追究

2019年07月30日

2019年度 第一回 文学部講演会 「漱石作品を深く読むための三つの鍵」

2019年度 第一回 文学部講演会 「漱石作品を深く読むための三つの鍵」

2019年6月28日(金) 長久手キャンパス811教室

漱石は何を思い、作品を書き連ねたのか。
その心に触れるための読解方法を学びました。

 6月28日(金)、国文学会の学生たちが運営を務める「2019年度 第一回 文学部講演会」が長久手キャンパスで実施されました。お招きしたのは早稲田大学 名誉教授の中島 国彦先生。日本の近代文学を専門に研究されており、近年では森鷗外に関する研究や近代日本文学に関する著書の出版など、精力的に活動されています。そんな中島先生の演題は「漱石作品を深く読むための三つの鍵」。「皆さんに漱石の作品を深く読むための“鍵”を授けたいと思います」と語り始め、漱石直筆の原稿を題材に作品を読み解くための視点を教えてくださいました。

2019年度 第一回 文学部講演会 「漱石作品を深く読むための三つの鍵」

2019年度 第一回 文学部講演会 「漱石作品を深く読むための三つの鍵」

 まず1つ目の鍵は、「ことばに着目して、作品の細部を観察してみよう」。『坊っちゃん』の書き出しには句読点があまり用いられていないことから、「漱石はひと息に、スピード感を持って読み進めてほしいと考えたのではないか」ということや「性分(しょうぶん)・性(たち)・気性(きしょう)」ということばを使い分けて登場人物の性格を示していことなどに触れ、ことばに着目すると作品の奥にある作者の思いを知ることができると伝えられました。
 2つ目の鍵は、「生きて動き出すことばの現場をとらえよう」。何度も手が加えられた漱石の手書きの原稿を取り上げ、ことばがまるで生き物のように動き、変化をしていることを紹介されました。新聞に掲載された『それから』は、新聞の紙面に収まる文字数を意識して書かれたものにもかかわらず、最終回はその文字数を上回る量。その原稿を読み上げながら、漱石が必要に駆られて書き連ねていったのだと、解説されました。

2019年度 第一回 文学部講演会 「漱石作品を深く読むための三つの鍵」

2019年度 第一回 文学部講演会 「漱石作品を深く読むための三つの鍵」

 3つ目の鍵は、「人間心理と地理空間とのつながりに注意しよう」。物語の舞台となった場所の土地勘があると、登場人物の気持ちを深く読み取ることができると紹介。たとえば『こころ』では、登場人物の気持ちの変化と土地の高低がリンクしている部分があると例を挙げながら、「みなさんのゆかりのある土地が物語の舞台になっている作品を読んでみるのも面白いかもしれません」とアドバイスを送られました。
 中島先生のお話から、文章を注意深く読み解いていくと、物語に奥行きが生まれ、より楽しんで作者が作り出そうとする世界を堪能できることを知った学生たち。中島先生からいただいた「作品を読み解く鍵」を授業やゼミ活動で存分に活かしていくことでしょう。