追究
2025年08月25日
福祉貢献学部 学術講演会 「学びを通した学び-子どもたちの興味を通して子どもたちの挑戦を促すということ-」

2025年6月25日(水) 長久手キャンパス512教室
世界から学ぶ保育の最前線!
スウェーデンか講師を招き、教育や保育の実例をお話しいただきました。
2025年6月25日(水)、長久手キャンパスにて、福祉貢献学部主催の学術講演会が開催されました。今回のテーマは「学びを通した学び-子どもたちの興味を通して子どもたちの挑戦を促すということ-」 。日本の保育現場でも常に問い続けられている「遊びを通した学び」について、福祉貢献学部が10年間にわたり交流を続けているスウェーデンの就学前学校「Waga&Wilja(ヴォーガ&ヴィリア)」から現役の先生方をお招きし、その実践と理念を学ぶ貴重な機会となりました。
講演に先立ち、福祉貢献学部長の瀧誠先生から挨拶がありました。先生は、2015年からの10年間続くヴォーガ&ヴィリアとの交流の歴史に触れ、今回の講演がスウェーデンから現役の教師・保育士を招く6回目の機会であること、そして開学50周年を機にさらに交流を深めたいという意向を述べられました。「現場の実例を踏まえて多くの学びを得てほしい」という言葉に、参加者たちの期待も高まります。
続いて登壇したのは、ブルモネット就学前学校の教師であるヨハンナ・ゼッタルンドさんと、準保育士のカディジャ・サカさんです 。お二人はまず、スウェーデンにおける保育の根拠となる法令について紹介しました。スウェーデンのすべての就学前学校は、「児童の権利に関する条約」の目的に合致していなければならず、さらに国会で採択されたナショナルカリキュラムに従う必要があるとのこと。このナショナルカリキュラムは、子どもたちにどのような活動を提供するかに関する目標とガイドラインを示しており、「民主主義とサスティナビリティ」 「思いやりと共感」 「言語とコミュニケーション」 「数学的思考」「自然科学」「技術」「デジタルコンピタス」 など、子どもたちの能力に基づく複数の目標分野があるそうです 。ヴォーガ&ヴィリアの指導計画では、これらのナショナルカリキュラムを基に「協働能力」「コミュニケーション能力」「創造性」「好奇心」「責任感」 などの「重要な能力」を長期的な目標として掲げていると説明がありました。子どもたちがこれらの能力を学び発展させることで、絶え間なく変化する外の世界で生き抜くための有利な条件を身につけていけると考えているそうです 。
スウェーデンの国の方針とヴォーガ&ヴィリアの指導計画の説明の後、具体的な保育の取り組みが紹介されました。子どもたちは年齢によって取り組みが異なり、成長段階に合わせてカリキュラムが組まれており、就学前学校の5年間を通じてどのような成長を育むのかという目標が明確化されていました。例えば、最初の年度はナショナルカリキュラムから「周囲に気を配り、他の人の状況を自分と重ねあわせ、手助けする能力」「好奇心、想像力、学習意欲」「自分の置かれた状況に変化を与えるために、考えや意見を述べることに興味を持ち表現する能力」の3つの目標に焦点を当てたそうです。子どもたちが感情を理解し合えるよう、まずは教育者である先生たちが子どもたちに興味を持って接することを心がけたとのお話は、日本の保育者にとっても示唆に富むものでした 。
今回の講演会には、愛知淑徳大学の学生だけでなく、地域で活躍する保育関係者も多数参加し、教室は熱気に包まれました。講演後の質疑応答では、日本とスウェーデンの保育における違いや共通の課題に焦点が当てられました。例えば、ヴォーガ&ヴィリアでは絵本に触れる機会を大切にしているという事例に対し、日本の参加者から「子どもたちの本離れを懸念している」という発言がありました。これに対し、ヨハンナさんは「それはスウェーデンでも同じです。コロナ禍を機に動画の視聴が増え、家庭で本を読む機会が減っています。だからこそ、教育の場で本に触れる機会をもうけることが大切だと思っています」と答え、保育・教育現場の課題が世界共通であることを示唆しつつ、自分たちに何ができるかを問いかけました 。
講演の最後には、福祉貢献学部名誉教授の白石淑江先生がスウェーデン語でお礼を述べ、会場からは温かい笑顔がこぼれました。その後、白石先生は日本語で講演を振り返り、「今回の講演は3つの視点で述べられていました。1つは子どもの興味関心に寄り添うという視点、2つ目は保育者がどう関わるかという視点、3つ目は子どもの成長とナショナルカリキュラムがどのように繋がっているかという視点です。こうした学びはこれから保育や福祉の世界で活躍する方の非常に大きな学びやヒントになったと思います」と述べ、登壇者への感謝と共に、参加した学生や地域の方々へ力強いエールを送りました。
愛知淑徳大学福祉貢献学部では、このように国際的な視点を取り入れた学びを通して、子どもたちの未来を支える専門家を育成しています。今回の講演会が、未来の保育者・福祉専門職を目指す学生たちにとって、大きなヒントに繋がることを願っています。