健康豆知識

普通の風邪

2023年2月。特別養護施設の理事長から電話があった。「奇妙な感染症が流行っている」ということだった。

入所患者の大半が発症している。症状は頭痛、咽頭痛、咳、鼻水、発熱だという。
病院も併設しているので、病院へ来院させて外来の担当医に診察させたそうだ。
4人の内科の医者が総勢30人程度の患者を診たそうだが、どの医者も診断ができなかった。

「いずれの患者も症状は軽く数日で治るのだが、原因を知りたい」という電話が私に掛かってきた。
私は大学の感染症医学教室に問い合わせることを勧めると、彼は患者から集めた検体をもって大学を訪れた。

そしてすぐに結果が出た。
コロナでもインフルエンザでもなく、従来から流行っていたいわゆる風邪の病原体が正体であった。
施設では新型コロナウイルスの予防の為に万全な対策をとってきた。3年間は完璧に抑えられてきた普通の風邪が日の目をみて活躍しだした、ということのようだった。

普通の風邪の診断は医者にとっても難題であるのだ。

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