追究

2023年08月04日

ビジネス学部 私のシゴト学 第5回~第8回

2023年5月17日(水)~6月7日(水) 星が丘キャンパス 55A教室

立場や業界の異なるさまざまな職業人をお招きし、
今後のビジネス社会や仕事への意識について語っていただきました。

 経済や経営をはじめ、幅広い業界で活用可能な知識を学ぶビジネス学部。実践力を身につけるために、学外の企業や団体と連携して取り組む機会が充実しています。「私のシゴト学」もその一つで、ビジネスの現場で活躍されている方々に体験談や仕事への意識を語っていただき、学生たちに将来や仕事について新たな視点をもたらしています。
 今回は5月17日(水)~6月7日(水)におこなわれた第5回~第8回の授業内容をダイジェストで紹介していきます。

【第5回】5月17日 稲沢工業株式会社 代表取締役社長 橋本知保 様

 5回目のゲストスピーカーを務めたのは稲沢工業株式会社の代表取締役社長 橋本様。稲沢工業は鉄やステンレスなどを用いて、配電盤や制御盤をオーダーメイドで製造している会社で、橋本様は21年前に32歳で代表取締役に就任されました。
 就任当初は昔ながらの町工場気質が残っており、若い社員が入社しても教育プログラムなどがないためすぐに辞めてしまうことも多かったそうです。また橋本様が異業種展開によって新規開拓を図るも、制作実績がないため社内からは反発の声が挙がり、質の良い製品を納品できないため業績が上がらず、退職者が増えて生産性が低下するといった悪循環に陥り、「本当にこのまま経営できるのだろうか」と当時の苦悩を語られました。「経営者はどうあるべきか」について悩んでいる中で、ふと子どもの頃にお世話になったお坊さんを思い出し、月に一回開催される比叡山延暦寺の一日回峰行に参加するようになりました。お経を唱えながら山道を歩くといった厳しい修行を通じて、「自分の足で険しい道を歩くこと」への自信が身につき、「人として何が正しいか」が仕事をする上での判断基準となりました。仕事への意識や方針が変わったことで経営状態も改善され、現在は業績が安定し、社内の雰囲気も良好になったそうです。

 ご自身の経験から何年たっても成長することが重要だとして「誰でも仕事に悩むことがあると思いますが、その時こそが成長のチャンスです」と、課題に挑戦し続けること大切さを伝えました。また、就職活動を控える学生に「会社がどんな思いで経営をしているのか、会社が社員にどんな心がけで仕事をしてほしいと思っているのかといった判断基準が、経営理念や会社方針に掲げられているので、よく調べてみてください」と、企業研究に関するアドバイスを送りました。

【第6回】5月24日 東海鉄工株式会社 代表取締役社長 小澤佳之 様/製造部板金課 武藤一生 様

 この日のゲストスピーカーは、自動車部品のプレス加工や金属接工をおこなう東海鉄工株式会社の5代目社長を務める小澤様です。まず会社概要としてプレス加工の工程や加工法、溶接などについて動画を用いて説明していただきました。その後、東海鉄工におけるこの30年間のプレス品や溶接の変遷などを解説。品質と生産性の向上を図り機械を導入したことや、社員のケガのリスクや不良品の排出を減らすために取り組んできたことなどを紹介されました。

 板金課課長の武藤様は、社会人に必要なこととして「チームワークとコミュニケーション」と「リフレッシュ」の2点を挙げました。過去に新しい設備を導入した際にさまざまな問題が生じてしまい、武藤様は精神的にも身体的にも追い込まれたときがあったそうです。とても過酷な状況でしたが、会社が全社体制で支援し、問題箇所をそれぞれの専門部署が迅速に対応したことで解決に導けました。この経験から「仕事は一人では達成できない」と感じ、良いチームワークを構築するために“笑顔”と“即行動”を意識してコミュニケーションをとるようにしたといいます。また、自身の経験を振り返り「自分に合ったリフレッシュ方法を見つけて、心の強化と緩和を図ってください」と、休むことの重要性を伝えました。リフレッシュが疲れを取るだけでなく、精神を強くすることにもつながるという解釈は、学生たちにとって目から鱗だったようです。

 後半では小澤様が社長就任後に経験した3つの失敗と、そこから得た学びを紹介。「新規受注での加工費における見積り(売値)・原価逆転事件」では、情報収集と実直に取り組むことの重要性を再認識し、「材料での見積り(売値)・原価逆転事件」ではリスクマネジメントやコンプライアンスへの意識を改めるきっかけとなったそうです。3つ目の「海外進出の撤退」では、現地の状況を正確に分析し、将来を見据えて判断することの難しさを実感しました。しかしこれらの失敗を通して精神的な忍耐力を培うことができたようで、恵まれた環境や良い家庭、運の良さもあって、リーマンショックや東日本大震災などの困難に乗り越えられたと語りました。最後に学生たちに「困難は永遠には続かない」という言葉を送りました。これは数々の失敗や苦難を経験した小澤様だからこそいえる、説得力あるメッセージでしょう。

【第7回】5⽉31⽇ 株式会社⾼津製作所 代表取締役社⻑ 髙津晋⼀ 様 以下3名

 第7回目となる本授業では、株式会社⾼津製作所の社⻑である髙津様と3名の社員がご登壇。⾃動⾞⽣産設備の開発・製造を担うメーカーに勤める4名に、それぞれの⽴場から働き⽅や考え⽅の「変化」について語っていただきました。
 まず髙津様が「経営者として意識してきた変化」を紹介されました。ChatGPTなどAIサービスの普及によって、シンギュラリティ社会(技術進化により人智を超える社会)が想像以上に早く来ることが推測されています。そして、AIが⼈間の仕事に⼤きな影響を与え、これまで以上に創造⼒や思考⼒が求められるようになるといわれており、企業にとってもシンギュラリティをどのように受け入れ、どのように向き合っていくか、「人」の価値をどう高めていくか、が重要なポイントとなってきます。そのためには、「夢を世界に届けよう」「⼈が⼈らしく活躍する企業であり続けよう」「皆とともに学び続けよう」という3つを新たな理念として掲げ、AIが普及した社会でも、お客さまに感謝されるような企業として成⻑し続けたいと語られました。

 続いて新卒2年目の本⽥様が、学⽣時代の就職活動を経て現在に⾄るまでに⾃⼰成⻑を続けてきた変化を話されました。⾯接で「⼈に寄り添ってくれる」という印象を受けたことから⾼津製作所に⼊社した本⽥様は、⾃分も⼈に寄り添えるようになりたいと思い、⼈事戦略室部を志望。学⽣のときは社会に対してさまざまな不安を感じられていましたが、上司や先輩の⽅々が優しく接してくれたこともあり、⼊社後は想像よりも自分らしく過ごすことができたそうです。本⽥様は、学⽣時代に考えた社会と⼊社後の社会を「学⽣の世界」と「社会⼈の世界」というように表現し、これら2つの世界が区別されていることで、⾃分が社会⼈になった姿をイメージできず不安が⽣じると分析。そのため2つの世界の隔たりを少しでも無くしたいと、意気込みを⼝にされました。
 ⼈事戦略室に所属する⽯塚様は、会社に対する熱い想いと、チームリーダーとして考えてきた変化などについて語られました。⾼津製作所は⾃由度があり、世界初となるプロジェクトも個性的なプロフェッショナルが各々のアイデアを出しながら遂⾏できることが魅⼒だと、⾃社の“推しポイント”を紹介。⼤企業でなくとも技術⼒と発想⼒で、世界の⽣活に関わる仕事をしていることに誇りと⾯⽩さを感じているそうです。学⽣たちへ向けて、変化が激しいこの時代を⽣き抜くために「やらなくてはいけないこと(Must)を全うし、できること(Can)を増やすことで、⾃分のやりたいこと(Will)を手掛けることができます」と、チームを率いる⽴場からメッセージを送られました。

 最後に経営企画本部⻑の宮路様が、ビジネスパーソンに求められる変化について話されました。これまでに海外で様々な仕事に関わってきた宮路様は、現代のグローバリズムについて簡単に解説した後、「これからのビジネス社会では⽇本と海外との境界を意識しないことが重要になると思います」と、現代社会で必要になる考え⽅を紹介。そのうえで現代社会を⽣き抜くためには、「学びにより⾃分の強みを⾝につけること」と「個性や⾃我といったマインドを時代に合わせて変化させていくこと」が必要になると結論付けられました。今後のビジネス社会や働き⽅への意識についてお話しいただいたことで、学⽣たちの将来に対する考え⽅にも変化が⽣じたのではないでしょうか。

【第8回】6⽉7⽇ 東濃信⽤⾦庫 常務理事 ⼟屋博義 様

 最終回のゲストスピーカーとしてご登壇いただいたのは東濃信用金庫の常務理事でいらっしゃる土屋様。信用金庫に勤めてからの数々のエピソードを振り返りながら「シゴト学」について語ってくださいました。

 元々はメーカー志望でしたが、紆余曲折を経て金融マンとなった土屋様。とても厳しい支店長がいる店舗に配属されたことから始まる信金人生は、大変なものでした。当時は長時間労働が当たり前で、怒られることも多々あったそうです。しかし、仕事で大きなミスをしてしまった際には、取引先の方に寛大な心で許していただけたといいます。また、仕事へのモチベーションが下がっていた時に、お客さまのお子さんから「大好きな人」というテーマで自分の絵をプレゼントしてもらったこともあったそうです。これらの思い出から、ご自身も含めて「とうしん」はさまざまな人々に支えられて成り立っていることを再認識。これまで以上にお客さまとの出会いを大切にしていくようになったと語られました。
 人事異動で管理職となった際は慣れない仕事に苦戦しましたが、上司に「周りの人のサポートに甘えることも大切だ」と教えられ、部下に協力してもらいながら役割を全うしてきました。支店長に昇進後は比較的厳しく部下に接していましたが、職員旅行では職員から誕生日をサプライズで祝福してもらったそうです。その際に言われた「お客さまのために、もっと良い仕事をしましょう」という言葉に涙が止まらなかったことも。当時の職員の思いやりを今でも鮮明に覚えていると語られました。進路に悩む学生へのメッセージとして「大企業に入るのももちろん良いですが、中小企業にも優れた技術や経営能力、ビジネスモデルを持っている素晴らしい経営者の方がたくさんいらっしゃいます」と、高いポテンシャルを持つ中小企業も選択肢の一つになり得ることを示しました。

 最後に「現代はさまざまなことが目まぐるしく変化していますが、変化は大きな成長につながります。これからビジネス社会に出られる皆さんの人生が明るく、希望に満ちあふれたものであることを願っております」と、学生への期待を込めたエールを送りました。