追究

2020年01月14日

福祉貢献学部 開設10周年記念講演会 「スウェーデンの民間就学前学校の挑戦 ―校長の役割を中心に―」

福祉貢献学部 開設10周年記念講演会 「スウェーデンの民間就学前学校の挑戦 ―校長の役割を中心に―」

2019年11月27日(水)長久手キャンパス11B03教室

スウェーデンの就学前学校の運営者や校長の声を聴き、
幼児保育への質向上とその熱意を実感しました。

 福祉貢献学部では学部創設10周年を記念し、学生の保育研修先であるスウェーデンの就学前学校の校長先生と学校を運営する会社のCEOをお迎えし、講演会を開催しました。
 スウェーデンでは、ほとんどの子どもが1歳半過ぎから就学前学校を利用しています。そんななか、就学前学校を運営する会社や学校の校長先生は保育の質を維持し、向上させるためにどんな取り組みをしているのでしょうか。福祉国家における民間運営の就学前学校の実情を知ることで、日本のこれからの保育について考えようとするのが本講演会の狙いです。

 講演会を始める前に、前知識として岡田先生から用語の解説をいただきました。就学前学校を運営する民間企業「ヴァーガ・ヴィリア(以下、W&W)」や、就学前学校のこと、その保育料などについて詳しく説明していただきました。

福祉貢献学部 開設10周年記念講演会 「スウェーデンの民間就学前学校の挑戦 ―校長の役割を中心に―」

福祉貢献学部 開設10周年記念講演会 「スウェーデンの民間就学前学校の挑戦 ―校長の役割を中心に―」

 それが終わるといよいよ講演会本番です。W&W CEOのイングリッド・ロウ先生と、W&Wが運営している就学前学校の校長ニーナ・アペルギスト先生が登壇。最初にW&Wの組織概要に触れ、続けて「W&Wは子どもたちにハードルを与え、様々なチャレンジさせます。教師はその後押しをするのが役目です」とイングリッド先生は語られます。また、その過程を経ることで相手を尊重するとともに、自分で目標を立て、仮説をつくり、それを実行していくことで自立した人間を育てたいという想いも述べられました。続けてニーナ先生は「校長という存在は、それぞれの学校の指導者であり、すべてのスタッフに責任を持ち、教育活動のリーダーとして子どもたちに対しても責任を持たなければなりません」と校長としての使命を力説。校長が学校や教師の質を高めるために、職員に対して積極的にフィードバックしたり、サポートするのが役目だと語られ、さらに校長は国が見据えるゴールに基づくようにする責任もあると言及。そのため、カリキュラムを熟知し、日々の実践が子どもたちにどのような影響を与えるのかも把握する必要があると話していただきました。校長先生はより教育現場に近く、職員や教師に対して積極的に関与していることが理解できました。

福祉貢献学部 開設10周年記念講演会 「スウェーデンの民間就学前学校の挑戦 ―校長の役割を中心に―」

福祉貢献学部 開設10周年記念講演会 「スウェーデンの民間就学前学校の挑戦 ―校長の役割を中心に―」

 保育の質向上のための取り組みとして、保護者との活発な意見交換がなされているのもW&W独自の取り組みです。保護者と密なコミュニケーションを取るために「ティラ」というスマートフォンアプリを活用し、子どもや教育について気軽に質問ができるシステムを構築しています。保護者との建設的な議論が教育の質を高めるという考え方を持つ一方、子どもたちには自然とふれあいを大切にし、自然の中から学びを得る機会も大切にしていると言います。
 そのほかにも学校運営に関する枠組みや保育方針に関する規定、差別や暴力の抑制など、学校運営に関する細かな部分にまでスポットを当てて詳しく解説していただきました。
 途中で休憩をはさみながら、じっくりと2時間半の講演。最後は聴取者たちから質疑応答を募りました。「W&Wでは男性の保育者はいるのか? その役割は女性と違うのか?」や「日本は保育者不足だが、スウェーデンではどうか?」など活発な質疑応答が見られました。

福祉貢献学部 開設10周年記念講演会 「スウェーデンの民間就学前学校の挑戦 ―校長の役割を中心に―」

福祉貢献学部 開設10周年記念講演会 「スウェーデンの民間就学前学校の挑戦 ―校長の役割を中心に―」

 福祉先進国として知られるスウェーデンですが、今回の講演を通して保育の質向上に対し、積極的に取り組んでいることが分かりました。特にW&Wのような民間企業は保育理念をしっかりと掲げることで、高いレベルの教育を実施していこうとする意志が感じられ、その熱意は学生たちにもより深く伝わったことでしょう。