成長

2014年04月28日

韓国の生徒たちに伝えていきたいのは、「違いを共に生きる」ことの尊さ。

vol.31

文学部 英文学科

英語で思いを伝えることができなかった。その悔しさが、学びへの原動力。

高校2年生のときに参加した、中国への修学旅行でのこと。南京大虐殺記念館を訪れ、悲しい歴史に衝撃を受けていると、若い中国人男性が話しかけてきました。What do you think of these photographs?――突然、英語で質問され動揺した私は、内容は理解できたのに何も答えることができませんでした。世界に通用する語学力、異文化理解力を身につけたい。そう強く思うきっかけになった、私にとって忘れられない出来事です。そして進学先として選んだのが、愛知淑徳大学の英文学科。コミュニケーションツールとして英語を習得するだけでなく、英語圏の文化や文学なども学べるところに惹かれました。
在学中、最も印象的だったのは、ネイティブスピーカーの先生方がおこなう個性豊かな授業です。アメリカのスピリットが込められた歌を歌う。イギリス発祥のラグビーを、英語を使ってプレーする。さまざまなシーンで人と人をつなぐ「生きた英語」にふれ、各国のありのままの文化や風土も学ぶことができました。また、自然体でいきいきと輝く先生方の姿を見て、自分らしく生きることの素晴らしさも実感。大学の理念「違いを共に生きる」を肌で感じ、その意義を深く考える、貴重な学修ができたと思います。

オーストラリアでのボランティア活動を機に、新たな一歩を次々と踏み出す。


転機となったのは、1年次の春休みに参加したオーストラリアでのボランティア活動です。登山道の整備などに、現地の人たちと一緒になって取り組みました。さらに、英文学科で磨いた英語力を活かして積極的に話しかけ、異文化交流を実践。視野が大きく広がり、以来、何事にも自分から挑もう!と行動を起こすようになりました。
英語の中学校・高等学校教諭一種免許状取得をめざした教職課程科目や教育実習、「社会で働くこと」を体験的に学んだインターンシップ......。最も熱中したのが、ボランティアでした。環境イベント「アースデイ愛知」の実行委員を務めたほか、地域の小学校でも継続的に活動。授業を補助したり、子どもたちと一緒に汗びっしょりになるまで遊んだり、学校現場で経験を積み重ねる中で「成長」を後押しする仕事に魅力を感じ始めました。
そのため卒業後すぐ、愛知淑徳大学コミュニティ・コラボレーションセンター(CCC)に勤務。国内外でボランティア活動をした経験や教職に関する学びを活かし、後輩たちのチャレンジをサポートすることに奔走しました。また、個人的にもボランティア活動を継続し、2010年には生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に関連した取り組みに参加。自分の可能性に挑み続けていました。

日本の言葉や文化を伝え、「違いを共に生きる」心を世界へ広げたい。


新たなチャンスが訪れたのは、2012年。韓国・全羅南道(チョルラナムド)教育庁の日本語教師採用試験を突破し、順天(スンチョン)高等学校への赴任が決まったのです。3年目の現在は、第2外国語として日本語を選択した2・3年生、計9クラスの生徒たちに、毎週18時間の授業で日本の言葉や伝統文化、今の流行などを教えています。授業で心がけているのは、英文学科の先生方のように、自分の国の「らしさ」をありのまま伝えること。学生時代に出会ったさまざまな人から学んだ「違いを共に生きる」心を、今度は私が生徒たちに手渡していきたいと考えています。授業以外にも「日本文化理解クラブ」を創設して顧問を務め、さらに、近隣の街で働く韓国人の日本語教師たちを対象に勉強会を開催。より多くの人に日本について知ってもらい、日韓友好の架け橋になれたらと行動しています。
自分の気持ちや考えを、相手に伝わる的確な言葉で話し、伝える。自分とは違う文化も理解し、尊重し合う。そうした力を一人ひとりが発揮し、共に生きる社会や世界が実現するよう、私も自分らしく歩み続けたいと思います。

2014年2月 取材