交流
2025年10月15日
建築学部 間宮ゼミ「H GARAGE」プロデュース
2025年度 地域・ボランティア活動 展示会・講演会・発表会

2025年8月1日(金)H GARAGE
建築学部建築学科間宮ゼミの学生と卒業生が
星が丘元町に実験オフィス「H GARAGE」をオープン。
「地域にひらき、地域とつながる」場所に。
2025年7月26日、千種区星が丘元町にオープンした「H GARAGE」は、建築学部・間宮ゼミの学生と、間宮先生が共同代表を務める「センブンノイチ」の社員であり、本学創造表現学科 建築・インテリアデザイン専攻(現:建築学部 建築学科)の2022年度卒業生でもあるグラフィックデザイナー藪井瑠香さんが、ブランディングおよび運営に携わっています。
ギャラリーとして、また地域の人々が交流する場として、星が丘の街に年齢を問わず多様な人々に開かれた場所をつくりたい──そんな星が丘のみなさまの思いを受けて、ロゴマークのデザインを手がけたのが藪井さんです。ロゴマークは一見すると「?」にも「ア」にも見えるようなポップなデザインで、遠くからでも目を引きます。
藪井さんはデザインを考えるにあたり、「この場所は、さまざまな使われ方をしていく、一言では言い表せない場所。いろんな出会いや発見が生まれていく、とてもおもしろい空間になると感じました」と語り、「この場所ができたことで、会話のきっかけになったり、思わず足を止めて中を覗きたくなったりするような、何か引っかかりのあるロゴにしたい」と構想を練っていったそうです。
4案のロゴを提案した中から採用されたのが、現在看板に使用されているロゴマークです。やはり「?」と「ア」を包括したデザインであり、「この場所の可能性や、一言では言い表せない不思議さを『?』に、この場所で得られる驚きや発見、何かが腑に落ちた瞬間の思いを『ア』に込めています」と藪井さんは語ります。
デザインにあたっては、黄金比を採用。ロゴ全体の構成や細部の比率まで、"人が最も美しいと感じる"とされる黄金比を用いて緻密に設計された点には、建築・インテリアデザイン専攻での学びが活かされているといえるでしょう。
「H GARAGE」を含む星が丘のアートプロジェクトにおいて、ブランディングや資料作成に携わっているのは、間宮ゼミの学生たちです。これまで継続してきたプロジェクトを先輩から引き継ぎ、資料の整理や提案書の作成を通じて得た気づきを、今回の「H GARAGE」の間取りにも反映させています。
間宮ゼミ4年の杉山凌健さんは、「星が丘は商業地ではありますが、学生も多く暮らす街です。モノを買うだけでなく、誰もが気軽に訪れることのできる文化的な場所も必要だと感じています。H GARAGEが、地域にとって大切な"余白"となり、この拠点をきっかけに、新たなコミュニティや対話が生まれるような活動を展開していきたいと考えています」と語りました。
間宮ゼミというつながりを通じて、卒業生と現役ゼミ生が意見を交わしながら取り組む、星が丘の街を舞台にしたアートプロジェクト。卒業生にとっては社会人として活躍の場が広がり、学生にとっては社会との接点を持ちながら、多角的な視点で街づくりを考える貴重な機会となっています。
間宮ゼミの卒業生が、個展「境界をめくる展」を開催。
そして今回、「H GARAGE」では、昨年度卒業後にアーティストとして活動されている馬場美羽さんの個展「境界をめくる展」が開催されました。馬場さんにもお話を伺いました。
創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻(現:建築学部 建築学科)の間宮ゼミで卒業制作に取り組む中で、自分はインスタレーションが好きなのだと実感しました。卒業制作では、名古屋市中区にある長者町コットンビルにて個展「金魚をみる展」を開催しました。ペインティングが得意だった私に、間宮先生が個展の開催を勧めてくださり、挑戦を決意。会場が先に決まっていたため、「この空間で何ができるだろう」と考えるところからスタートしました。
題材のヒントになったのは、ゼミ旅行で訪れた四国の水族館です。水槽に強く心を惹かれた体験から、「泳ぐ生き物」をテーマにしようと着想し、「金魚」にたどり着きました。金魚の儚さ、親しみやすさ、美しさ、そしてどこかグロテスクな一面といった、交錯する魅力を、ペインティングを軸としたインスタレーションで表現しました。その第2弾となるのが、2025年7月26日~8月3日に「H GARAGE」で開催した個展「境界をめくる展」です。
卒業制作の「金魚をみる展」では、水槽と対峙しているような演出をしました。鑑賞者は壁に描かれた金魚を見ているようで、同時に金魚からも見られているような感覚に陥ります。しかし、絵は本質的に平面であり、どれだけ近づいてもその奥には触れられない。そんな、鑑賞者と絵のあいだに存在する絶対的な"平面"に目を向け、その隔たりを一枚ずつめくるようなイメージで制作したのが、今回の個展です。
今回は、前回のように一方向に泳ぐ金魚ではなく、さまざまな方向に泳ぐ金魚をすべて新しく描きました。また、水槽の中に飛び込んだような感覚を味わえるよう、ミラーの反射や照明を工夫して水のゆらぎを表現。実空間と虚像を交錯させることで、絵と鑑賞者との境界を曖昧にし、前回よりも一段深い表現ができたのではないかと感じています。
卒業制作でインスタレーションに取り組む中で、自分の表現したいことが明確になり、卒業後はアーティストとして独立。現在は、公共空間や街なかでの共創型アートプロジェクトに携わっています。絵を描くことよりも「空間づくり」が自分の本質的な関心であると気づき、表現の幅を広げることに挑戦中です。
間宮ゼミというつながりを通して、卒業生と現役のゼミ生たちが意見交換をしながら取り組む、星が丘の街を舞台にしたアートプロジェクト。卒業生にとっては社会人として活躍の場が広がり、学生たちにとっては、社会とのつながりを持ちながら多角的な視点で街づくりを考えていくことのできる、貴重な機会となっていることでしょう。