健康づくりや病気の予防などに関するさまざまなトピックスを、日々の暮らしにお役立ていただけますと幸いです。
加齢とともに運動機能や認知機能が低下して心身の脆弱性が日常生活に及ぶと介護が必要となる。高齢者の介護は超高齢社会に突入した日本の最重要課題である。
介護状態に移行する前に早く気づき、正しく介入をするために提唱された概念が「フレイル」である。
フレイルとは、健康な状態と介護状態の中間の状態をいう。
フレイルの基準はFriedが提唱したものが採用されていることが多い。基準には5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはプレフレイルと判断する。
- 体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
- 疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
- 歩行速度の低下
- 握力の低下
- 身体活動量の低下
高齢者のフレイルは、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険がある。
愛知淑徳大学クリニック内科・糖尿病内科 医師
井口昭久
世の中は理不尽なこと、不愉快なこと、苛つくことで溢れている。怒りは何らかの対象に向かっているようで、実は自身を苛んでいる。そこで、怒りを自らコントロールしコミュニケーションを改善するアンガーマネージメントの手法が1970年代に米国で誕生した。2018年に開催された日本女性外科学会で秋田大学の蓮沼直子氏は上手な怒り方を紹介している。
まず、伝える内容の主語を「私」にすること。「あなたは○○だ」の代わりに「私はこう感じている」と言えば批判と応酬の構図になりにくい。
次に、過去の話を持ち出さない。「あなたっていつもそうよね、あの時だって・・」は、夫婦喧嘩をエンドレスにする。私を主語にすると過去の話が出にくくなる。
さらに、「ちゃんと」「しっかり」「もう少し」など、具体性に欠ける言葉を避ける。「ちゃんとやってって言ったよね」「だからちゃんとやったじゃないか」という会話は怒りを沸騰させる。
怒りをなくすことはできないがコントロールすることはできる。精神衛生上まことによろしいことである。
愛知淑徳大学クリニック内科・糖尿病内科 医師
植村和正
高血圧の疑いのある人には家庭で血圧を測ることが勧められる。医師が患者の血圧を測ると平常の血圧よりも高くなる可能性があるからである。診察室に入り医師や看護師を目の前にすると緊張し、血圧が上昇することがある。白衣を見ただけで血圧が上がる人もいる。そういう人の高血圧を白衣高血圧という。
血圧は自律神経系により調節されているので一日中変動している。多くの人の血圧は朝が高く夜は低い。
交感神経系と副交感神経系は微妙なバランスを保ちながら全身を保持している。
だからいつでも血圧は上がったり下がったりしている。心が揺らぐのは生きている証であるように血圧も揺らいでいる。
体温も血圧と同じように変動している。ヒトは体も心もゆらゆらしながら生きている。
秋風に揺れるコスモスのように。
愛知淑徳大学クリニック内科・糖尿病内科 医師
井口昭久
コレステロールは人間の細胞の細胞膜の材料として不可欠のものであるが、血中濃度が高い状態が続くと、動脈の内壁にコレステロールが沈着して血管がしだいに塞がっていく。心臓の血管が閉塞すると狭心症や心筋梗塞を発症することになる。これが高コレステロール血症を治療しなければならない理由である。
肝臓で合成されたコレステロールは、リポ蛋白と呼ばれるトラックに乗って血液の中を運ばれていく。体内各部へコレステロールを供給する供給用トラック(これをLDLという)が過剰になれば、動脈血管壁に沈着して動脈硬化症の原因となる。「悪玉コレステロール」と呼ばれるものである。一方、体内各部の余剰のコレステロールを回収する回収用トラック(これをHDLという)は過剰なコレステロールを血管壁から肝臓に戻す役割を負うので、動脈硬化の進展を防ぐことから「善玉コレステロール」と呼ばれている。
愛知淑徳大学クリニック内科・糖尿病内科 医師
植村和正
代表的な認知症である、アルツハイマー病。今まで覚えていたことを忘れてしまい、知能は持続的に低下し、脳の萎縮を伴う病気である。もう一つの代表的な認知症は、血管性認知症。脳の動脈硬化がベースにあり、生活習慣病の行き着く先である。近年、両者の原因はオーバーラップしており、アルツハイマー病も血管性認知症と同様に、糖尿病、高コレステロール血しょう、高血圧などが危険因子だとする報告もでてきた。すなわち「アルツハイマー病も生活習慣病の一種である」と考えられるようになったのである。年を取れば誰でも物忘れをするようになるが、誰もが認知症になるわけではない。認知症はあくまでも病気であり、予防可能な疾患である。
愛知淑徳大学クリニック内科・糖尿病内科 医師
井口昭久