追究
2020年03月13日
創造表現学部 刈馬カオスゼミ1期生卒業制作発表公演『16:40(イチブシジュウ)』
2020年1月11日(土)、12日(日)
名古屋市青少年交流プラザ(ユースクエア)プレイルーム
刈馬ゼミ1期生の優秀作6作品を上演。
脚本、演出、出演のすべてをゼミ生が担当し、
たくさんの観客の前で披露しました。
愛知淑徳大学の創造表現学部には戯曲、ステージデザイン、演技、演劇史、伝統芸能など、演劇をはじめとする舞台芸術を学ぶさまざまな授業があります。その中でも2017年にスタートした刈馬カオスゼミは、戯曲執筆を中心に現在演劇の創作を目的としています。今回の公演は、1期生14名が卒業制作として執筆した短編戯曲から優秀作6本を上演。演出、出演もゼミ生自身が行っています。
1月11日(土)、12日(日)の両日、名古屋市青少年交流プラザ(ユースクエア)プレイルームにはたくさんの観客が詰めかけました。11日は15時からAプログラム(3演目)、19時からBプログラム(3演目)が披露されました。
Aプログラム
『Re-』
ライブを観に来ていた友人3人。突然の睡魔に襲われ、目が覚めると学生時代にタイムスリップしてしまいます。3人はもともと同じバンドのメンバー。学生時代、バンドコンクールで悔いのある結果だったことが心残りでした。タイプスリップした時間はバンドコンクールの前。3人はもう一度、バンドを組んでコンクールに挑戦するのでした。
作・演出/元濱寧々さん
これまでゼミでは2人劇ばかり書いていたので、3人劇に挑戦してみようと思いました。アイドルやバンドが好きだったので、それをベースとした脚本を書こうと思いついたのですが、なかなか苦労しました。締め切りと戦いながら、稽古も3人が揃うタイミングがなかなかなく、時間をつくるのが大変でした。本番ではちょっとミスもありましたが、舞台のおもしろさを再確認した経験でした。
『少女たちに祝福を』
物語は、少女の夢の中から始まります。少女は夢に現れた4匹の羊たちと共に、少女の親友との思い出を回想していきます。過去を辿る中で、一緒にお絵かきをしたり、海を眺めたりといった温かく優しい思い出と共に、少女が抱える孤独、劣等感や罪悪感が明らかになっていきます。
作・演出/池本倖奈さん
この話の根底にあるのは、2014年に韓国で起こった『セウォル号沈没事故』。このとき修学旅行中の学生250人を含む計340人が死亡しました。私はその事故がとても印象に残っていて、これをベースに脚本を書こうと思いました。ダンスを取り入れながら、高校生時代の悩み、劣等感、罪悪感を表現できたと思います。
『手と足を洗う』
男性2人のリーディング劇。舞台はファストフード店。中学時代にクラスメイトだった2人の男性が一緒にハンバーガーを食べようとしていると、片方の男性が手を洗わずに食べようとしています。もう片方の男性が注意すると、それをきっかけに二人は口論に。最終的にはつかみ合いのケンカになり、過去につけられた不名誉なあだ名をネタに罵り合います。シリアスなケンカとコメディの境界線を狙った作品です。
作・演出/伊藤友宏さん
口論をテーマにした脚本が書きたいと思っていました。口論は、シリアスでありながらも、どこか面白味があるような、そういう魅力を表現できればいいなと思っていました。ストーリーが一本調子ならないよう先生にアドバイスをいただきながら、セリフのテンポなどに気を付けて書き上げました。ゼミに入って芝居を観る機会が増え、その経験も脚本に活かされたと思っています。
Bプログラム
『DEATH GAME』
同名のフィクション作品にインスパイアされてつくった作品。大学生の主人公は就職活動真っ最中。しかし、なかなか内定がもらえずに焦っていました。そんな中、出合ったのが「デスガメ」という会社。しかし面接に来てみると、あの「デス・ゲーム」を運営する会社だと知ります。単なる読み間違えから後に引けなくなった主人公は、その会社にしぶしぶ就職するのですが……。
作・演出/浅井一輝さん
『デス・ゲーム』が好きなので、これをテーマに書こうと思いました。けれど、劇中であれ、人を殺すことに抵抗があったので、“死人が出ないデス・ゲーム”にしようと考えました。脚本の中にはパリピ役の2人が出てくるのですが、自分がそういうタイプの人間ではないので、セリフを考えるのに苦労しました。全体的にはシリアスでありながらもコメディ要素も入れることができ、納得いく演目になったと思います。
『コイ・アイ』
喫茶店でお互いの恋愛話をしている男女。しかし、よく聞いていると、男性は男性が好きで、女性は女性が好きという同性愛者だとわかります。男性は男性の恋人の話をし、女性は女性の恋人の話をするなかで、性別にとらわれない本当の愛とは何かをあぶりだしていきます。恋愛は異性を対象とするべきなのか。見るものに問題提起をする作品です。
作・演出/山﨑望海さん
万人に受けなくてもいい。わかる人だけわかってもらえたら、という気持ちであえてマイノリティをテーマにした作品にしました。恋愛は異性同士がするものという風潮から、同性同士の恋愛も認知されつつあります。そこで『本当の愛とは何か?』という問題提起をしました。劇中では『愛とは自己犠牲』という結論を出していますが、人それぞれ答えがあると思います。愛について考えるきっかけになれば嬉しいです。
『はじまりの雨。』
友だちができない女性が主人公。そこに突然現れた正体不明の男性。しかし、主人公はそんな男性に心を開き、悩みを打ち明けます。「同性の女の子と友だちになりたい。一緒に恋バナがしたい!」。そう願う主人公は積極的に自分から話しかけ、友だちをつくっていきますが、実はそれは彼女の妄想だったのです。そして最後には思いがけない結末を迎えます。
作・演出/淵上由貴さん
発想のきっかけは大学1年生から可愛がっている犬のぬいぐるみ。これを劇中に登場させたいという想いでした。ぬいぐるみが出てくるとハートフルな路線になりがちなので、それでは面白くないと思い、ホラーっぽい要素を加えました。テーマは『理想と現実』。こうありたいと思う理想と実際はその通りにならない現実のギャップを、ぬいぐるみを軸に描きました。ゼミに入りたてのときは思うように脚本が書けませんでしたが、1つの作品にまとめられたことに成長を実感しています。
総評
創造表現学部 創造表現学科 創作表現専攻
刈馬カオス 先生
大学でゼミを受け持つのは私自身、初めての経験で試行錯誤の連続でした。しかし、劇作家・演出家を生業にしている私なので、ゼミの締めくくりは卒業公演をやろうと決めていました。現場の人間が指導するなら、現場に立たせることが最良だと考えたからです。
学生たちはみな仲が良く、チームワークを発揮してくれました。その成果が今回の公演にも表れていたと思います。この後、ゼミ生はそれぞれ新しい道を歩むことになります。中には演劇を続けない学生もいることでしょう。しかし、他人と一緒に同じ作品をつくりあげるという経験は、大きな宝物であり、どんな道に進んだとしても、今後の社会生活でかならず活かされると思っています。ゼミでの経験をもとに、新しい社会、新しい時代をつくっていく人間になってほしいですね。