式辞

平成30年度 入学式 学長式辞

 新入生の皆さん、ご入学、おめでとう。皆さんの愛知淑徳大学へのご入学を心から歓迎いたします。ご臨席のご家族の皆さまにも深い祝意を申しあげます。また、お忙しい中、本日の晴れの式典にご臨席たまわった来賓の皆さまに、篤く御礼申しあげます。


 本学の母胎となる愛知淑徳学園は明治三十八(一九〇五)年の創立から、すでに百十数年の歳月を積み上げて来ました。私立の高等女学校としては愛知県でもっとも古い伝統を持ち、近代という新しい時代の人間教育を長く担いつづけた学園です。その学園を母胎として四十三年前に大学は出発しました。その二十年後、男女共学の総合大学に発展、さらに九つの学部を擁して、現在に至っております。この発展を支えた学園全体の教育理念は「十年先、二十年先を見すえた人材育成」ということです。女性差別のなお公然とあった明治時代に先進的な女子教育をつらぬいて地域の信頼を勝ち得、この実績を基盤として大学を開設し、男子学生にも広く門戸を開放したこと、さらに、学生の多様なニーズと期待に応える九学部の総合大学へと飛躍して行った背景には、この「十年先、二十年先を見すえた人材育成」という学園の教育理念が息づいております。


 いうまでもなく、大学にも学生の教育を確固として支える独自の理念があります。「違いを共に生きる」という考え方です。二十三年前に男女共学化を行った根拠としても、この理念が生きております。男女の「違い」のみならず、年齢、民族、国籍、文化、障がいの有無といった様々な人間相互の「違い」を超えて、自分とは異なるものの存在、異なる考え方を互いにフェアに認め合い、それがこの世に存在する意味や価値を深く理解していくこと、これこそが大学として本学が高く掲げる教育理念ということになります。今ここにいる皆さんには四年間をかけて、この理念を身につけてもらいたいと願っております。


 皆さんが愛知淑徳大学のそれぞれの学部、学科、専攻を選び、入学試験の高い関門を越えて本学に入学された目的は、まず学びたい学問領域、身につけたい専門技術、あるいは獲得したい資格や免許があるからですね。皆さんが本気で取り組めば、本学の教授陣やカリキュラムは皆さんの強い向学心や熱意に必ず応え得るだろう、と私は確信しております。また、それこそが大学教育に携わる私どもの、皆さんに対する責任でもあり、義務でもあり、同時に歓びでもあるわけです。


 ただし、本学に学ぶ目的を専門知識や技術の習得だけにとどめるのではなく、それを生かし、さらに豊かなものにするための基礎として、高いコミュニケ―ション能力を育てていただきたいと思います。端的にいえば、コミュニケーション能力とは、まずは自分が学んだ知識や技術、ものの見方、考え方を、他者に正確に伝える能力であり、さらに学びで得た知識や技術によって、他者の持っている異なった知識、技術、ものの見方、考え方を正確に理解する能力です。
 これは口にすれば簡単なようですが、自分とは全く異なる他者との間で誤解や偏見のない正確な対話を交わし合うということになりますから、実はかなり難しい。大きな問題でいえば、今も弾丸の飛び交うアラブ諸国の間の戦争、ロシアとウクライナの戦争などを考えてみてください。その原因のひとつには、相互の意思や事情を伝え合う努力、理解し合う努力、つまりコミュニケーションが欠けているのではないか、と皆さんも思ったことがあるでしょう。ごく身近な問題であれば、自分とは異なる価値観でものを見る人のことを想ってみてください。自分とは違う、合わないというだけの理由で背を向けたり、口をきこうともしなかった経験はありませんか?国家同士でも、お互いが抱える「異なるもの」「違うもの」が大きな原因のひとつとなって残酷な争いをひき起こすことがあります。


 大学は、こうした自分とは「異なるもの」「違うもの」とのコミュニケーションへの糸口や、その技術や勘を獲得するための示唆が豊富に用意された教育機関なのです。さきほども価値観の異なる人の例を挙げましたが、皆さんの身近な周囲にも「異なるもの」が満ちております。例えば、親しいと思っている友人も、厳密には、皆さん自身とはまったく異なる環境や生活習慣や人格や心をもって生きている他者です。こうした友人という身近な他者から始まって、最終的には、人間そのもの、社会そのものを理解しようとすること、さらに外国という異なる文化や歴史という異なる時間の存在を理解しようとすること、少なくとも自分とは「異なるもの」として、多くの存在や現象があることに気づくこと、これがコミュニケーションの糸口です。


 この糸口に気づくことから理解や交流に向かう本格的なコミュニケーションが始まります。その能力を高めるために、人間の心の働きが客観的にはどんなものなのか学んだり、日常会話が出来る程度にまで外国語に力を注いだり、あるいは本学が力を入れているボランティア活動や海外インターンシップを経験することで、生きた実社会に触れることを始めとして、さまざまな示唆や契機や方法が大学には豊富に用意されています。つまり、それらは「違いを共に生きる」ための具体的な学びの機会だといえます。


 繰り返しますが、私が皆さんにぜひとも育てて頂きたいのは、コミュニケーション能力です。自分とは「異なるもの」「違うもの」を理解し、それと交流しようとする努力の中で、皆さんには、人間の抱く喜びや苦しみや悩みや怒りといった様々な心の動きへの深い想像力や共感の力もおのずから備わってくるはずです。大学の四年間は、そういう気づきや学びに専念できる特権的な人生の時間であるといえます。大いに励み、精神的にも感情的にも豊かな学生生活を送られることを、皆さんに期待してやみません。

平成三十年四月二日

愛知淑徳大学 学長 島田修三