追究

2015年03月31日

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2015卒業プロジェクト展

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2015卒業プロジェクト展

平成27年2月17日(火)~22(日) 名古屋市民ギャラリー栄

学生生活の集大成、卒業プロジェクト展を学外で開催しました。

  "空間"をテーマに、建築、インテリア、まちづくりなど幅広い視点からアプローチし、人や社会を取り巻く企画提案力を磨く、都市環境デザインコース。多岐にわたる講義や演習の集大成が卒業プロジェクト展です。3年次からゼミに所属し、自身の興味と専門性を突き詰め、4年次から約1年かけて、建築・インテリアの設計・制作や論文作成に取り組みました。
 名古屋市民ギャラリー栄にて開催された「2015卒業プロジェクト展〈学外展〉」には、学内選考で特に高い評価を受けた設計・制作や論文が出展。白で統一された会場には、学生のご家族や後輩たちはもちろん、建築の仕事に携わる方や建築を学ぶ他大学の学生、地域の方々などが多く訪れ、学内展よりも幅広い年代の人々が作品を鑑賞。学生たちが制作意図などを熱心に語る姿も見られ、会場設営や運営など、主体的に創り上げた展覧会は、大盛況のうちに幕を閉じました。ここでは、一大イベントを創り上げた学生たちの思いを紹介します。

設計・制作

「坂出人工土地再生計画―地方都市でのゆとりある生活をめざす―」

 小さいころ父親の仕事の関係でさまざまな土地に住みましたが、古き良き日本の暮らしが残る香川県は特に鮮烈に覚えていました。当時の友達に聞くと、若者はほとんど都会に出てしまうと言います。その状況をなんとかしたいと考えたのがそもそもの始まり。そして、事前調査で坂出人工土地に出会いました。建築運動「メタボリズム」の負の遺産として保存されたままになっていましたが、それを再構築しようと考えました。ポイントは社会の問題を建築物で解決しようとしたこと。コレクティブハウスの提案も女性の社会進出や無縁社会にともなう問題がつながりによって解決できればという思いを込めました。美しい設計を完成させることに目が向きがちですが、課題解決のための設計という本質を見失わないよう打ち込んだ卒業研究は、私の自信となりました。

◎作品紹介
 社会の変化や人口の成長に合わせて有機的に成長する都市や建築を提案した「メタボリズム(新陳代謝)」のひとつである「坂出人工土地」。今は新陳代謝の担い手がおらず、保存されたままとなっていました。それを現代のライフスタイルに合わせて再構築できないかと考えたのが、この研究設計です。

論文

「弱視者に易しいユニバーサルデザインキッチン」

 目に障がいのある祖母の存在がきっかけでこのテーマを選びました。最初はユニバーサルデザインの道具を研究したのですが、その多くが利便性を追求したもの。もっと大きな視点、かつ、3年間磨いた空間的視点で新しい提案を考えたいと思い、視覚障がい者向けフラワーアレンジメント教室に参加し、生の声を収集。心に残ったのは、できるだけ健常者と同じように暮らしたいという言葉でした。この思いに応えようと、機能的にはほとんど健常者と同じで、色の力だけで使いやすさを追求したキッチンを考案。論文に載せたサンプルはすべて、サインペンや水彩絵の具で塗りあげました。相手の気持ちに寄り添いながら提案する力は、4月から営業として働く私にとって強みになると思います。

◎作品紹介
 弱視者にとって使いやすく、オシャレなキッチンを考えました。文献研究や弱視者へのインタビューから、彼らには「特別扱いされたくない」という意識が強くあると感じ、「色の組み合わせ」という一点に絞って、カラーパターンは100通り以上提案しました。

「PC構造におけるコンクリートのプレストレス有効率に関する研究」

 建築の一分野である「構造」が苦手にもかかわらず、専門とする岡本ゼミの門を叩いたのは、学生時代何かひとつでも成果を残したいという思いからでした。苦手意識の強かった分野の勉強も3年次からは気合いを入れて猛勉強。既存の基準値に疑問を投げかけるこの研究も、私にとって「チャレンジ」のひとつでした。やり遂げられたのは先生の手厚いサポートのおかげです。取り上げた構造体は、耐久性が高く比較的自由度の高い設計が可能であるPC構造。テーマは、安全性にも関わるプレストレス有効率の妥当性。条件を微妙に変化させ96のケースを検証しました。その結果、この基準値は再検討が必要ではないかという結論に至りました。ひとつのことを最後までやり通す忍耐力が卒業研究で身につきました。

◎作品紹介
 PC構造のひび割れに影響する数値がプレストレス有効率。採用しても良いとされる数値が規定されていますが、この数値の妥当性については研究が充分になされていません。この値は果たして妥当性のある数値なのか。今回はコンクリートのプレストレス有効率に着目し、検証しました。

「大人の発想の転換を促す絵本の可能性に関する研究」

 トラブルをエネルギーに変える、創造力の翼を広げる、視点を変えると新たな発見がある......。これらは77冊の絵本を分類した19の各ジャンルにつけたタイトルの一例です。私は多種多様な絵本を読み、そこから学び取ったことをわかりやすくキャッチフレーズにして表現しました。その作業を繰り返す中、自分がどれだけ固定概念にとらわれていたかに気づき、そして枠にはまることなく自由に発想し、表現して相手に伝えることでまた新たな気づきが生まれるのだと知りました。たくさんの絵本に触れ、その魅力を研究した今、もっと自分を表現していきたいと感じています。4月から社会人として注文住宅のプランニングをする際も、相手の思いをカタチにするだけではなく、自分の意見も発信しながらお客さまの期待以上のプランを提案していきます。

◎作品紹介
 研究の表題に掲げた「発想の転換」を「"できない"を"できるかも"に、"できるかも"を"できる"にすること」と定義。子どもが絵本の世界で自由な発想を育み、心を豊かにする経験をするのと同様に、大人にも絵本の力は有効だと考え、その可能性について考察しました。

2015卒業プロジェクト展<学外展>設営・運営スタッフ

 課題に追われ大変な思いをしたときも、日本を代表する建築家の愛知巡回展を学内で成功させたときも、思えばいつも都市環境デザインコースの仲間がお互いに励まし合い、協力しあってやってきたように思います。そのラストを飾るのがこの卒業展。何度も展示会を創り上げてきたので、協力体制はばっちり。声を掛ける前に全員が自主的に行動しているので、搬入も設営もとてもスムーズに進みました。ひとつ、今までと大きく違うところは学外展なので一般のお客さまが来場しやすいこと。学外展に家族を招待し、4年間の成果を報告するいい機会となりましたし、感心した様子で模型を眺める家族の姿を見てとても誇らしい気持ちになりました。卒業プロジェクトの成功を大学生活の思い出のひとつとして大切に胸にしまって社会に踏みだし、それぞれの分野で活躍していきます。