追究
2024年08月27日
令和6年 心理学会講演会 産業応用の心理学
2024年7月3日(水) 長久手キャンパス 7号棟4階741教室
産業における心理学の活かし方を知る講演。
心理学の学びが、社会においていかに有用かについて実感する機会になりました。
愛知淑徳大学の心理学部は、多様な人が個性を活かして生きることができる社会をつくる人材の育成をめざして開設され、心理学を幅広く体系的に学ぶことで人の心をより深く見つめる力を育み、人が人らしく生きられる社会の創造に貢献する人材を育成しています。
心理学部では毎年、外部講師を招いた講演会を開催しており、今年も2024年7月3日(水)に中京大学の教員として認知心理学を研究されている宮﨑由樹先生を講師としてお招きし、「産業応用の心理学」をテーマにお話をいただきました。
まず宮﨑先生がお話されたのは、心理学の多様な領域・分野について。土台となるのが「基礎心理学」で、これは心や行動に関する基本的な原理や理論を研究するものです。その土台の上に成り立つのが「応用心理学」で、これは基礎心理学で得られた知見で現実の問題解決をおこなうものであり、どのように現実の問題解決に生かせるかを検討していく学問であると、前提のお話をいただきました。
続いて応用心理学が活用される主な領域として、臨床心理学の知識や方法を応用する「カウンセリング」、産業・組織心理学の知識や方法を応用する「職場の改善」、犯罪・捜査心理学の知識や方法を応用する「妥当な取り調べ」などを挙げられました。そのほかにも、心理検査、発達、環境、教育、臨床、老年、健康、経済、司法、スポーツ、交通、認知、キャリア、現場実践、歴史など多様な応用対象を紹介。講義に聞き入る学生たちは、心理学が活用できる対象の幅広さに驚いた様子でした。
心理学の概要に続いてお話されたのが、先生の専門領域におけるキーワードの一つ「非注意による見落とし」です。これは、他の情報に注意が向いていると、たとえ目には映っていても、予期しない出来事の出現に気づくことができない現象のこと。エレベーターホールの前でバスケットボールのパスをする映像による実験を例に挙げ、学生へ問いかけながら、解説されました。
さらに心理学を産業に応用された宮﨑先生の産学連携事例から、心理学的要素の解説をしてくださいました。ある生活用品メーカーとの連携事例では、多くの人が自宅において家具などのスキマ掃除ができないことへストレスを感じていることに着目。掃除用のワイパーを対象に、掃除そのものだけでなく、掃除後のポジティブな気分が増大することまで検証で突き止め、商品開発につなげていったそうです。
また、マスクをした顔の表情認識の研究は、ヨーロッパやアメリカに偏っていたことから、東アジアでも研究をする必要性に気づき、メーカーと共同研究を開始されました。通常の口が見えないマスクに比べ、口元が透明で口の表情や動きが見えるマスクの場合、怒り・恐怖・喜びといった表情の認識率が向上したことを実験で明らかにし、それを口が見えるマスクの研究開発の価値につなげていかれたそうです。口が見えるマスクは、手話で話す際に口の動きがとても重要であり、動きがマスクによって見えなくなることで、手話でコミュニケーションがとりづらいという意見を受けて研究開発された商品であり、ユニバーサルデザインの観点からも、とても有用な実験であると評価されています。
心理学の知識が、社会において、いかに活用できるかを知った学生たち。自身のキャリアを考える際に、心理学の学びが自身の強みとなり、さらには社会に出てからも大いに活かせることを知ることができ、大きな自信につながったようです。今後も、心理学部では、学生たちの視野を広げる様々な講演会やイベントを企画し、成長の場を提供していきます。