一過性全健忘
原因不明の不思議な病気である。
ある日急に、今日何をどのようにしていたか、今自分はここで何をしているのか、などということがわからなくなる一過性の記憶障害である。
健忘症は記憶の武装強盗であると言われているが、まさに強盗に記憶を奪われてしまった状態である。
記憶障害ではあるが、アルツハイマー病などの認知症ではない。
記憶が貯蔵されていないのでその日のことが思い出せないし、現在が自分の過去になることはない。
会話に必要な道具、すなわち言葉とそれを理解する力は無傷なままなのに言葉からは感情と深みが消えてしまう。
状況の説明を受けても覚えられないため、同じ質問を繰り返す。患者は見知らぬ人には親しみがわかないのと同じくらい自分自身になじめない。
通常は24時間以内に回復する。
てんかんなどとの鑑別診断が必要である。
再発することはない。