追究
2025年09月30日
ビジネス学部 専門教育科目「私のシゴト学」第6回~第8回
2025年度 ビジネス学部 展示会・講演会・発表会 進路・就職

2025年4月23日(水)~6月4日(水) 星が丘キャンパス55A教室
さまざまな業界のプロフェッショナルから、
就職活動における心構えや
仕事に取り組む意義について学びました。
ビジネス学部ではビジネスに関する専門知識や実践的なスキルを身につける科目が多数用意されています。その中でも特徴的なプログラムが3年次に開講される「私のシゴト学」です。さまざまな業界で活躍するプロフェッショナルからその体験談を聴くことで、働くとは何か、仕事に取り組む意義などを学ぶのが目的です。また講義を通じて、就職活動に臨む学生たちの糧にもなると考えています。
2025年度「私のシゴト学」は4月16日(水)から6月4日(水)まで毎週開催され、全8回で構成されています。今回は後半の第6回~第8回の様子をご紹介します。
【第6回】5月21日
嘉悦大学副学長・愛知淑徳大学名誉教授 真田幸光様
第6回は、2024年から東京都小平市にある嘉悦大学の副学長に就任された真田幸光様にご登壇いただきました。真田様は、社会人時代は銀行員として国際金融の最前線でキャリアを重ね国内外で幅広くご活躍され、1998年からは本学でビジネス学部長やビジネス研究科長、キャリアセンター長などを歴任されました。
講義の中で真田様が強調されたのは「いい社会人になってほしい」ということ。いい社会人とは「人の役に立つ人間」であること。人の役に立つということは「人が困っていることやできないと思っていることをやること」であると説かれました。人は役に立つことをした対価としてお金をいただき、同時に信頼や尊敬も獲得できると述べられました。
また、昨今の「トランプ関税」を例に出し、これが1985年プラザ合意の再来だと危惧。トランプ関税を回避するために「もし君が日本の製造業の社長だったらどうする?」と学生たちに問いかけます。多くの学生が「アメリカでモノを生産する」と答える中、「それではまた日本が空洞化してしまう」と主張されました。「日本の製品は品質が高いが、その価値をより高く売る視点に欠けているので、ドル立てでモノを高く売るべきではないか。」と述べられ、今回のトランプ関税を機に“良いものを高く売る”という価値観を身に着けるべきではないかと提言されました。
その他にも福沢諭吉が遺した言葉「独立自尊(自他の尊厳を守り、何事も自分の判断・責任のもとにおこなうこと)」を挙げ、自らを強くすることで、周りの人にやさしくできると話されました。自分自身を弱いと思っている人がいるなら、人を頼らず自身の力で困難を乗り切れるようにすることが大切ですと説かれました。
最後に現代は混沌の時代であるとし、この先がどうなるか分からない時代だからこそ、自身の考え方をしっかりと持つべきだとアドバイスしていただきました。
【第7回】5月28日
東海鉄工株式会社 代表取締役社長 小澤佳之様/
製造部副部長 武藤一生様
第7回は愛知県豊田市に本社を置く東海鉄工株式会社から、代表取締役社長 小澤佳之様と製造部副部長 武藤一生様にお越しいただきました。
はじめに小澤様から会社概要をご説明いただくとともに、プレス加工や溶接などについて、動画を用いながら業務内容をご説明いただきました。創業時から現在までの技術の変遷についても解説していただき、手作業での加工や溶接をロボット化したことにより、社員のケガのリスクが下がり、品質や生産性も向上したこともお話しいただきました。
続いて武藤様からは略歴を紹介していただいた後、社会人として必要なことをお話しいただきました。大切なのは「ビジョン、チームワークとコミュニケーション、リフレッシュ」の3点。「ビジョン」は明確であるほど実行力が変わってくるとし、ご自身の「からくりカイゼンコンクール」への挑戦を例に全国大会まで出場した経緯を語っていただきました。「チームワークとコミュニケーション」については、人が運搬していたものを自動搬送化させる計画を例にとり、システム、レイアウト、勤務体系の変更で大変な苦労をされた経験をお話しいただきました。「リフレッシュ」については、心の緩和と強化の両方の観点で、自分がリフレッシュできる方法を見つけると良いとアドバイスしてくださいました。
武藤様の次は再び小澤社長がマイクを取り、ご自身が経験した3つの失敗を紹介するとともに、どのように乗り越えてきたかについてお話しいただきました。1つ目は加工費(売値)を原価より低く見積もってしまい、大きな赤字を出してしまったこと。その際、赤字をなくすためにカイゼンを繰り返し、それでも難しい場合は取引先に価格を見直していただき、何とか危機を脱することができたと振り返られました。2つ目は一般市場の安い鋼材を仕入れることにしたものの、ある製鉄会社の事故をきっかけに一般市場の鋼材がなくなり、億単位の赤字を出してしまったことを紹介。この一件を経験したことで、リスク対応やコンプライアンスに対する意識が高まったと話されました。3つ目は、アジアに進出したものの、うまく行かずに撤退せざるを得なかったこと。この件を通して、事業計画の難しさを痛感したとお話しいただきました。
このような失敗でも東海鉄工様が現在もご活躍できているのは自身に「恵まれた環境と良い家庭と運の良さ」があるからこそだと話されました。このようなご経験から学生たちには「困難は永遠には続かない。必ずチャンスが訪れるので、それを掴むために精神的なタフさを身に着けてほしい」とアドバイスされ、講義を締めくくられました。
【第8回】6月4日
株式会社タチ製作所 製造部部長 渡辺正樹様/
技術部技術グループリーダー 松代芳典様/営業部第二グループ 山岡大悟様
最終回である第8回目は、愛知県清須市に本社を置く株式会社タチ製作所様から製造部長 渡辺正樹様、技術部 技術グループ 松代芳典様、営業部 山岡大悟様の3名に御登壇いただきました。タチ製作所は5軸加工機、立型/横型マシニングセンタ、複合旋盤による高精度切削加工を得意とする企業で、スマートフォン、自動車、産業機械部品、ビルシステムなどの部品を幅広く生産しています。
最初に製造部長である渡辺様から管理者としてどのようなことを意識されているかを中心にお話ししていただきました。渡辺様が管理者として会社をより良くするためにDXをはじめとした「業務効率化」や「新規事業・新規顧客の開拓」、SNSや各種メディアを活用した「ブランディング」、社員のモチベーションを高める精神面での「快適な環境づくり」の4点を挙げられました。就職活動においては、社会やその企業で活用できる自身の強みや特色を整理すること、譲れないものに優先順位をつけること、自分に合った会社を選ぶのではなく、自分が合わせられる会社を選ぶといったアドバイスをしていただきました。
続いて登壇された技術部 技術グループ 松代様は2003年に入社され、当時は就職氷河期にあたり、有効求人倍率は0.54倍だったそうです。就職活動では、スケジュールを立てることや時間を大切にすること、そして何より「自分が妥協できる会社を選ぶ」ことを学びました。また、仕事は辛いことや大変なことと向き合うからこそ、お金がもらえるという意識に変わったのが自身にとって大きな成長だったとお話しいただきました。また、入社後に配属された生管購買部では、カイゼン活動に勤しみ、最多カイゼン提案賞を受賞したことが印象に残っていると話されました。現在、在籍している技術部ではその経験を生かし、部下が取り組んでいるカイゼン提案のフォローや高難易度な仕事の対応などをおこなっていらっしゃいます。その他にも同僚とのコミュニケーションを大切にすることや、ストレス解消法を持っておくこと、自ら考え行動することなど、松代様の経験から社会人として大切にしたい項目をご紹介していただきました。
2021年に入社された営業部の山岡様からは、図面や機械加工の知識が乏しかったことに起因する挫折を語っていただきました。当時、コロナ禍でグループリーダーが1週間休養。その代役を担うことになりましたが、うまくいかず、周囲のサポートのおかげで何とか乗り切ることができ、仲間たちのありがたさを実感されたそうです。山岡様は、分からないことが多いからこそ、成長を実感できると話され、分からないことを分からないままにせず、先輩に質問していくことで成長のスピードも上がるとアドバイスしていただきました。また、就職活動についても触れられ、とにかく早めに取り掛かること、周囲に流されず納得いく就職活動を貫くことが大切だと強調されました。
管理者、グループリーダー、若手社員のそれぞれの視点からいただけたアドバイスは、学生たちにとって仕事選びや就職活動での大きなヒントとなったはずです。