老人の正常値
健康診断の結果が出る時期になったが、「お前は正常な老人か?」と問われれば「そうです」とは返答しにくい。多くの老人の結果は標準値を外れているからである。
人の寿命を説明するものに「個体乗り物説」というのがある。
人は発生期-成長期-生殖期はプログラムされている。女性でいえば閉経まではプログラムされているが、それ以降はプログラムされていないとする説である。人は子供を産み、育て終えるまでは遺伝子が引率してくれている。だから年齢による肉体的な差は少ない。そして一定の年齢になるまでは命を保障してくれる。しかし、それ以降はプログラムがない。「勝手にしなさい」とする説で、プログラム欠如説ともいう。
血糖や血圧は加齢とともに増加することが知られているが、「個人差が大きくなること」こそが普遍的で「加齢による正常値」というのは見つかっていない。成人になってしまうと個人の事情が優先されて制御を受けないからである。
老人をひとまとめにして「そもそも正常な老人というのはこの世の中に存在するのであろうか?」という疑問に誰も答えを出せないでいる。