追究

2022年08月31日

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

2022年7月19日(火)、26日(火) 星が丘キャンパス

国内外で日本語教師として活躍する3名を迎えての講演会。
多文化共生や、現在の日本語教育事情について理解を深めました。

 本学は交流文化学部を中心に、さまざまな文化的背景を持つ人々との交流を通して、相互理解と尊重に基づく社会の発展に、積極的に貢献する人材の育成を目指します。国内外での語学研修やフィールドスタディなどを組み込み、実践的な行動力を高めます。

 2022年7月19日(火)と26日(火)の2日間にわたり、日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」が開催されました。日本語教育に興味がある学生や、将来日本語教師を目指す学生たちが多く集まりました。

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

 1日目は、小牧市国際交流協会主任講師の鈴木かおり氏をお招きし、「生活者に対する日本語教育」をテーマにお話ししていただきました。鈴木先生は、外国人住民が多い小牧市で、地域の日本語教育に携わっていらっしゃいます。1992年の立ち上げから現在に至るまで、約30年にわたって、献身的に教室を支えてこられました。1クラスから始まった教室も、現在は日曜日に朝から夜までレベル別に9クラスを開講し、一日に200名ほどの学習者が日本語を学びにきています。そしてこれまでの学習者数は、なんと延べ13,000名に上るそうです。
 こうした、地域の日本語教室では、日本社会の政策、経済等の影響を直接受け、安定して学習を継続することが難しい学習者も多くいます。鈴木先生はそうした環境での日本語教育で何が重要か、どこを目指して授業をしていく必要があるかについて、ご経験を踏まえてお話しくださいました。
 地域の日本語教室では、学ぶ側も教える側もその地域の住民です。共に生活する仲間として、これからの多文化共生社会を支えるため、私たち一人ひとりがどう外国人住民と関わるべきなのか、学生たちに伝えてくださいました。

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

 2日目は、名古屋 YMCA 日本語学院の専任教員・池田咲月氏と、フランスのグルノーブル・アルプ大学の常勤講師・小川満梨奈氏の2名をお招きし、講演会を開催。本学の卒業生であり、現在日本語教育に携わっている先輩方に、日本語教師となるまでの道のりや、現在の勤務先での日本語教育事情についてお話を伺いました。
 まずお話ししてくださったのは池田先生です。書類選考や面接試験、模擬授業の試験などを経て、現在の職場で日本語教師として働き始めました。15の国と地域の学生が通うYMCAでは、ネパールや台湾、ベトナム、ミャンマー、中国、フィリピンなど、多様な国籍の学生が勉強しています。専門学校や大学への進学、日本での就職のためなど、学生たちが日本語学校へ通う理由はさまざま。中には、「母国で日本語教育に関わりたい」という学生もいるそうです。初級クラスと中上級クラスに分け、学生たちのレベルに合わせた授業を実施。池田先生は授業だけでなく、テストやカリキュラム作成、授業準備など、専任教師ならではの仕事についてもお話ししてくださいました。また、オンラインツールの活用によるICT化や、反転授業の導入、さらに、海外からの受講希望者に対するzoomでの授業と、国内での対面授業を同時に行う「ハイフレックス型」の授業など、現在の日本語教育事情について学生たちに丁寧に説明してくださいました。池田先生は最後に「外国が好きな人、日本語教師として頑張ってみたいという人はぜひ目指してみてください」と学生たちにメッセージを伝え、締めくくりました。

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

 続いて小川先生のお話へ。小川先生はもともと海外での日本語教育に興味があり、ヨーロッパの日本語教師会での応募を見つけ、採用試験を受けることになったそうです。日本語とフランス語で履歴書と志望動機、授業案を作成し、提出。面接を受け合格し、2021年9月からフランスのグルノーブル・アルプ大学で日本語教師として働いています。グルノーブル・アルプ大学では、クラス担当教師が授業プラン、内容、宿題、試験問題など、すべて考えるのが特徴。特に1年目は苦戦するものの、日本語教師として大きく成長できると小川先生は話します。学生たちは日本語や英語のほか、社会科学の授業を受けていますが、個人個人の勉強に対するモチベーションの差が大きく、「日本のアニメが好きなので、少し日本語を勉強してみたい」という学生から、「日本に留学したい、日本で働きたい」という学生までさまざま。日本語学習に対するモチベーションが違っても、学生全員がなるべく楽しく授業に参加できるよう、小川先生は授業の中にアニメやゲームの話を盛り込んだり、アクティビティを取り入れたりなど、いろいろな工夫をしています。「学生たちが楽しいと思える授業を目指し、2年目も頑張ります」と決意を語り、お話を終えました。

 最後に、池田先生と小川先生のスピーチを熱心に聞いていた本学の学生たちに向け、山本裕子先生は「2人とも学生時代からやりたいことが明確で、一つ一つの課題に真面目に、熱心に取り組んでいました。それが今の活躍につながっています。」と話します。「大変なことや厳しい指導もあるけれど、必ず将来役に立つのだと信じて頑張ってほしい」と学生たちの背中を押し、講演会は幕を閉じました。

日本語教育講演会「日本語教育を知ろう」

 今回の講演会を通じて、日本語教師という仕事について改めて知識を深めた学生たち。自分が目指す日本語教師像を胸に、日々の授業や実習に励んでいくことでしょう。