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2018年04月18日

メディアプロデュース学部 都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

学内展:2018年1月17日(水)~24日(水) 長久手キャンパス 8号棟 5階
最終講評会:2018年1月23日(火)長久手キャンパス 8号棟 ミニギャラリー
学外展:2018年2月20日(火)~2月25日(日) 名古屋市民ギャラリー栄

4年間、空間やまちづくり、建築環境について学んだ学生たちが、
学びの集大成として卒業プロジェクトに取り組みました。

 メディアプロデュース学部 メディアプロデュース学科 都市環境デザイン専修(現:創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻)では建築、インテリア、街づくりなど様々な分野で活躍するための力を養うことができます。4年生は、毎年、約1年間という時間をかけて「卒業プロジェクト」に取り組み、4年間の学びの集大成として「卒業設計・制作」または「卒業論文」を仕上げます。所属するゼミナールの教員に師事を仰ぎながら、「課題設定」「調査・研究」「制作・論文作成」「講評会」「学内展」とステップを踏み、最終的に学内で高い評価を受けた作品は「学外展」への出展が認められます。今年度は51名の学生が卒業プロジェクトに取り組み、設計・制作16点と論文8編が学外展へと出展することとなりました。さらに昨年度から学外展に選出された作品(卒業設計・制作のみ)の中から第一線で活躍する建築家を外部審査員として招き、優秀作品を選定する「学外展賞」を設け、より多角的な視点で講評を受けられる機会も用意されました。今回はこの卒業プロジェクトの様子をダイジェストでお伝えします。

学内展:2018年1月17日(水)~24日(水) 長久手キャンパス 8号棟 5階

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 長久手キャンパスの8号棟5階にある「製図室2」のスペースを利用した学内展を実施。社会問題に対する建築的提案や空き家ストック活用の提案など、卒業プロジェクトに取り組んだ学生51名の多様な作品と論文がずらりと並び、会場を訪れた方々が思い思いに鑑賞していました。

学外展選抜者発表会: 2018年1月19日(金) 長久手キャンパス 8号棟 5階

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

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 教員陣の厳正なる審査の末、学外展へ出展する設計・制作16点、論文8編が選出・発表されました。発表の後は、個別に先生方の意見を仰いだり、ゼミごとのショート講評がおこなわれたり、得票を確認する学生の姿も。そして、選出された学生が次に挑むのは、最優秀賞を選定するための「最終講評会」です。

最終講評会:2018年1月23日(火)長久手キャンパス 8号棟 プレゼンテーションルーム

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

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 選抜された26名による最終講評会を開催しました。学生たちは制作意図や自らの提案などについてプレゼンテーションした後、教授陣との白熱した討論を交わしながら、自らの作品・論文についてアピールしました。学生たちの情熱を受け止めながら教員陣の厳正な審査の結果、今年度の最優秀賞・優秀賞を選出しました。

学外展:2018年2月20日(火)~2月25日(日) 名古屋市民ギャラリー栄

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 一般のお客様を対象に学外展を開催しました。6日間の会期中、後輩や他大学の学生、地域の方々をはじめ、卒業生を含む毎年学外展を楽しみにしていただいている方々など、のべ600名の方にご来場いただきました。さらに2月24日(土)には建築家の久野紀光氏と末光弘和氏をお招きし、学生の作品を講評していただき、優秀作品を選出する「学外展賞」の審査会を実施しました。

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

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 ポスターセッション方式によるプレゼンテーションを経て、優秀作品として選ばれたのは、新しい賃貸住宅のあり方を模索した集合住宅「壁間の棲家」を提案した、丸山郁さん。自らの提案が建築物にしっかりと落とし込まれているところに高い評価が集まり、受賞にいたりました。

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

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 また、授賞式の後にはお二人による記念講演会もおこなわれ、実作に即しながらその建築に対する思いや案が固まるまでの考え方についてご講演いただきました。

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

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最優秀賞・優秀賞受賞者のコメント

論文

最優秀賞
「建築家が公共住宅をつくる意義」
杉浦 叶恵さん

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 私の地元である岐阜県本巣郡北方町には、有名建築家が設計した県営住宅があります。その建物の斬新なデザインに対して住みづらさを感じている住人がいることを知り、「建築家が公共住宅をつくることは、果たして意味があるのだろうか」という疑問が湧いてきました。その疑問を解き明かそうとしたのが、今回の卒業研究です。住人の本音を引き出そうと、56名の方にアンケート調査をして「入居の動機」や「利便性」などについて質問をしました。そこからわかってきたことは、「そもそも有名建築家が設計したことを知らない人が多くいたこと」です。作り手の設計意図が正しく伝わらないと住みづらさを誘発することもあるのだと気づきました。卒業研究で得た収穫は、今後不動産会社の営業として働く私の大きな財産となりました。

論文紹介
 岐阜県本巣郡北方町にある「岐阜県営北方住宅ハイタウン北方」を題材に、住みやすさや快適さについてアンケート調査を実施。公共住宅の設計において、オリジナリティや高いデザイン性を持たせる意味はあるのか否かを考察することで、建築家が公共住宅をつくる意義に迫った。

優秀賞
「名古屋市内の区役所における福祉事業所の授産製品販売に関する研究」
田中 美央さん

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 卒業プロジェクトでは自分の興味のあることを突き詰めたいと考え、「障がい者」や「福祉」をテーマにプロジェクトを進めていきました。最初は卒業制作を選択しようと考えていましたが、事前研究のために訪れた区役所で授産製品の販売があまり活発になされていない現状を知ります。そしてもっとその実態を明らかにしたいという思いが募り、卒業論文を執筆することにしました。名古屋市内のすべての区役所と支所をまわり、担当者にヒアリングすることで、販売機会の多さよりも販売環境の質の良さが大切であることが見えてきました。足で情報を集め、たくさんの人に出会いながら知見を深める経験は、卒業プロジェクトだからできたことだと思います。卒業後は建築の分野を離れますが、一つのことを調べ抜いた経験をこれからの人生に活かしていきたいです。

論文紹介
 名古屋市内16の区役所と2つの支所をまわり、福祉事業所でつくられた授産製品の販売状況を実地調査。その実態を明らかにすることで、販売における問題点を洗い出そうとした。販売頻度や販売環境別に各区を分類し、評価。販売回数よりも、職員が販売に深く関わることが重要と結論づけた。

優秀賞
「大正から昭和初期の愛知電気鉄道による郊外住宅地開発~なるみ荘を事例に~」
松本 美穂さん

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 大正時代から昭和初期にかけて、愛知電気鉄道が愛知県内の土地開発をおこなっていました。その一つが、なるみ荘と呼ばれる一帯で、現在私が住んでいる街でもあります。このなるみ荘に関する資料は極端に少なく、開発当時の様子はほとんど伝わっていません。そこで、卒業研究では街の成り立ちや当時の住宅の様子を紐解くことを目的としました。当時発行された新聞を片っ端から読み漁り、関連する記事を集めて情報を収集して見えてきたのは、名古屋市のベットタウンとして開発しようとしていたことや「住宅展覧会」という宣伝のためのイベントをおこなっていたことです。なかなか資料が見つからない状況で何度も挫けそうになりましたが、それでも過去の資料から確かな発見ができたことは、揺るぎない自信になりました。

論文紹介
 名古屋市緑区鳴海地区における、愛知電気鉄道による住宅地開発の実態を明らかにしようとした研究。過去の資料を読み解くことで、住宅の批評会と入居者募集の告知を兼ねた「住宅展覧会」を実施していたことなど、新たな事実がわかった。研究の新規性が評価され、今回の受賞にいたった。

設計・制作

最優秀賞
「壁間の棲家」
丸山 郁さん

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 以前課題で住宅を設計した時も壁をメインにしたものを考えました。今回の卒業設計はその延長線上にある作品です。「これぞ集大成」というものを作りたくて、試行錯誤を繰り返しました。昨年の学外展にゲスト審査員としてご参加いただいた建築家の方が、「住宅はこれから所有するものではなく、共有するものになる」とおっしゃっていたことにヒントを得て、壁で多角形の空間をつくりだす「シェアハウス」を提案しました。ゼミの先生からは「排水のこと」や「屋根のかけ方」などの現実的な問題点を指摘され、他の先生方からは空間のおもしろさを突き詰めるためのアドバイスを受けました。さまざまな先生から多角的な視点でご指導いただいたおかげで、建築に対する視野が広がったと思います。これからもさらに鍛錬を重ね、住宅設計に関わり続けたいと思います。

作品紹介
 人には「居心地のいい空間を作りたい」という欲求があると提示し、家を買うのではなく、心地よい空間を自由に選ぶことができる「シェアハウス」を提案。壁をランダムに配置することで多角形の空間を生み出し、住む人にとって最も適した空間を自由に選べるように設計した。

優秀賞
「常の花宿」
佐藤 朱莉さん

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 愛知県奥三河地方には、各地に花祭りと呼ばれるお祭りが残されています。以前、友達とこの花祭りに参加したとき、この世とあの世はつながっているという考え方や、日々の暮らしに神様の存在を感じながら生活している日本民族らしさに触れ、感動しました。そして、花祭り発祥の地である山内では、このお祭りが廃止されてしまったことも知りました。「薄れてしまった日本人の信仰心を感じることができ、日本人の心を学べる場所を提案したい」と考えたのが、今回の卒業設計です。対象敷地と定めた山内には何度も足を運び、今では山内で居候をして花祭りや山内のことを発信する活動をしています。実際に街や社会に出て、問題解決のために行動しようという考え方は、ゼミ活動を通じて養われた価値観です。社会人になっても大切にしたい、私のモットーです。

作品紹介
 いろりや土間、水屋など、昔の建物の特徴を持った家に改築する(=昔に戻す)プロジェクト、「山村留学」を立案。そのプロジェクトの舞台となる集落のマスタープランを描いた。改築の担い手を子どもたちとすることで、はるか昔から山内に根付く「日本人の心」を知ってもらうことを目的とした。

優秀賞
「終末に生きる」
本野 晴也さん

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 大阪のあいりん地区は日雇い労働者やホームレスが集まるエリアで、私が3年次に参加したコンペティションの対象敷地として取り上げた場所でもあります。この思い入れのある地域を題材に、さらに良い提案が出来るように取り組んでみようという思いで卒業プロジェクトに挑みました。このエリアを特区にしてしまうことで、社会的地位の低い人とされる人でも人間らしく生き、人間らしく死んでいくことができるのではないかと考えました。具体的な設計物は、火葬場と納骨堂が一体となった施設です。シンボリックなものを敷地内に建設することで、この作品を見た人にインパクトを与えられたらという思いを貫き、完成させました。建築を通じて人の心を動かすことは簡単ではありません。でも必ずそれができると信じ、これからも挑戦し続けます。

作品紹介
 あいりん地区を社会的地位の低い人が集い、暮らすために特区にしようと提案。あえて建造物をシンボリックにすることで、見る人の心をつかもうとした。何度も提案における「ストーリー」を練り直しながら、つくりあげた作品で、本人は「まだまだブラッシュアップしたい」と語る。

2018卒業プロジェクト展実行委員代表

メディアプロデュース学部 メディアプロデュース学科 都市環境デザイン専修 3年
坂井 里帆さん、富山 拓海さん

メディアプロデュース学部  都市環境デザイン専修 2018卒業プロジェクト展

 先輩たちの集大成である「卒業プロジェクト展」の運営や設営は、3年生が担当しています。最優秀賞を決める「最終講評会」の進行を手伝ったり、卒業プロジェクト展の会場レイアウトを考えたり、告知ポスターをつくったり、さまざまな準備を進めてきました。学外展の準備に関わったことで、どのような流れで卒業プロジェクト展が行われるのか、またどんな会場に作品が並ぶのか、全体像をつかむことができました。これは来年、卒業プロジェクトに挑む私たちにとっては大きなアドバンテージです。実行委員の活動を通じて得た経験を存分に活かして、学生生活最後の設計・制作や論文作成に全力を注ぎたいと思います。