追究

2024年10月04日

福祉貢献学部 学術講演会「子どもが自分自身とまわりの世界を理解するということ―アトリエでの活動を通して―」

2024年6月26日(水) 長久手キャンパス 512教室

スウェーデンの就学前教育のプロによる講演会が開催。
学生たちは教育先進国における子どもたちへの向き合い方などを学びました。

 本学の福祉貢献学部では、身体や心理、社会などの基礎知識を学びながら、福祉が必要な人をサポートするための力を身につけていきます。学部の専攻の1つである子ども福祉専攻では、特に、保育士や幼稚園教諭を目指す学生が多く学んでいます。
 2024年6月26日(水)に開催された福祉貢献学部 学術講演会では、スウェーデンの就学前学校(小学校就学前の乳幼児を対象とした学校)に勤めるアニタ・オンネスタム先生と、ソフィア・ロセル先生がご登壇。質の高い教育制度が世界中で注目を集めているスウェーデンの幼児教育や、子どもへの向き合い方などについてお話しいただきました。

 今回お招きしたお二人は「ヴォーガ&ヴィリヤ」という民間の就学前学校に所属されています。ヴォーガ&ヴィリヤをはじめとしたスウェーデンの就学前学校は政府によって採択されたカリキュラムに則って運営されており、そのカリキュラムをもとに子どもたちへのアプローチ方法などを考えているそうです。

 ヴォーガ&ヴィリヤでは、最初から「何が正しいか」「どうすべきか」などを教えるのではなく、段ボールやペン、ブロックなどの素材を与えて、子どもたちが自分から学び、試し、楽しんでもらうようにしているといいます。子どもたちの自由選択の活動を教師とともに行うことで、教師は、その時点での子どもたちの経験や知識、能力などを把握し、それらの情報をもとに教育計画を立てていくと語られました。また、「教師は最終的にできあがった作品に焦点を当てるのではなく、完成までのプロセスと、子どもが活動を通して経験した全てのものごとに注目することが大切です」と、子どもたちの創作活動に対する教師の対応について力説していただきました。

 活動を続けていく中で、子どもたちはほかの子たちとコミュニケーションを取るようになります。意見を言い合ったり、助け合ったりする中で新しい知識や視点を獲得し、感性も磨かれるそうです。そんな子どもたちを教師は少し距離をおいて観察し、子どもたちがより独創的なアイデアが浮かぶようにサポートすることで、自分で考える力や周囲と協力する社会性、自己肯定感の向上につながるといいます。
 しかし、全ての子どもたちが主体的に活動するわけではありません。そのような子どもたちに対し、オンネスタム先生とロセル先生は「子どもは直接活動に参加しなくとも、観察から多くの知識や経験を得ることができます。そのため、積極的な活動への参加を押し付けるべきではありません」と、子どもの意志を尊重すべきだと主張されました。それを踏まえ「教師が子どもの興味を惹く素材を提供すれば、子どもたちは自分から活動するようになるでしょう。教師が最も重視すべきなのは“子どもの活動を制限しないこと”と“子どもの関心を把握すること”です」と語られました。

 最後に、就学前学校の教員に求められることとして「子どもたちの疑問や選択に耳を傾けること」「繰り返し挑戦できる機会を用意すること」「振り返りや問題提起できるような授業を展開すること」などを挙げられました。これらによって子どもたちが、質問や記録、仮説の立案などをおこなうといった学術的習慣を身につけることができるといいます。そして学術的習慣を通して、コミュニケーション能力や想像力、他人を思いやる力などを高めることは「子どもの権利」であると話され、講演を締めくくられました。

 オンネスタム先生とロセル先生のお話を通して、スウェーデンにおける子どもたちへの向き合い方や教員の在り方について学べた学生たち。子どもたちの自由意志を尊重する姿勢や子どもたちが主体的に活動したくなる環境など、乳幼児の保育の現場で生かせる多様な知見を得られたことでしょう。今後も福祉貢献学部では、講演会や福祉の現場での体験をはじめとした実践力につながる学びを提供し、学生たちの成長を後押ししていきます。