追究

2020年10月09日

心理学部 学部教員による特別対談「自閉スペクトラム症児・者の社会参加支援―社会参加不安と自己の生成―」

心理学部 学部教員による特別対談「自閉スペクトラム症児・者の社会参加支援―社会参加不安と自己の生成―」

2020年8月6日(木) 長久手キャンパス 心理学部長室

自閉スペクトラム症児・者の社会参加における支援について、
後藤先生に長年の研究をもとに語っていただきました。

 8月6日(木)、2021年3月をもって本学を退職される心理学部の後藤秀爾教授の退職記念行事の1つとして、後藤秀爾教授と髙橋昇教授による特別対談がおこなわれました。対談のテーマは「自閉スペクトラム症児・者の社会参加支援―社会参加不安と自己の生成―」です。髙橋先生が聞き手となり、発達障がいや愛着障がいのある子どもたちの発達支援について長年研究してきた後藤先生に、自閉スペクトラム症児・者の社会参加における課題や支援方法について伺いました。

心理学部 学部教員による特別対談「自閉スペクトラム症児・者の社会参加支援―社会参加不安と自己の生成―」

心理学部 学部教員による特別対談「自閉スペクトラム症児・者の社会参加支援―社会参加不安と自己の生成―」

 自閉スペクトラム症とは、脳の機能障がいから日常生活や社会生活においてさまざまな問題が生じる発達障がいのひとつです。症状や重症度には個人差がありますが、言語やコミュニケーションに障がいがあることが多く、社会参加に不安を抱える人も少なくありません。後藤先生は自閉スペクトラム症児・者が自らの能力を社会で発揮できるようにするためには、青年期までにどのような支援をするとよいのか下記10のポイントにまとめて解説。これまでかかわってきた自閉症スペクトラム症児・者の具体的なエピソードを交え、個々の特性や、その特性に合わせた支援方法の考え方について語りました。

―自閉スペクトラム症児・者 社会参加支援10のポイント―

① 毎日の生活リズムを安定させること
② 自己の存在感を確認する場所と手段を確保すること
③ 社会参加できるキャラクターイメージを確認すること
④ 自己内の不安をセルフモニタリングすること
⑤ 他者に向けて、具体的に助けを求められるようにすること
⑥ 自分の興味・関心や特異な能力について自覚し、それを社会参加に活かそうとする意識を持つこと
⑦ 社会参加場面で混乱したときの具体的な対処方法を身につけること
⑧ 具体的な社会参加場面をシミュレーションする時間と場所を確保すること
⑨ 日常的に自己イメージの確認ができる場を確保すること
⑩ 内的作業と外的作業のバランスを取ること

心理学部 学部教員による特別対談「自閉スペクトラム症児・者の社会参加支援―社会参加不安と自己の生成―」

心理学部 学部教員による特別対談「自閉スペクトラム症児・者の社会参加支援―社会参加不安と自己の生成―」

 さらに、髙橋先生は自閉症スペクトラム症児・者を取り巻く社会環境から見た支援についても質問。後藤先生は家庭、学校、職場での理解が必要だと述べた上で、それぞれの集団だけで抱えこまず、社会全体でアプローチすることの大切さに言及しました。「教員や医師など多様な職種をつなぎ、地域社会のコラボレーションを実現するためには、有能なコーディネーターが必要です。近年では心理専門職に対して『心理面接だけではなく、現場に出て教えてほしい』というニーズが増えてきています。地域づくりにかかわり、コーディネーターとしての役割を発揮できるような心理専門職が、さまざまな現場で求められています」と、現代社会における心理専門職の在り方について語りました。

 最後に後藤先生は心理専門職をめざす学生たちに向けて「これからの時代の心理専門職には、社会の中で自分にどのような役割が必要とされているかという視点が大切です。自分がおこなっていることが社会においてどのような意味を持つか意識し、それを人に伝えていく力を磨いてください。専門職と言われるような立場が実質化できるかどうかは、若い人たちの能力にかかっています。自閉症スペクトラム症児・者と同じく、自分の持ち味をどう発揮するかということに注力し、社会の中で能力を発揮してほしいと思います」と力強くアドバイスを送りました。
 自閉スペクトラム症児・者の社会参加支援について、後藤先生の研究や支援経験をもとに学ぶことができた今回の特別対談。自閉スペクトラム症児・者への理解を深めるとともに、心理分野を志す学生たちにとって心理専門職の役割と意義をあらためて見つめ直すきっかけとなったことでしょう。

 対談の詳細は、愛知淑徳大学心理学会が発行する「コミュニケーションと人間vol.30」(2021年3月発行予定)に掲載されます。