追究
2017年02月20日
教職・司書・学芸員教育センター主催講演会「国宝・重要文化財を運ぶー固定すること、そのために必要なことー」

平成28年11月24日(木) 長久手キャンパス11号棟1階ミニシアター
学芸員課程で学ぶ学生たちに向けた特別講演。
プロフェッショナルが「美術品を運ぶ」技と心を伝えました。
博物館や美術館などの展覧会は、さまざまな専門職によって成り立っています。そのひとつが「運ぶ」仕事です。国宝や重要文化財を安全に輸送し、展示するために、どんな工夫や配慮、技があるのか、学芸員課程の学びの一環となる講演会が11月24日(木)に開催されました。演題は「国宝・重要文化財を運ぶ -固定すること、そのために必要なこと-」。日本通運株式会社中部美術品支店営業課長・根木宏政氏と美術品梱包輸送技能取得士1級資格を持つ小長谷猛志氏を講師にお迎えし、美術品の梱包や輸送についてお話をしていただきました。
「展覧会の場合、作品選定から調査、下見、その作品に適した梱包材の作成、梱包、輸送、搬入、展示までの一連の作業に携わります。単なる『運ぶ』だけではありません」と根木氏は語り、国宝や重要文化財などの貴重な品々を安全に運ぶためにはいかに多くの工程があるのかを説明しました。さらに国内輸送や海外輸送の方法、美術品を取り扱うときの身だしなみの注意点なども解説。小長谷氏は実際の梱包資材を見せながら「作品に直接触れて良い唯一のものが、白薄用紙という和紙です。中性紙であるため作品への影響が少ないですし、木綿の綿布団を包めば作品を保護する緩衝材になり、細く裂けば紐として使えます」と説明。複雑な形状をした土器の梱包を実演すると、学生たちは目を輝かせながら見入っていました。
また、「自分の手を美術品に見立てて梱包してみよう!」と学生たちが梱包を実践する場も用意されました。それぞれ、手のカタチに合わせて白薄用紙や綿布団を使い、梱包作業をシミュレーション。あらゆる危険を予測して梱包し、安全・確実に運ぶプロの技があるからこそ、多くの人が貴重な美術品を鑑賞できるのだと、学生たちはあらためて実感していました。
今回の講演会は、学芸員の資格取得をめざす学生たちにとって、博物館や美術館の展示にかかわる重要な仕事の一端を学ぶだけではなく、後世に受け継いでいく美術品と向き合う心を磨く時間になったことでしょう。