追究
2025年02月20日
創造表現学会主催講演会 知求儀 「くじ引きと熟議」による政治参加の新しい波

2024年12月21日(木)長久手キャンパス 825教室
市民が政治を変える!「知求儀」で学ぶ市民議会の可能性
創造表現学会が主催する講演会「知求儀」は、創造表現学部 メディアプロデュース専攻の藤田良治先生が幹事役となって専門分野の第一線で活躍する研究者をお招きしています。毎回、講演者のオリジナリティあふれる研究が紹介され、学生たちが視野を広げ、これからの時代を生きるヒントを受け取る貴重な機会として開催されています。
2024年12月21日(土)に長久手キャンパスでおこなわれた「知求儀」は、名古屋大学大学院環境学研究科の三上直之教授をお招きし、市民が政策提言する「市民議会(ミニ・パブリックス)」についてお話いただきました。
一般的に、市民の政治参加といえば選挙が思い浮かびます。しかし、市民議会は、くじ引きで無作為に選ばれた市民が、じっくりと話し合い、政策提言を行う新しい形の政治参加です。近年、国内外でその重要性が認識され、注目を集めています。市民議会では、専門家だけでなく、さまざまな背景を持つ市民が、自分たちの生活に直結する問題について、直接的に意見を述べることができます。講演では、こうした方法を活用した新しい政治参加のトレンドが紹介され、さまざまな社会課題の解決に私たち一人ひとりがどのように関われるかを考えました。
三上先生は冒頭で市民議会の方法を説明。社会の縮図となるように無作為で選出されたのち、会議参加意思を表明してくれた人の中から年齢や性別、移住地域などの属性が地域全体の縮図となるように調整を行い、最終的な参加者を決めます。こうして行われる市民議会について、三上先生は次に国内外の事例を紹介しました。例えば、当時、狂牛病と呼ばれて世界を震撼させたBSEの全頭検査についての市民議会では、議会前の世論調査では大多数が賛成としてしていましたが、議論を経ると多くの人が全頭検査の廃止を望む方向に意見が変化しました。これは、正しい情報を得て、主体的に政策に関わることで本当に必要な政策を市民自ら選択実行できるという一例だと思います。市民議会はここ15年くらいで世界各地で開かれるようになっています。
三上先生は講演の後半で、学生たちに改めて知ってほしいこととして、「政策問題は自然に存在するわけなく、個人で解決するのは難しいことです。環境問題や格差の問題なども、個人の問題ではなく、これは社会で解決しなくてはいけない問題だと認識されるプロセスが必要で、それによってはじめて対応策が検討される。市民議会で取り上げられる政策とはまさにそのような政策であり、政府だけではなく市民が主体的に考えるべき政策を考える場として市民議会があります」と伝えました。
国内では最近、東京都杉並区や埼玉県所沢市など各地の自治体で気候変動対策を議論するためにこの市民議会のやり方が採用され、議論の結果が市の実行計画や条例に盛り込まれています。今後も日本各地で広がることが期待されています。
講演の最後に三上先生は学生たちに「もしもあなたが市民議会に選出されたら参加しますか?」と問いかけ、学生たちはまわりに座っていた学生たちとディスカッション。多くの学生が「参加したいと思います」と答え、政策への参加に意欲を見せていました。
選挙によって選出された議員に政策を委ねるだけでなく、自分たちが自らの手で地域を良くしていこうという意識が芽生えたと答える学生も多く、民主主義への可能性を感じた時間となりました。