追究

2021年03月02日

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

2021年1月18日(月) 長久手キャンパス8号棟5階 プレゼンテーションルーム

建築・インテリアデザイン専攻の3年生が、自らの作品を
建築家にご講評いただく「最終講評会」に挑みました。

 創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻の3年生を対象に開講されている「空間設計Ⅳ」は、与えられた設計課題をグループや個人で取り組み、課題解決や新たな提案を含んだ設計プランを計画し、模型とパネルで表現する授業です。3年次の集大成として位置づけられており、課題に対して自分なりの最適な解を見つける「問題解決力」はもちろん、自分の案に対してとことんブラッシュアップする「探究力」や、そのプランが人々や暮らしにどのような影響を与えるかをイメージする「想像力」などを養います。
 この授業の最後には、学生たちが授業で取り組んだ2つの課題に対して、学外から建築家を講師としてお招きしてご講評いただく「最終講評会」を実施。今年度は1月18日(月)におこなわれ、「自分の通った小学校の現代化プロジェクト」と「都心の文化交流施設」について、建築家の西澤徹夫氏にご講評いただきました。

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 最終講評会は、建築家西澤徹夫氏の講演会からスタート。西澤氏は「全体を考えることが建築において大切である」と学生たちに語り掛け、建築物だけにとどまらず、さまざまなアート作品も取り上げて、空間を構成しているものすべてに目を向ける必要があることを伝えました。さらに、西澤氏は自身が手掛けた「京都市京セラ美術館」のリニューアルプロジェクトを紹介。京都市美術館本館は、現存する日本の公立美術館の中で最も古い建築で、80年余りの歴史がある建物の良さや性格を引継ぎつつ、いかに、現代に対応した建築にリニューアルするのかがポイントでした。西澤氏は多くの写真を提示しながら「敷地内の構成要素(壁や窓、タイルなど)はそのままに、“地下を掘り下げて新たなエントランスをつくる”ことで、建物に正面性という新たな魅力を生んだこと」「リニューアルに際し、美術館を訪れる人だけでなく、近隣で暮らす人々まで意識した結果、常に人が行き来する空間となったこと」などを解説し、まずは対象敷地や建築物をしっかりと捉え、そのうえでその周りにまで目を向けて考えることが、新たな価値を生むことにつながると、レクチャーを締めくくりました。

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 次はいよいよ、学生たちの作品の講評会です。第一審査は、「パネルディスカッション」。8号棟5階の廊下やフリースペースに学生たちの「作品(模型)」とその作品のコンセプトや概要がまとめられた「パネル」がずらりと並べられ、学生たちはその前で待機。審査員となる西澤氏や授業を担当する本学の先生方がその一つひとつを周り、学生に設計の意図などを問いかけながら、それぞれの作品を評価していきました。「この部分は階段ですか?」「これはどこにつながるのですか?」と先生方は、学生たちに次々と質問。「もっと大胆に空間を動かしてもいいかもしれないですね」「傾斜した床をもっと活かせるアイデアがあってもよかったかもしれません」とアドバイスも交えながら、学生たちの作品を丁寧に評価していきました。

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 第二審査に進んだのは、「自分の通った小学校の現代化プロジェクト」から3作品、「都心の文化交流施設」から7作品。これらの作品を制作した学生たちは、持ち時間3分程度でプレゼンテーションを行い、先生方から講評をいただきました。西澤氏は「分散させたスペースで何をするのかがイメージできていて良いと思うけれど、“職員室”、“保健室”などの配置の根拠が乏しいように思える」「この提案においては正面性が大切なように思えるけれど、プランに反映されていないことは惜しいと感じる。とはいうものの、高低差のある模型もきちんと作りこんでいるし、何よりも絵もプレゼンもうまくて、頭の中がきちんと整頓されていることがわかって素晴らしいと思った」「アイデアや前段部分は面白いし、新たな発見もあって素晴らしいと思うけれど、コンセプトづくりで終わってしまっていて“設計”に入れていない。それは非常にもったいないこと。せっかくのアイデアに対して、どうやって表現していくのかをもっと追究してほしい」と、それぞれの作品に対して良いところと悪いところを的確に講評。西澤氏のコメントを受けた学生たちにとって、新たな気づきを得られる貴重な機会となったことでしょう。
 厳正なる審査の結果、2月におこなわれる優秀作品展に出品する6作品と、西澤氏独自の視点で評価した「西澤賞」3作品を選出。西澤賞に選ばれた学生は、一人ひとりに合わせた西澤氏お勧めの本やDVDが手渡され、「この作品に触れて、自分に足りない視点を鍛えてください」とエールをおくられました。
 本格的な講評会を通じて、建築設計に対する多角的なアプローチやプランニングしていくうえで大切な視点を学ぶことができた学生たち。この経験を最終学年の授業や卒業制作に存分に活かし、自らがめざす表現を追究していくことでしょう。

優秀作品に選出された6作品

『滞在し、繋がる小学校』 海川 日南 

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 「地域の人と関われる小学校をつくりたい」と、1階に公園のある小学校を提案。子どもの過ごし方に合わせて空間を分け、構造的にも魅力的な建築に仕上げました。

『分断する意識、分裂する学校、交差する可能性』 森河 京子

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 広大な敷地に4つの小学校を計画。理科室や家庭科室などの特別教室を分散させることで、1日のカリキュラムが終わっている頃には、地域を1周できる小学校を提案しました。

『心のまち』 渡邉 愛友

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 街のような小学校をつくることで、この地の連携を強めたいと提案。各教室に取り囲まれてできた道では、お祭りや陶芸教室などを開催し、地域とのつながりも創造したいと考えました。

『静と、動と』  荒川 七瑚+井戸 和夏菜+長谷川 葵

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 「静」の図書館と「動」のポケットパークを融合させた複合施設。「静」と「動」のマテリアルを分け、複雑にからめ合わせることで、両者が緩やかに混ざり合う空間を創出しました。

『サカエ ノ サカイ』 岡田 直也+森 結萌+吉田 奈央

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 地下に複数の階層を設け、そのうちの一つは「駅」、もう一つは「図書館」とした。この施設は上から見下ろすことができ、それぞれの階層が複雑に重なり合った様子が楽しめます。

『緩衝建築』 中村 俊太+渡邉 愛友

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻「空間設計Ⅳ」最終講評会

 対象敷地内に、都市計画道路と熱田台地がぶつかる場所があることを発見。この衝突を個性と捉え、「日常的なスケール」と「商業的なスケール」を緩衝させる複合施設を提案しました。