第一線で活躍する建築家の世界観を、25人の学生が展覧会として形にしました。
4月から8月にかけて、国内外で高く評価されている建築家・五十嵐淳氏の「五十嵐淳展 状態の構築」の会場づくりや運営に、都市環境デザインコースの3年生25人が力を注ぎました。建築とインテリアデザインの専門ギャラリー「TOTOギャラリー・間」(東京・乃木坂)で開催された展覧会を、愛知淑徳大学内で「愛知巡回展」として再構築するこの企画は、今年で12回目となります。
学生たちは約3カ月間、五十嵐氏の建築作品について研究や研修を経て理解を深め、熱い思いを持って会場プランの考案、施工、宣伝活動などに取り組みました。そして五十嵐氏の建築に対する思いや考え方をシンプルに伝える展覧会場をつくり上げました。16日間の会期中、建築業界の方や建築を学ぶ学生、オープンキャンパスに来場した高校生、さらに、五十嵐氏ご本人も訪れ、学生たちが生み出した「五十嵐淳の世界」をじっくりと観覧していました。
そんな巡回展がどのように形づくられていったのか、ダイジェストでご紹介します。
1st Stage作家研究
学生25人が5チームに分かれて作家研究に取り組みました。五十嵐氏の建築に対する考え方や建築作品の特徴などを資料から分析し、パネルにまとめました。全員でその研究内容を共有するためにチームごとにプレゼンテーションもおこないました。
2nd Stage事前研修
五十嵐氏の拠点である北海道・佐呂間へ、ゴールデンウィークを利用して3泊4日の研修旅行に出かけた学生たち。現地では五十嵐氏が建築作品を自ら案内してくださり、建築への思いを直接伺うなど貴重な体験をすることができました。
3rd Stage会場プランの考案

研修旅行で見たこと、聞いたこと、感じたことも活かし、会場プランのアイデアをチームごとに考案。先生方からの鋭い指摘も参考にしながら、プレゼンテーションやディスカッションを学生主体でおこない、プラン内容を詰めていきました。
4th Stage全体像の決定

「五十嵐氏の建築模型の魅力を際立たせる会場にする」という目標を定め、会場プランの全体像を決定しました。会場となるプレゼンテーションルームの空間をどう活用し、いかに模型ひとつひとつをキレイに見せるか、議論を重ねました。
5th Stage設営準備

7月初旬から設営準備をスタートさせ、設営が効率よく進むようグループごとに作業を分担。愛知淑徳大学の非常勤講師を務めるプロのデザイナーに指導していただきながら、材料の切り出しなどをおこないました。
6th Stage宣伝活動

Webサイトやブログ、ツイッターの立ち上げ、ポスターの配布などをおこない、多くの人に巡回展の開催をPR。また宣伝活動や会場設営、巡回展の運営などの際に身につける、オリジナルTシャツやタオルを作成しました。
7th Stage校内アプローチ

長久手キャンパス正門に面した11号棟壁面に掛ける大きな垂れ幕や、8号棟5階に貼る巨大なボードを制作。さらに「ファーム富田 Signal Barn」をモチーフにした木製看板やPOPをキャンパス内のあちこちに設置し、人の目を引くよう工夫しました。
8th Stage会場設営

巡回展開催の1週間前から会場設営が本格的に始まり、TOTOギャラリー・間から届いた五十嵐氏の模型の組み立ても実施。メインの展示物となる模型の組み立ては集中力を要する繊細な作業となりましたが、学生たちが力を合わせ、ひとつひとつ見事に完成させていきました。
9th Stage開催日

巡回展の開催を迎えた7月23日(土)、学生たちがテープカットをおこない、会場は大きな拍手と歓声に包まれました。
7月30日(土)にはオープンキャンパスが開催され、高校生や保護者の方も興味深そうに見学し、五十嵐氏の建築の世界をじっくりと味わっているようでした。さらにこの日は五十嵐氏の講演会やサイン会もおこなわれたため、一般の方や他大学の学生なども大勢訪れました。
また五十嵐氏が講演会の前に巡回展を見学し、学生や先生が設営時のエピソードなどを話しながら案内していました。五十嵐氏は「とてもよく考えてプランを立て、形にしていただいて感動しました」とニッコリ。特にお気に入りだったのは、ブックショップの棚。「Tea House」をモチーフにしていることに気づいた五十嵐氏は「こんな風にアレンジするなんておもしろい!」と驚きの笑顔を浮かべていました。建築界の第一線で活躍する五十嵐氏に喜んでいただき、交流を深めることができた感動は、学生たちの胸に熱く刻まれたことでしょう。






木組みの模型が力強く建ち並ぶ、イメージを喚起させる展示会。
北海道を拠点としている五十嵐氏の建築は、北の大地特有の厳しい気候に耐えうる技術的・機能的な「強さ」と、そこに住む人、集う人が心豊かに過ごせる「やさしさ」を兼ね備えています。そして空間と空間をゆるやかにつなぎながら、人のさまざまな「居場所」を生み出しているという特徴があります。
今回の巡回展は、そんな17作品の模型が展示され、五十嵐氏の初期から現在までの軌跡を読み解くことができる展覧会となりました。10分の1という迫力ある大きさの木組みの模型が目線の高さに並べられ、解説のプレートやパネルは一切排除された、シンプルな会場。そのため、ひとつひとつの作品をじっくりと見つめ、その空間に自分の身を置いたイメージを自由にふくらませることができました。
また会場外の廊下には、学生が作成した作家研究パネルが掲示されていました。模型を見て五十嵐氏の世界を体感した後、まるで答え合わせをするように本来の設計意図などを知る。そんなおもしろさもありました。

ゆるやかに空間を仕切る半透明の壁
エアチューブとオーガンジーカーテンによる半透明の壁で円弧を描き、「大阪現代演劇祭仮設劇場」を再現。ゆるやかに空間を仕切るとともに、人の動線をつくっていました。また光がやわらかく差し込む幻想的な空間も生み出していました。

学生たちの手で再現した「ファーム富田 回廊」
8号棟5階のプレゼンテーションルームの横にあるテラスを活用し、観光農園の建物と畑の間につくられた半屋外空間「ファーム富田 回廊」を再現しました。大型台風の接近による暴風雨にも耐え、学生たちもホッとひと安心。
ひとつの空間を協力してつくり上げ、仲間との強い絆が築かれました。

いつもは学ぶ場として使っているプレゼンテーションルームを、展覧会の会場という空間に生まれ変わらせる。しかも、国内外で注目されている建築家・五十嵐氏の独立後初の個展となった「五十嵐淳展 状態の構築」の巡回展を手がける。とても恵まれた環境のもと、こうした大変名誉ある活動ができるということに感謝しながら、25人の仲間と共に会場づくりに全力を注ぎました。
五十嵐氏の模型の力強さ、線の美しさを際立たせるために、できる限りシンプルな空間にしようという考えでみんなの意見が一致し、会場プランを練りに練っていきました。リーダーとして一人ひとりの意見を聞き、まとめ上げていくのは大変でしたが、全体を見て動く判断力や調整力が大きく養われたと実感しています。
また会場づくりで得たかけがえのないものは、仲間との強い絆です。自分たちの頭でイメージしていた空間を実際に形にしてこの上ない達成感や感動を共有し、みんなと芯の部分でつながり合えたと感じています。こうした財産とも言える貴重な経験を今後の学びや卒業後の仕事に活かしていきたいと思います。
