追究

2022年01月17日

創造表現学会主催講演会「知求儀」03 窒素から考える環境問題と私たちの暮らし

創造表現学会主催講演会「知求儀」03 窒素から考える環境問題と私たちの暮らし

2021年12月11日(土)長久手キャンパス824教室

過剰な窒素はさまざまな環境問題を
引き起こすことを知っていましたか?
まだ広く知られていない地球規模の課題を学びました。

 専門分野の第一線で活躍する研究者をお招きして、未来を見据えた「今」を語っていただく講演会「知求儀」。創造表現学会が主催するこの講演会は、講演者のユニークでオリジナリティあふれる研究を通じて気づいたこと、発見したことを語っていただき、これからの時代を生きる学生たちの支えにしてほしいという想いが込められています。
 12月11日(土)、長久手キャンパス824教室では知求儀全3回の最終回となる講演がおこなわれました。登壇したのは、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター教授の柴田英昭先生。専門分野は生物地球化学、生態系生態学、土壌学で、森林生態系の窒素循環に及ぼす人間活動の影響に関する研究を進めています。この研究をベースに現在は地球規模の窒素問題に関心を広げています。

創造表現学会主催講演会「知求儀」03 窒素から考える環境問題と私たちの暮らし

創造表現学会主催講演会「知求儀」03 窒素から考える環境問題と私たちの暮らし

 講演のテーマは「窒素から考える環境問題と私たちの暮らし」。柴田先生は講演の冒頭で、窒素は人間を含め、さまざまな生物の栄養分として大切ですが、実は空気や水などの汚染源として、また地球温暖化の原因にもなっていることを知っているでしょうか?と語りかけます。温暖化ガスとして有名なのは二酸化炭素ですが、窒素も温暖化の原因になっていると知り、学生たちは、それがどういうことなのか興味津々の様子です。

創造表現学会主催講演会「知求儀」03 窒素から考える環境問題と私たちの暮らし

創造表現学会主催講演会「知求儀」03 窒素から考える環境問題と私たちの暮らし

 柴田先生はまず歴史を紐解き、窒素化合物を生み出す製法の元となった「ハーバーボッシュ法(1906年)」を紹介します。この発明によって、農作物を育てる肥料を人工的に大量に製造することが可能になり、火薬、薬品、繊維、半導体セラミックなど他分野の発展にも影響を及ぼしました。しかし、同時に人為起源の窒素が大幅に増加。自然起源の窒素の2倍以上に膨れ上がってしまいました。地球上に過剰な窒素が溢れかえり、大気汚染、水質・土壌汚染、そして温暖化が加速。世界の科学者たちは「窒素問題は地球の安全域をはるかに超えている」と警鐘を鳴らすほどになりました。日本では窒素排出の約5割が家庭から出る排水だと言われています。さらに窒素問題が厄介なのは二酸化炭素のように単純に減らせばいいのではなく、減らしてしまうと私たちの生活にも影響が出るということ。つまり多すぎても少なすぎても問題になります。
 柴田先生はこの課題解決の糸口として「窒素フットプリント」を紹介しました。これは人間生活によって環境に排出される窒素の総量を示したもので、調べていくともっとも多いのは食料であり、その中でも特に肉類ほど多くの窒素を放出しています。食の欧米化が窒素を増やす一因になっていることから、日本食への回帰が窒素負荷削減の一助になると先生は訴え、同時に、食品ロス低減や過食の抑制も同時に推し進めていかなければならないと話されました。窒素問題を解決するためには、窒素フットプリントの低い食材を選ぶこと・食べ過ぎないこと・買い過ぎないことを意識して、私たちの生活レベルでもできることから始めるのが大切と伝えられました。
 柴田先生がお話された窒素問題は、残念なことに世間的にはまだ広く知られていません。知られていないことを広く知らしめること。それこそがジャーナリズムの本質であり、この講演で学んだことを身近な友人や家族に話すことも、立派なジャーナリズムと言えるのではないでしょうか。
 環境問題について、深く考え・学ぶことが出来た今回の講演会。「知求儀」と題した、全3回の講演会を通して、各先生方の様々な視点から見たオリジナリティあふれる研究に触れ、今後の学修へのヒントを受け取った学生たち。本学では、今後も社会情勢を鑑みながら、学びの場を用意し一人ひとりの成長をうながしていきます。

創造表現学会主催講演会「知求儀」03 窒素から考える環境問題と私たちの暮らし

創造表現学会主催講演会「知求儀」03 窒素から考える環境問題と私たちの暮らし

 「知求儀」全3回の講演を案内するブローシャーは、インパクトのあるデザインや紙質(裏面がザラザラしている)にこだわることで、より多くの人の目を引き、注目させる機能を持たせています。これもまたジャーナリズム活動の一環と言えます。

第1回、第2回の講演会レポートもぜひご覧ください。
創造表現学会主催講演会「知求儀」01 ジャーナリズムとの向き合い方 はこちら>
創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る はこちら>