追究

2022年08月26日

創造表現学会主催「コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座」池端宏介氏講演会

創造表現学会主催  「コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座」池端宏介氏講演会

2022年7月16日(土)長久手キャンパス741教室

「伝える」から「伝わる」へ。
地元企業や商品のブランディングについてお話しいただきました。

 表現創造学部メディアプロデュース専攻は、多様化するメディア社会で情報を発信するための知識と表現力を身につけた、メディア業界のエキスパートの育成をめざしています。実践的に学ぶ科目が充実し、広告代理店やデザイン会社、ウェブ企業などで活躍しているメディアのプロフェッショナルが担当する講義も魅力です。
 2022年7月16日(土)には、コピーライター、クリエイティブディレクターとして活躍する池端宏介氏をお招きし、講演会を開催しました。「ブランドのファンを育てる」「商品をもっと売る」「地元の価値を際立たせる」といった課題に、言葉の力と発想力で取り組んできた池端さん。広告やパッケージデザインについて、プロの目線からわかりやすく語っていただきました。その様子をレポートします。

創造表現学会主催「コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座」池端宏介氏講演会

創造表現学会主催「コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座」池端宏介氏講演会

伝えたいことが伝わるように。表現のカタチを変えていくのがぼくの仕事。

 「こんにちは、池端です。宮田先生とのご縁でお招きいただきました。北海道から来ました。今回は、北海道の地域ブランディング事例を紹介しつつ、どの地域でも使える普遍的なものになることを意識してお話ししていきます」とご挨拶されたあと、池端さんが壇上のスライドに映し出したのは、手書き文字で書かれた“「伝える」から「伝わる」へ。”という言葉。「これは僕の仕事のテーマです。伝えたい情報をそのまま伝えても伝わらないので、それが伝わるように表現のカタチを変えていくのが僕の仕事です」と仕事で大切にしていることについて語ることから講演が始まりました。
 日記を書いたり、ダジャレをつくったり、歌詞をつくったり、子どもの頃から「言葉」が好きだった池端さんは、大学卒業後、株式会社日本デザインセンターに入社し、「言葉」を使うコピーライターとしての一歩を踏み出しました。キャッチコピーやネーミングの作成、カタログ制作など、コピーライターとしてさまざまな経験を重ねたあと、生まれ故郷である北海道へ戻り、地域のブランディングに携わるようになりました。そのキッカケとなったのが、長期熟成させた北海道産ジャガイモ「よくねたいも」のネーミング。商品の一番の魅力がネーミングからもパッケージからも伝わってこない、この問題点を「言葉」と「デザイン」の力で解決するブランディングという仕事に力を入れていくようになりました。以来、北海道の農家や道の駅をはじめ、ブランド豚、地元のバス会社、函館のスイーツなど、幅広い業種のブランディングを手がけています。

デザインは、問題を解決するための考え方や仕組みだと思う。

 ブランディングの事例を紹介する前に、池端さんは、アートとデザインの違いと、ブランディング自体の考え方について語りました。「アートは自己表現で、デザインは課題解決。デザインは、問題を解決するために、企業や商品などをより良くするための考え方や仕組みのことだと考えています」。ブランディングについては、「独自の価値をつくり、差別化をすることです。例えば、広告で考えるとわかりやすくて、著名人をモデルに使って企業のイメージを伝えるブランド広告は、おトク感やスペックを打ち出す販促広告とは方向性が違います。ブランド広告ファンづくり、販促広告は売上づくり、なんです」と解説しました。

創造表現学会主催「コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座」池端宏介氏講演会

創造表現学会主催「コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座」池端宏介氏講演会

パッケージデザインとネーミングをリニューアルしたら売上が3倍に。

 続いて、実際に池端さんがブランディングを手がけた池田食品株式会社の事例をあげて、どのようにブランド化に取り組んでいったのか、写真とともに説明していきました。
 池田食品は、主に豆菓子の製造・販売をおこなう札幌市の企業。和風のイメージが強すぎたパッケージと商品名をリニューアルすることから取り掛かりました。「クセの強い筆文字や雲龍模様はどうなんだ?」「若者に買いたいと思わせるには?」「情報が多過ぎないか?」など、客観的かつ多角的に分析し、さまざまなプランを検討して生まれたデザインと商品名は、若々しく洗練されたものでした。「さっぽろ黒大豆」というネーミングは、北海道のお土産として販売することを意識しました。すると商品の中身は変わっていないのに、売上はなんと3倍に。それ以降、少しずつリニューアルを依頼される商品が増え、ブランドリニューアルへと発展。シンボルマークのリニューアルでは、会社の歴史も調べ、乾物屋から始まった池田食品のアイデンティティともいえる椎茸をモチーフにマークを作成しました。「シンボルマークが決まれば、包装紙や店舗の内装・ディスプレイなど水平展開ができるんです。WEB サイトもリニューアルしました」と語る池端さん。「ブランディングがうまくいくと話題になり、さまざまなメディアで取り上げられ、無料でどんどん宣伝してもらえるという波及効果も生まれます。ブランディングは費用がかかりますが、費用対効果は高いと思います」とブランディングがもたらすさまざまな効果についても言及しました。
 最後に池端さんは、「ブランディングとは、ととのえることです。情報をととのえる。見た目をととのえる。気持ちをととのえる。情報をととのええることで、「らしさ」が見えてきます。見た目をととのえることで、一貫性・統一性のあるデザインができます。気持ちをととのえることで、インナーのモチベーションが上がり一体感が生まれます」とブランディングの定義についてもふれました。「まだ出会ってないファンを増やすこともブランディングの目的のひとつ。そのためには、少しずつ、継続的に。ブランディングが土台にあると、一貫性のある戦略が提案できます」とブランディングの目的について語り、締めくくりました。

「教訓あるある」と「活発な質疑応答」で盛り上がった講演会後半。

 ブランディングについての講演が終わると、質疑応答をはさんで、講演会は後半へ。池端さんがこれまでデザインやネーミングを考える際に反面教師としてきた「あるある」について、事例をあげながら紹介しました。デザインにおいては、商品イメージに合わないクセの強い書体(筆文字やPOP文字など)を使ったデザインを取り上げ「文字はブランドの顔つきを決める大切な要素です」と解説。ネーミングに関しては、安易なダジャレは安っぽくなるとアドバイスしました。また、プランの決め方、選び方にも教訓があると語り、多数決は必ずしも正解ではない、アンケート結果だけに頼らないなど、クリエイティブな仕事に関心のある学生には参考となる貴重なお話を伺うことができました。

創造表現学会主催「コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座」池端宏介氏講演会

創造表現学会主催「コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座」池端宏介氏講演会

 講演が終了し、2回目の質疑応答タイムへ。挙手制ではなく、スマホからネットを介して質問を送るという気軽な方式だったため、約30件の質問が寄せられました。「コピーライターとして大切にしていることは?」「やりがいを感じるときは?」「これはやられた!と感じた広告は?」「コピーライターになるには?」など、たくさんの質問に対して池端さんは「ラジオの生放送中に寄せられたコメントに答えるみたいで楽しいですね」と手元のパソコンに送られてきた質問を一つひとつ丁寧に読み上げ、回答してくださいました。『コピーライター的敷居の低い地域ブランド講座』というタイトルそのままに、池端さんの親しみやすい人柄と地域ブランドの魅力が伝わった講演会となりました。