報告

2013年08月03日

山下保博 × アトリエ・天工人 「地域素材から街づくりへ」

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース講演会 山下保博 × アトリエ・天工人 「地域素材から街づくりへ」

挑戦的な建築をつくり続ける山下氏の講演会を開催。

既成概念にとらわれず、建築の新たな可能性に挑み続ける建築家・山下保博氏は、アトリエ・天工人一級建築士事務所のほか、災害復興支援をおこなうNPO団体などを設立し、さまざまなジャンルで活躍しています。この山下氏の挑戦の軌跡を伝える建築展が7月27日(土)から8月11日(日)までの16日間、長久手キャンパスにて開催されました。この会場づくりや運営に力を注いだのが、都市環境デザインコースの3年生34人です。会期中は、建築業界の方や建築を学ぶ学生、会場設営の際にご協力いただいた瀬戸の窯業に関わる方、オープンキャンパスに来場した高校生、さらに山下氏が訪れ、学生たちがつくり上げた空間をじっくりと鑑賞していました。

 8月3日(土)には、関連イベントとして講演会を開催。「地域素材から街づくりへ」をテーマに、山下氏がこれまで手掛けた建築作品や建築に関する新たな試みについてスライドを用いて解説していきました。本学の学生だけでなく、建築業界の方や今回の展覧会で山下氏を知った瀬戸の方々など、学外の方々も多数参加していました。

コラボレーションすることで限界に挑む、山下氏の建築。

 割り箸のような細長い土地に造られた住宅「Lucky drops」。鉄板の収納ボックスを千鳥に積んだ住宅「セル・ブリック」。建築法規による制限を逆手に取った多角形の住宅「チカニウマルコウブツ」......。材質そのものが持つ個性あふれる姿が印象的な山下氏の建築。どれも建築に不利な条件や素材の限界に挑んだ作品ばかりです。
「私は何かに頼るよりも、自分たちでつくり出していくことのほうが、意味があると思っています。ひとりではできないことでも、みんなの力が融合することで、不可能も可能になるんです」と山下氏。建築を「コラボレート」と捉え、さまざまな人と力を合わせて建築の可能性を広げています。愛知巡回展で披露された作品にもその視点が生きています。 そのひとつが「バウンダリー・ハウス」。住宅地と農地の間にある敷地で、「自然と建築の境界の曖昧さ」を感じることができる住宅をつくるために、迷路のようなプランを採用。建築の可能性に挑むだけでなく、住まい方やコミュニティのあり方までも提案する山下氏の作品に、来場者の皆さんは引き込まれていました。

これからの建築家がめざすべきこと。

 山下氏が近年力を入れている、地域素材の開発やコミュニティ・まちづくりについても講演。さまざまな事例を取り上げ、どうやったら建築家がコミュニティやまちづくりに貢献できるかを解説しました。「建築家がその土地ならではの素材を建築の資材として使用する方法を新たに提案することができたら、そこには、ビジネスが生まれます。そしてビジネスが発生すると、人が集まってきます。たとえば、震災があった釜石市で"漁師のみんなの家"という漁師の休憩所や海の情報発信所を兼ねた建物を創ろうとしていますが、地元の漁協の方々、釜石市の復興活動をおこなう若者チーム『NEXT KAMAISHI』のメンバーなど、どんどん人の輪が広がっていますよ」と語り、建築というハードだけでなく、コミュニティや新しい暮らし方なども創りだすことが、これからの建築であるというメッセージを伝えました。 住む人に適した空間を生み出すだけでなく、建築の可能性や建築を中心とした人々の輪も生み出している山下氏。建築の可能性と、山下氏の信念に触れた都市環境デザインコースの学生たちは、既成概念にとらわれず、授業や制作活動などに打ち込んでいくことでしょう。