追究

2013年02月16日

現代社会学部 都市環境デザインコース 「2013卒業研究展」

現代社会学部 都市環境デザインコース 2013卒業研究展

学生たちが学外の企画展に出展し、成長につながる学びや刺激を得ていました。

建築やインテリアの設計、まちづくり、環境工学など、さまざまな空間造形を追究する現代社会学部 都市環境デザインコース。建築士やインテリアデザイナーなどの資格取得、住宅メーカーや家具メーカー、行政など幅広い分野で活躍する人材の育成を見据え、多岐にわたる講義や演習を用意しています。そして4年次には、学生たちが自分の興味を深め、約1年間かけて卒業研究に力を注ぎます。

 2012年度も、4年生47名が設計・制作や論文の作成に取り組み、その成果が「2013卒業研究展〈学内展〉」で展示されました。さらに、名古屋市民ギャラリー栄にて開催された〈学外展〉には、教員による講評会で特に高い評価を受けた設計・制作18点と論文2編が出展。会場には、建築の仕事に携わる方や建築を学ぶ他大学の学生、地域の方々など多くの人が訪れ、学生たちが制作意図などを熱心に説明していました。
この〈学外展〉の企画や設営、運営も、学生主体。共に4年間を過ごした仲間と力を合わせ、学生生活の集大成となる一大イベントをつくり上げていました。ここでは、卒業研究や展示会に対する学生たちの思いを紹介します。


学内展

学外展

設計・制作

Works01 受け流す水 寄り添う水 防災機能をそなえた親水空間施設

◎作品紹介
名古屋市熱田区の堀川沿いに建てることを想定し、災害の歴史に関する資料館、集合住宅、親水スペースを考案。「水害に備えることの大切さ」と「水辺の楽しさ・賑わい」を、地域の人々に広く伝えていく施設を形にしました。

 「受け流す水 寄り添う水」という研究テーマにしたのは、3年次に参加した東日本大震災復興支援 模型復元プロジェクト「失われた街」がきっかけです。大震災や大津波で失われてしまった街や村を縮尺500分の1の模型で復元する取り組みを通して「防災」と「親水(水遊びや水辺の景観を楽しむなど、水に親しむこと)」への関心が高まり、その両方の機能をあわせ持つ建築を設計したいと考えました。1959年の伊勢湾台風など過去の災害の記憶を後世に伝えることが重要だと強く感じ、資料館を設計するとともに、想定した土地にもとからある約5mの石垣を活用し、万が一の災害時に「ここまで避難すれば大丈夫」という高さが視覚的・感覚的にわかる建物をめざしました。卒業研究で深めた防災に関する知識や空間設計の力、物事を多角的に捉える力を、卒業後、内装設計の仕事にも活かしていきたいと思います。

Works02 くうかん の かんかく

◎作品紹介
「空間」について深く考えるきっかけづくりをめざし、4冊の絵本を制作。空間を「人と人との間の距離=間隔」と捉え、その空間を「感覚」的に理解することができるように、毛糸や綿、皮、砂などの素材をコラージュしました。

 建築模型によって空間を表現してきた私にとって、絵本で空間を表現することは大きな挑戦でした。しかし、子どもから大人まで多くの人に「空間」を感じてほしいと考え、絵本という表現手法を選びました。キーワードにしたのは「五感」です。「かんかく」という言葉に「間隔」と「感覚」のふたつの意味を込め、読み手の感性や想像力を刺激するために、手触りの異なる多様な素材を使い、貼り絵のようにコラージュして絵本をつくり上げていきました。立体感のある文字の一字一字も、既製のフォントではなく手書きです。人間味のある作品になるよう徹底的に「自分の手でつくる」ことにこだわり、ストーリーやキャラクターの考案にも力を注ぎました。こうした新たなチャレンジを積み重ねる中で鍛えられた思考力や表現力は、今後、社会に出てからもさまざまな場面で役立つと信じています。

Works03 住み開き 住人十色のシェアハウスの提案

◎作品紹介
共同スペースと28戸の居住スペースで構成される「共に暮らす」ためのシェアハウスを考案。子どもから高齢者の方まで幅広い年代の人々が深く関わり合い、支え合うコミュニティが育まれていく、新たな時代の「家」をめざしました。

 東日本大震災のとき、家族はもちろんご近所や地域の人との関わりの大切さを改めて感じ、「共に暮らす」ことについて深く考えるようになりました。私なりの答えを具体化したのが、この「住み開き」というシェアハウスです。工夫した点は、人と人が関わり合うきっかけとして、あえて「不便さ」を取り入れたこと。自分の居住スペースの「中」だけで生活が完結するのではなく、たとえばトイレを共同スペースに設置するなど、「外」に出て他の住人と生活を共にするための間取りや仕組みを考案しました。こうした自分の考えを形にし、わかりやすく伝える力が、都市環境デザインコースで大きく伸びたと感じています。卒業後、就職先の企業でサイン・ディスプレイの制作に携わる上でも、4年間で培った発想力や提案力などを発揮し、人と人をつなぐためのデザインを生み出していきたいと思います。

論文

Works03 住み開き 住人十色のシェアハウスの提案

◎作品紹介
日本三大繊維街のひとつである名古屋市中区の長者町。そこで検討されている「道路空間からのまちづくり」に着目し、町内の会議への参加、アンケート調査、商店街の写真の分析などを通して「心地よい道路空間」を考察しました。

 ゼミの担当教員である延藤安弘先生と共に長者町のまちづくり会議に参加し、町の方々や名古屋市の職員の方々と意見を交わしました。議論の場で見えてきた課題のひとつが「アーケード」です。「老朽化しているから取り払おう」「昔ながらの風情を感じさせる町の財産だ」など三人三様の考えがあり、人々の暮らしやすさと長者町ならではの魅力の保存を同時に実現させることの難しさを痛感しました。そこで私はまちづくりに役立つ論文を書き上げたいという一心で、長者町の約300枚もの写真から道路空間の課題を洗い出し、アンケート調査から町の方々の思いを探っていきました。この卒業研究を通して学んだのは、難題にも果敢に挑むことの大切さです。町の将来のためにさまざまな問題とまっすぐに向き合う長者町の皆さんのように、試行錯誤を重ねながら前進し続ける社会人をめざしたいと思います。

2013卒業研究展〈学外展〉 設営・運営スタッフ

学外展 設営・運営スタッフ

 今年度の卒業研究展〈学外展〉は例年よりも開催日が早く、先生方にサポートしていただきながら仲間と力を合わせて短期間で準備に取り組みました。スケジュール表を作成し、役割分担をして展示用パネルの梱包や備品管理などのさまざまな作業に励み、設営・運営を着実に進めたことは先生方も評価してくださり、私たちの自信にもつながりました。これまでに授業の課題制作や建築展の会場づくりなどを通して仲間と協力し合い、目標を達成していく経験を積み重ねたことの集大成だと感じています。この〈学外展〉は一人ひとりの卒業研究の発表の場ですが、4年間、共に努力を重ね、切磋琢磨したかけがえのない仲間とおこなう、学生生活最後の協働の場でもあります。都市環境デザインコースで学んだ人と人の絆の尊さ、その力の大きさを噛みしめながら、社会へ一歩を踏み出し、それぞれの目標を実現させたいと考えています。