風邪について
「先生。2日前から熱が出て、咳が出て喉が痛いです。明日から旅行へ行きます。それまでに治したいのですがお願いします」このような学生は多い。「風邪は治せない」と私が答えると「この藪医め」という顔をして私を睨む。そして「それなら他の医者へゆく」というようなそぶりを見せて腰を浮かそうとする。しかし他の医者へ行っても風邪は治せない。風邪は鼻汁、発熱、咽頭痛、頭痛、食欲不振などいくつかの症状が集まってできた疾患概念である。風邪の多くはウイルス感染症であり、細菌感染のように抗菌薬は効果がない。したがって風邪を治す、すなわちウイルスをやっつけることは現在の医学で不可能である。熱を下げたり、のどの痛みを和らげるような対症療法でウイルスの猛威が遠ざかるのを待つしかない。風邪を治してくれるお医者さんがいたら、私もかかりたい。
しかしこの頃は「風邪は治せない」とは言わないことにしている。自然に治るからである。