成長
2013年03月20日
プロダクトデザインのコンテストで入賞し、建築家としての幅を広げる。

vol.13

世界的に有名なボンベイ・サファイアのコンぺで入賞。
独創的なデザインのグラスが評価される。
平成20年6月、「ボンベイ・サファイア デザイナーグラス コンペティション」の第6回日本大会で、優秀賞をいただきました。このコンペは、洋酒の一種、ジンのブランド名で世界的に有名なボンベイ・サファイアが若手デザイナーを支援する活動の一環としてワールドワイドに開催しているものです。高校生の皆さんにはなじみがないと思いますが、ボンベイ・サファイアといえば、ただお酒の名前であるというだけではなく、著名なデザイナーを起用して広告デザインに力を入れ、デザインに関するイベントやアーティストを支援する催し物を行うなど、デザイン界でも知られる存在です。私がその名を知ったのも、建築やデザインを扱うお気に入りの雑誌の紙面でした。
コンペの課題は、ボンベイ・サファイアの傍らに置くにふさわしいインスピレーションにあふれたグラスのデザインでした。私が出品したグラスのタイトルは、「TuTumu」。一見、普通のグラスのように見えますが、実は大きなグラスの中に小さなグラスをはめ込んだ二重構造になっており、外側のグラスと内側のグラスの間の空間には、「包む」という名の通り、花や草木、小物などを包み込むことができます。シチュエーションやその時の気分に合わせて中に包むモノを変えることで、同じグラスでありながらいくらでも装いを新たにできるところがポイントです。
今回、コンペに入賞したことはもちろんですが、自分のデザインがカタチになる喜びを感じることができました。これまで建築を学ぶ中で、デザイン案や設計図、模型は多く作ってきましたが、それが実際にカタチとして自分の前に現れたのは初めてだったからです。私のデザイン画をカタチにしてくれた、ガラス職人の方の仕事ぶりにも感銘を受けました。ベテランの職人さんが私のような若造の指示に真剣に耳を傾け、大量の試作品を作っては壊し、作っては壊し、複雑なデザインをなんとか形にしようと努力してくださるのです。そのひたむきな姿勢には頭が下がりましたし、モノづくりのプロとして見習いたいものだと思いました。
小学生時代から憧れてきた建築家として活躍するために
設計事務所でのアルバイトや外国旅行、コンペで自分を磨く。
建築家を志したキッカケは、小学5年生のとき、雑誌で著名な建築家の自宅写真に出会ったことでした。これまでに見たこともないような、その住宅の佇まいに強く惹かれ、憧れを抱いたのは今もありありと記憶に残っています。
高校時代は文系でしたが、愛知淑徳大学なら文系でも建築が学べることを知り、迷わず進学しました。期待にたがわず、校舎もキレイで設備も豊富にそろっており、充実した学習環境で勉強できたことは本当にラッキーだったと思います。
大学時代は、設計事務所でのアルバイトに明け暮れました。時給が安い上に、徹夜や泊りがけで働くこともあるハードな仕事でしたが、現場を肌身で知ることができ、お金には代えられない貴重な経験となりました。
将来は1級建築士の資格を取り、自分の設計事務所を構えるのが夢です。そのためには自分にしかできない設計スタイルを確立することが不可欠と考え、大学院進学後は自分を磨くことに集中してきました。その一つが、ヨーロッパと北欧へバックパック一つで旅に出たことです。近代建築の三大巨匠といわれるル・コルビュジエや、憧れの建築家アルヴァ・アアルトの作品を訪ね、中に入って空間の広がりを観察したり、使われている素材の感触を確かめたりと、写真で見ているだけでは決して分からない作品のリアルな息づかいを感じてきました。
ボンベイ・サファイアのコンペへの応募も、感性を磨くための挑戦でした。グラスなどの製品を対象とするプロダクトデザインは、一見建築とは関係ないようですが、どちらも人間の生活にとって大切なデザイン。より優れた建物を設計するために、建物の中にあるモノもデザインし、トータルで人の生活の質を向上させたいと考えたのです。
現在は、アルバイト先で出会った建築家のもとで修行をしながら、建築からプロダクトデザインまで、さまざまなコンペに精力的にチャレンジしています。部屋のカレンダーは、コンペの予定でぎっしり。精力的に腕を磨き、独創的なデザインを世界に向けて発信したいと考えています。
2008年8月 取材