成長

2013年03月20日

「身を活かして仁をなす」という信条を胸に、少年たちや社会のために力を尽くしたい。

vol.21

コミュニケーション学部 コミュニケーション心理学科 OB

心理学の専門性を活かすため、法務省の心理技官の道に進みました。

心理学に興味を持ったのは、高校生の頃、バスケット部で顧問の先生と部員の考えの行き違いなど、人間関係の難しさを強く感じたことがきっかけです。そして愛知淑徳大学のオープンキャンパスに2回も参加し1、2年生で心理学の4領域を総合的に学んだ上で専門分野を深めていけるカリキュラムに惹かれました。さらにそこで西出隆紀先生の臨床心理学の模擬授業を受け、ここで学びたい!と進学への意欲を燃やしました。
在学中は希望していたとおり心理学を幅広く学び、入学当初から特に関心が高かった臨床心理学を追究するために西出ゼミに進みました。西出先生の専門である精神分析を中心にさまざまな心理査定技法を学び、また英語の論文を読んで心理臨床の新しい知見に触れ、視野を広げていきました。
4年間を通して強く印象に残っているのが、情緒障害児短期治療施設(児童心理療育施設)での1週間のゼミ実習や、発達障がいのある子どもと不登校の子どもが参加するキャンプのボランティアです。子どもたちと接しながら支援方法などを考える貴重な実践の場となり、傾聴力や思考力、企画力、実行力などさまざまな力が養われました。また、子どもと接する上で大切にしていたのが、いかに「自分らしく」接するかということ。まず私が自分らしくのびのびと過ごし笑顔でいることが、子どもたち一人ひとりの心に閉じ込められていた自分らしさを引き出すきっかけになると感じました。
こうして数々の体験も交えて深めた心理学の専門性を、人や社会のために役立てたいと考えるようになり、3年次の後期、公務員になることを決意。卒業後は愛知県職員として生活保護業務に従事しながら、難関である国家公務員採用Ⅰ種試験の対策に励みました。3回目のチャレンジで合格を手にし、法務省の心理技官としての道を切り拓きました。

「身を活かして仁をなす」という信条を貫き、人や社会を支える力になりたい。


 法務省に入省して2年目の現在、心理技官として、少年鑑別所に入所している少年たちと向き合う日々です。彼らの性格、家族や友人との関係、非行に走ってしまった原因などを面接や心理検査などを通して明らかにし、家庭裁判所に通知する報告書としてまとめています。
ここに来る少年たちの多くは、さまざまな要因によって抱いた複雑な感情を適切に表現できにくいことから、やむを得ず非行に及んでいるものと捉えることができます。だからこそ、心理技官が少年の気持ちに寄り添い、複雑な感情を理解することを通して、彼らがニ度と非行に走らない方法を考えることが重要であり、そのことが新たな被害者を生み出さないための第一歩になるのです。
こうした自分の信じる道を走り続ける底力になっているのが、「身を活かして仁をなす」という信条です。学生時代まではさまざまな人に支えられながら、自分のために時間を使い、自分を成長させることができました。そんな「自分」を活かし、これからは人や社会を支える側に立ちたい。在学中に芽生えたこの思いがあるからこそ、努力を重ね、望む道へ進むことができたのだと感じています。
今後、少年たちの心をより深く理解できるように自己研鑚に励み、一人ひとりの力になり、社会全体に貢献できる、一人前の心理の専門家をめざします。そして将来、現場での経験や実感を活かし、少年非行対策の仕組みづくりにも携わりたいと思っています。

2012年2月 取材