追究

2023年04月06日

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会

2023年1月25日(水)長久手キャンパス 913教室

多様性やマイノリティに関わる卒業論⽂や卒業制作を発表。
学部や専攻の垣根を超えて、現代社会に対する多角的な視点を共有しました。

 本学のジェンダー・女性学研究所では、世界的に見られる性に関わる差別や人権侵害などについて研究し、男女共同参画社会の実現に向けて活動を続けています。その活動の一環として主催を務めるのが「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」です。各学科・専攻の卒業課題として取り組まれた論文・制作物のうち、ジェンダー問題やダイバーシティについて取り扱っているものを発表します。2023年1月25日(水)に実施された第15回の報告会では、性や多様性の課題について、研究分野の異なる学生たちが、それぞれの視点で追求した成果を共有しました。研究を通じて得た視点や知見を、学部や学科を超えて広く紹介します。

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会

 文学部 国文学科の学生は『ババヤガの夜』(著:王谷晶)という「暴力衝動」を持つ女性が人間社会に馴染めないことへの葛藤などを描いた小説について、さまざまな解釈を踏まえて論文を作成しました。この作品には語り手が故意に主人公の考えを説明する描写があり、それについて「抑圧されている人の思いを解釈し、代弁することも暴力的ではないか」という問題提起をおこないました。発表を聞いた先生からは「いろいろな角度から切り込んでいき、疑問を見つける姿勢が素晴らしい」と嬉しいコメントをいただきました。

 続いて、創造表現学部 創作表現専攻の学生は、自作の漫画で「マイノリティと差別構造」について問題提起しました。“同性愛者”と“女性”という2点のマイノリティを主軸として、それぞれの抱える抑圧や葛藤と向き合いながら、差別構造からの脱却を目指す構成となっています。しかし本作の読者からの反応として、「男性同性愛者が女性異性愛者に勝つ物語だ」という指摘を受け、「差別構造を打破できていない」ことを実感したそうです。この作品の制作および先生方の指摘を通じて、「マイノリティ同士の問題を併置することの難しさ」を痛感。だからこそ、これらの問題を提起し続けることの重要性を学ぶことができたと語りました。

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会

 創造表現学部 メディアプロデュース専攻の学生は、スカートという防寒性が低く、性的消費の記号としても見られやすい制服からの脱却を目指し、新しい制服デザインを提案しました。ジェンダーレスに配慮しながらも生徒や学校の需要も満たせるように、「毎日普段着として着られる利便性」「高校生という概念を表現できる学生らしさ」「性差や性的表現を感じさせないこと」の3点を意識して制服をデザインしました。袴などの和装をモチーフに、動作機能にゆとりをもたせ、身体の輪郭が出にくいようにし、さまざまな面で着やすいことを心がけて制作したそうです。元々制服が苦手でしたが「時間をかけて制服と向き合ったことで制服への見方が変わり、多様な価値観を理解できるようになりました」と、自分の考え方も多様化したことを明かしました。また、単にジェンダーレス化を進めればよいというわけではなく、男女それぞれのニーズにも配慮したデザインの難しさと面白さを実感できたようです。

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会

 創造表現学部 メディアプロデュース専攻の学生は、同じ景色でも人によって見える色が異なる「色覚多様性」に着目。色を検知する錐体細胞の働きを図にしたものが、楽譜で使われる三連符が似ていると思い、色を音で表現できないかと考えたそうです。錐体細胞の色覚図を参考に色ごとに音を割り振ったり、明度によって調を変えたりして楽曲を制作。卒業展示会でその曲を流したところ、観客からは「色の違いや目の違いを、目と耳の両方で感じられた」と、コンセプト通りの反応をもらえました。先生からも「数字に色を感じる、匂いを色で知覚するなどの特徴をもつ方を共感覚と呼びますが、共感覚を一般の方に体験してもらうという研究はまだ見たことがないので、すごい発想だと思います。研究を進めて学会で論文を発表してほしいくらいです」と、山田さんの着眼点を絶賛。このコメントが、今後の創作における自信やモチベーションにつながったようです。

 多様なマイノリティに関わる論文や制作を通して、培ってきた学びが異なる仲間たちの視点や考え方を学べた学生たち。ジェンダーやダイバーシティといった問題と向き合い、さまざまな知見を得た経験によって、彼らはより広い視野で、より多角的に社会や課題を見つめることができるようになったことでしょう。

第15回「ジェンダー・ダイバーシティ視点の卒業論文・卒業制作」報告会