ガリバー旅行記にみる認知症
ガリバー旅行記は300年に亘ってのベストセラーである。ジョナサン・スウィフトがこの本を出したのは1726年で十遍舎一九が日本では初めて翻訳に取り掛かったらしい。ガリバー旅行記に不死の人の話が出てくる。その様相を次のように描写している。「80歳ともなれば、老人につきもののあらゆる愚かさや脆さを曝露するばかりでなく、絶対に死ねないと言う前途を悲観し多くの弱点をさらけ出すようになる。頑固で気難しくて貪欲で不機嫌で、愚痴っぽくておしゃべりになる。若いころに学んだこと以外は何も覚えておらず、その記憶さえも極めて不完全である」スウィフトの描いた老人像は現代の認知症患者の姿と部分的には似通っているところがある。スウィフトは59歳の時にガリバー旅行記を書いているが晩年には彼自身に認知症と思われる症状が出現したらしい。後年になってアルゼンチンの文豪ボルヘスは「スウィフトがこのような人間たちを空想したのはやがて自分もそうなるのではないかと恐れたか、あるいはその不吉な恐怖を払いのけようとしたためにちがいない」と述べている。それにしても私が驚くのは300年も前に書かれた著作が現代でもベストセラーであり続けていることである。
