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2019年10月09日

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

2019年8月21日(水) 長久手キャンパス 7B1・7B2

心理学の魅力を発信する特別講座を開講。
4つの学問領域の教員が、それぞれ授業をおこないました。

 2019年8月21日(水)、本学の心理学部が主催する講座「高校生のためのスタートアップ心理講座」が開催されました。この講座は心理学に興味を持つ高校生や保護者の皆様を対象に、心理学部の専任教員が「心理学の奥深さを知ってほしい」「心理学に対する間違った認識を払拭し、進路に悩む高校生の力になりたい」という思いを込めて実施しているスペシャル授業です。本学の心理学部にある4つの領域、「発達心理学」「生理・認知心理学」「臨床心理学」「社会心理学」の4つの授業に加え、「心理学という学問の紹介」と「本学の心理学部の紹介」がセットになった充実の内容。

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 当日は、定員いっぱいの参加者が集まり、心理学に浸る特別な一日を過ごしました。ここでは授業ごとにその内容をダイジェストで紹介します。

1限目 心理学の基礎「こころは測れるの?『こころを科学する』とは」
吉崎 一人先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 1限目は、2限目以降につなぐ「心理学の基本的な考え方」について「測る」という言葉をキーワードに吉崎 一人先生が解説。心理学は「こころを科学する学問」であり、そのためには「なぜそうなるのか考え、検証し、客観的に示すことが必要である」と言葉をつなぎました。客観的に示す方法として強調したのが「数値化する=測る」ということ。吉崎先生は、幾何学的錯視の一つである「ミュラー・リヤー錯視」と、「恋愛感情を測るアンケート」を用いながら数値化することの重要性を繰り返しました。講義の最後には「心理学の研究テーマは無限にあり、必ず自分の興味を追求することができます」と語った吉崎先生。論理的思考やパソコンスキル、コミュニケーションの力が身につくことも伝え、講義を締めくくりました。

2限目 発達心理学「ヒトの発達と心の進化」
久保 南海子先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 「発達と聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?」と聴講者に問いかけた久保 南海子先生。「ヒトが大人になることだけではなく、ヒトがどのように老いていくのかについても研究の対象となる」と言葉をつなぎ、「ヒトの生涯にわたる変化のすべてが研究テーマになりうる」と発達心理学の幅広さを伝えました。その上で今回の講義では「感情」をテーマに学修。感情を書き出してみたり、感情を分類し図の中にプロットしたり、聴講者は体験的に感情について考察していきました。その後、久保先生が赤ちゃんの感情を取得していく過程や、加齢によって変わる感情の捉え方などを解説。さらに人間と人間に近い動物(サルやチンパンジー)とを比較することで「人間の特徴」を掴むことができると紹介し、研究の面白さを伝えていきました。

3限目 生理・認知心理学「脳が生み出す心のはたらき」
加藤 公子先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 ヒトが物事を認識する仕組みに迫るため、今回の講義のテーマに設定したのが「記憶と注意」。記憶とはヒトが大事なものを覚えたり思い出したりする仕組みで、注意とはヒトが大事なものに注目する仕組みのことです。講義を担当した加藤 公子先生は「ヒトがドラマを見ながらメールを打てるのは、脳の働きによって注意を分割しているため」と解説。「脳の働きを測定することで、ヒトが対象にどのように注意を向けているのかを探ることができる」と続け、脳の働きを測定する方法を紹介していきました。その後、「記憶実験」を実施し、聴講者に脳の働きの不思議を示した加藤先生。記憶は嘘をつくこともあれば、ポリグラフ検査からわかるように記憶は正直でもあると、記憶の奥深さを示唆し、講義を終えました。

4限目 臨床心理学「心とともに、生きる」
大崎 園生先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 臨床心理学とは「心理的な問題にどのように対処するかを研究し、それを実践する学問」と紹介した大崎 園生先生。心理的な悩みや心の痛みを抱えている人に実際に関わって心理学の専門技術を用いて人を援助していく実践的な学問であることを強調しました。そのうえで心の問題とは何か、臨床心理学の歴史に触れながら解説。「自分のコントロールできない心の領域や働きによって、自分が意図しない振る舞いが起こることを"心が病む"と表現する」と説明しました。さらに臨床現場のカウンセリングではクライエントに共感し、その人自身を肯定していく「クライエント中心療法」があると紹介。最後には「心は自分の意図しない働きをします。そのため心は決して自分自身そのものではありません。いろんな心に目を向け、うまく付き合いましょう」とアドバイスをおくりました。

5限目 社会心理学「社会の中の人間理解」
小川 一美先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 講義の冒頭、「自分はどんな性格か、紙に書いてみましょう」と呼びかけた小川 一美先生。そのうえで「みなさんはどうやって自分の性格を判断したのでしょう。きっと多くの人が誰かと比べるということをしたのだと思います」と語り、人はいかに他人から影響を受けているのかを解説。その「人と人との関わり」について、科学的に考え、実証していくのが社会心理学だと聴講者に示しました。さらに講義の後半には「対人認知」と呼ばれる「他者の行動傾向や内面の特徴を探る心理過程」をテーマに、心理実験を実施。聴講者が2つのグループに分かれて評定をしたところ、結果に差が出るなど、心の働きの不思議さを目の当たりにすることとなりました。最後に小川先生は「学ぶ人自身の役に立つ学問でもある」と聴講者に伝え、社会心理学の魅力を発信していきました。