催。
物語や作品を読み解く視点から、創作表現の学びが社会にどうつながるかについて理解を深めました。

 昨年度に引き続き、創造表現学部 創造表現学科 創作表現専攻による「高校生のための一日体験講座 大学で『創作表現』を学ぶとはどういうことか」が8月7日(金)に開催されました。
 小説、マンガ、アニメなどの創作表現に関心を持つ高校生を対象に、本学の専任教員がそれぞれの専門分野を生かした講義を実施。物語の捉え方や作品を研究する視点、虚構と現実の関係などをひも解きながら、創作表現を大学で学ぶ意味や、その学びが社会や将来にどのようにつながっていくのかについて考える一日となりました。

1限目 永井聖剛先生/物語なしでは生きていけない

 1限目は永井聖剛先生による講義「物語なしでは生きていけない」。小説などの創作物だけでなく、私たちの日常や社会の中にも存在する「物語」がテーマです。永井先生は、人間が実在しないものについて物語をつくり、それを人々の間で共有することで、社会や価値観が形づくられてきたことを説明。さらに、森鷗外の小説『舞姫』を取り上げ、主人公・太田豊太郎の生き方を通して「自分は誰の物語を生きているのか」という問いについて考えました。周囲から与えられた価値観と自分が望む生き方との間で揺れる主人公の姿から、私たちも知らず知らずのうちに、誰かがつくった「物語」の中で生きさせられている可能性があることを示しました。
 講義の最後には、自分の中にある思いや違和感を言葉にし、「自分自身の物語」として表現することの大切さにも触れ、高校生たちが物語について考えることを通して自分自身の生き方や価値観を見つめ直す時間となりました。

2限目 川﨑瑞穂先生/マンガ・アニメを研究するとはどういうことか

 続いては、川﨑瑞穂先生による講義「マンガ・アニメを研究するとはどういうことか」です。マンガやアニメを楽しむだけでなく、その表現の仕組みを「研究する」という視点からひも解いていきました。
 川﨑先生はキャラクターの感情を伝える記号やオノマトペなどを例に、普段何気なく読んでいるマンガにも独自の表現や“決まり”があることを紹介。また、マンガとアニメの表現の違いや、読み手が作品を楽しむ際に「次に何が起こるか」を無意識に予測していることにも触れ、創作する側には受け手の予測を考える視点が大切だと説明。高校生にとって身近なマンガやアニメを通し、作品を読み解くための様々な考え方を紹介しました。

3限目 松田樹先生/現代小説のさまざまなジャンルを知る

 3限目は松田樹先生による講義「現代小説のさまざまなジャンルを知る」です。まず「小説とは何か」という問いから、決まった形式にとらわれず、時代とともに新しい表現を生み出してきた小説の自由さについて紹介。過去の作品や表現の歴史を知り、それをふまえて新しい作品をつくることが、創作において大切だと説明しました。
 続いて、夏目漱石の『こころ』、村上春樹の『ノルウェイの森』、住野よるの『君の膵臓をたべたい』を取り上げ、「死を前にしていかに生きるか」という共通するテーマに注目。それぞれの人物関係や物語の構造を比較しながら、時代やジャンルが異なっても、共通するテーマが描かれていることを読み解きました。また、読者に問いを投げかける純文学と、物語の仕掛けや伏線などを通してメッセージを伝えるエンタメ作品の違いにも触れ、さまざまな作品を読み比べることで、小説の多様な表現や創作の可能性について考える講義となりました。

4限目 角田達朗先生/虚構と現実はどう関わっているのか

 4限目は角田達朗先生による講義「虚構と現実はどう関わっているのか」です。小説やマンガ、映画などの「虚構」は、本当に現実とは別モノなのかという問いから講義が始まりました。ご当地キャラクターを例に、虚構は現実をもとにつくられる一方、その表現が人々のイメージや価値観に影響を与えることもあると説明。虚構と現実は切り離されたものではなく、互いに影響し合う関係にあると示しました。
 さらに、『ウルトラマン』を取り上げ、作品がつくられた当時の社会状況や、登場人物の感情・思考と現実とのつながりについて考察。現実とは異なる世界を描いた作品であっても、私たちが経験する感情や考え方が反映されているからこそ、物語を理解し、共感できることを指摘。講義の最後には、人間は想像力によって理想や価値観を描き、それを現実に反映しながら生きているという話も。虚構と現実の関係を考えることを通して、人間の想像力やその本質について考える時間となりました。

5限目 永井聖剛先生/創作表現専攻での学びの特色と社会への通路

 最後は、永井聖剛先生による講義「創作表現専攻での学びの特色と社会への通路」。創作表現を大学で学ぶことが、将来どのように社会や仕事につながっていくのかをテーマに話しました。永井先生は、小説家や漫画家などの専門職に就くことだけが、創作表現を学ぶ目的ではないと説明。人文学系の学部では、大学での専門と卒業後の職種が必ずしも一致するわけではなく、幅広い知識や経験を生かして課題を解決したり、新たな価値を提案したりする「ジェネラリスト」として活躍する道もあると紹介しました。また、日本の小説やマンガ、アニメ、映画などのコンテンツが世界へ広がる中、作品を生み出すだけでなく、その魅力を見つけ、さまざまなメディアへ展開したり、社会へ届けたりする力も求められていると語りました。創作表現専攻で幅広い文化に触れ、考え、他者と議論する経験は、こうした仕事にもつながっていくと話し、将来の職業から逆算して学びを限定するのではなく、大学で視野を広げ、自分の可能性を広げていくことの大切さを伝えました。