追究

2022年02月25日

文学部 総合英語学科 平林美都子教授 最終講義 「ボストンから消えた地名 マーガレット・アトウッドの『ダンシング・ガールズ』を読む」

文学部 総合英語学科 平林美都子教授 最終講義 「ボストンから消えた地名 マーガレット・アトウッドの『ダンシング・ガールズ』を読む」

2022年 1月20日(木) 長久手キャンパス ミニシアター

英語圏文学を専門にする平林先生の最終講義を実施。
物語を地理的観点から分析するおもしろさを伝えました。

 2022年1月20日 (木)、文学部 総合英語学科 平林美都子教授の最終講義がおこなわれました。平林先生は 1989年に愛知淑徳短期大学の英文学科の教員として赴仕され、英語圏文学を専門としながら、本学のジェンダー教育の醸成にも寄与し、多くの学生を育ててきました。2022年3月をもってご定年を迎えるにあたって、総合英語学科では平林先生の最終講義を開催。3年生が受講しているゼミナールの1コマを最終講義とし、当日は学生はじめ、平林先生とゆかりのある卒業生や教職員などが多く集まり、先生の講義に耳を傾けました。

文学部 総合英語学科 平林美都子教授 最終講義 「ボストンから消えた地名 マーガレット・アトウッドの『ダンシング・ガールズ』を読む」

文学部 総合英語学科 平林美都子教授 最終講義 「ボストンから消えた地名 マーガレット・アトウッドの『ダンシング・ガールズ』を読む」

 はじめに、ご自身の研究歴を振り返り、「研究を通してずっと“ナラティブ”=物語性に興味があった」と紹介。さらに、物語性を持った土地と文学の関係性などにも興味が広がったことを説明し、「土地への感受性のある作者がいかに“土地の記憶”を引き出しながら作品を著していくのか」ということを追究していると語られました。
 最終講義では、カナダの作家・詩人であるマーガレット・アトウッドが著した短編『ダンシング・ガールズ』を取り上げ、物語の舞台であるボストンと物語の関連性を紐解いていきました。平林先生はボストンが誕生した経緯や歴史的な事件を紹介した後、物語の中心である「スカーリー・スクェア」について解説。土地を象徴する劇場があったことや、どんな有名人が暮したのかなどを紹介しつつ、スカーリー・スクェアの繁栄から衰退まで、時代とともに「街の色合い」が徐々に変わっていったと語られました。さらにスカーリー・スクェア衰退後におこなわれた「ボストン再開発」にも話がおよび、開発時と現在の写真などを示しながら、街の成長の様子を伝えていきました。
 歴史的・地理的にスカーリー・スクェアを理解した後、歴史的・地理的コンテクストに従って『ダンシング・ガールズ』を分析。主人公のアンが都市デザインを専攻していたことが極めて重要であること、アンの都市デザインが排他的空間であることは、ボストン再開発機構が意図していたものと重なることなどが土地を知ることでわかり、このアプローチはより深く物語を読み解くことができることを示していきました。最後には「地理的視点をもって考察すると、“アンは異文化理解に対して、知らないことは許容できない”と読み解くことができるのではないか」とまとめ、文学について土地を知ることで深めていくことのおもしろさを提示し、講義を締めくくられました。

文学部 総合英語学科 平林美都子教授 最終講義 「ボストンから消えた地名 マーガレット・アトウッドの『ダンシング・ガールズ』を読む」

文学部 総合英語学科 平林美都子教授 最終講義 「ボストンから消えた地名 マーガレット・アトウッドの『ダンシング・ガールズ』を読む」

 最後はゼミ生から平林先生に花束が贈られ、すべてのプログラムは終了。終始和やかな雰囲気で進んだ講義は、まるで先生のお人柄を投影しているかのよう。平林先生の厳しくも優しい指導を受けた教え子たちは文学の背景を読み解くことで得た考察力を強みに、社会でも活躍していくことでしょう。