追究
2017年12月26日
心理学会講演会「ロボットの視点から自閉症とコミュニケーションを考える」
東北大学・小嶋 秀樹教授をお招きし、講演会を実施。
2体のロボットを通じ、科学的に心理を学びました。
11月17日(金)、長久手キャンパスで心理学部主催の講演会を開催しました。「ロボットの視点から自閉症とコミュニケーションを考える」をテーマに、東北大学大学院 教育情報学研究部の小嶋 秀樹教授にご登壇いただきました。今回の講演内容は「ロボット」や「コミュニケーション」というキーワードから連想する「ロボットセラピー」とは違い、ロボットを通じて分かる「社会的コミュニケーションのなりたち」や「自閉症児の心理メカニズム」です。小嶋教授は、これまでの具体的な実験結果とともに解説しました。
「視線」からコミュニケーションを理解する
まず、小嶋教授の制作したロボット「Infanoid(インファノイド)」を用いた動画で「視線」と「コミュニケーション」の関係を紹介。Infanoidは3〜4歳児ほどの大きさで、上半身のみの子ども型ロボットです。子どもから見てInfanoidはどんな意味づけになるのかを説明し、目は「見る」だけのものではなく「見られる」ことで他者に心理状況を知らせるためのものだと結論付けました。
ロボットの目線から人間のこころを知る
さらに小嶋教授が手掛けたのが「Keepon(キーポン)」というぬいぐるみロボット。非常にシンプルなデザインですが、それには理由がありました。人と接する際、通常は他者と自分とのあいだに心理的なフィルタがあります。しかし、自閉症児はそのフィルタが機能しないために、膨大な「生データ」を受け取ってしまいます。だから、自閉症児でも直感的に理解することができるしくみにしたと小嶋教授はお話されました。その愛らしい見た目と動きに、学生たちも思わず見入っている中、小嶋教授は、発達障害児の療育センターでKeeponを使い長期観察を続けた記録を取り上げ、講演を展開。ロボットの目を通した客観的なデータによる考察は、学生たちにとっても「こころ」を論理的に学ぶ意識に結び付く機会となりました。
「気づき」と「広がり」のある講演
講演後は小嶋教授のもとに、質問をする学生たちが集まりました。ある学生は、「自閉症児は、脳の働きとして物を見る目と人を見る目が同じだが、音声でもそのような違いがあるのか」と質問。それに対し小嶋教授は「自閉症児は肉声よりもフラットな音声のほうを好む」と回答し、学生たちは真剣なまなざしで聞いていました。特に興味を持った箇所を自分でも詳しく調べてみようと話す学生もおり、今回の講演だけに終わらず、今後の学びにも活きていく講演となりました。