追究

2019年12月05日

博物館の挑戦 『見せる』から『魅せる』へ

博物館の挑戦 『見せる』から『魅せる』へ

2019年10月21日(月)長久手キャンパス11号棟1階ミニシアター

学芸員たちの知られざる努力を詳らかにする講演会
展示物を「魅せる」ことの大切さ、
意義深さを学びました。

 教職・司書・学芸員を志望する学生を支援する「教職・司書・学芸員教育センター」主催の講演会「博物館の挑戦 『見せる』から『魅せる』へ」が2019年10月21日(月)に開催されました。
 講師としてお招きしたのは、愛知県陶磁美術館の総長・伊藤嘉章氏。東京国立博物館の学芸研究部長や京都国立博物館の副館長などを歴任した伊藤氏は近年、博物館の来場者を増やすため、さまざまな改革が行なわれていると主張します。そのひとつが「見せる」から「魅せる」という動き。この講演では、新しい博物館像を求めて挑戦を試みる学芸員の努力について語っていただきました。
 講演会冒頭、伊藤氏は博物館や美術館としての役割を述べられました。そのひとつが「伝える」という使命。展示物を保存し、未来へ伝えることや広く一般に伝えること(活用・公開)が大切であり、その中でも広く伝えることは最近、多くの博物館が力を入れている点だと言います。しかし、保存と活用は相対するものであり、この両立は非常に難しいとのこと。その解決方法として古くから「曝涼(ばくりょう)」という行為がおこなわれていることを紹介されました。曝涼とはいわゆる「虫干し」。この虫干しをおこなう機会を利用して一般に見てもらうことで、保存と公開を両立してきたと言います。

博物館の挑戦 『見せる』から『魅せる』へ

博物館の挑戦 『見せる』から『魅せる』へ

 また、貴重な展示物を活用・公開する場合は最大限の効果が求められることから、ただ作品を陳列するのではなく、来場者にしっかりと見ていただくことが必要だと訴求。そのためには作品に集中できる展示をすることが大切だとし、そこで例に出したのが、京都国立博物館の平成知新館。3階から1階へ下りながら観覧すると、この先にどんな展示があるのだろう? と期待させる構造や仕掛けがなされていると言います。その他にも展覧会のポスターやチラシなど、来場者におもしろがっていただく工夫が必要だと語気を強めました。

博物館の挑戦 『見せる』から『魅せる』へ

博物館の挑戦 『見せる』から『魅せる』へ

 さらに展示物をより良く見せるための照明方法や、来場者が思わず読みたくなるような解説の仕方など、学芸員たちがおこなっている様々な取り組みを紹介。「ほんの少しの工夫で来場者に喜んでもらえることがたくさんある」と伊藤氏は「美は細部に宿る」という言葉を引用し、学芸員として細かな部分に気付けることが大切だと締めくくりました。
 展示物を公開するリスクを背負うからこそ、より多くの人により深く理解していただきたい。そんな学芸員たちの強い想いが伊藤氏によって詳らかにされた今回の講演会。その知られざる努力を知る良い機会となりました。