追究

2024年10月23日

高校生のためのスタートアップ心理学講座

2024年8月21日(水)長久手キャンパス 741教室

心理学部の専任教員が高校生向けに講座を実施。心理学のさまざまな領域について、身近なテーマで受講者の興味を高めました。

 心理学部では毎年「高校生のためのスタートアップ心理学講座」を開催しています。多彩な心理学の領域や、将来どんな仕事に生かせるのかなど、専門分野の教員が高校生の受講者たちに向けて講座をおこないます。今回は、8月21日(水)におこなわれた心理学講座の内容について、ダイジェストで紹介します。

1限 心理学とは/丹藤克也先生

 まず始めに丹藤克也先生が講座の導入として「心理学とはどういうものか?」について解説されました。心理学は誤解されることが多く、「イメージ」と「実際」にギャップが生まれることもあります。イメージとして「人の心が読めるようになる」「人を自由自在に操れる」「心の病やカウンセリングに活用するだけ」など誤解されたりもしますが、実際は「心や行動の法則について科学的に探究・解明する」学問であり、統計学が使われることも多いと説明。また、心理学を学ぶことは他人だけでなく、自分を知ることにもつながるのだと伝え、本講座への期待と学習意欲を高めました。

2限 生理・認知心理学/加藤公子先生

 2限目は加藤公子先生が「生理・認知心理学」をテーマに、目や耳から受け取った情報を認識する心のはたらきについて解説されました。「今日ここ(大学)に来るまでの間で、どんなことを覚えていますか?」という加藤先生の問いかけに、思いを巡らす高校生たち。記憶に残すには注意を向けることが大事で、それと同時にいらないものを排除することも必要なことだと説明されました。また、脳波記録から注意の量を推測する方法、発汗などの自律神経反応から記憶の有無を確認する「ポリグラフ検査」について説明され、この検査を体験する心理学部の実践的な授業内容にも触れました。

3限 社会心理学/小川一美先生

 小川一美先生からは、人と人とのかかわりや集団・社会の中での心のはたらきを明らかにする「社会心理学」領域の講義がおこなわれました。まず、「あなたはどんな性格?」との問いかけがあり、高校生たちは自問します。小川先生は、一般の人は性格をはかる物差しを持っていないため、自分の性格ですら他者と比較して判断することが多いと説明。また、他者がいることで自分の行動が変わる例として、得意なことは1人でやるより成果が上がるが、苦手なことは1人でやるより成果が下がる傾向にあるという話に、受講生たちは大きくうなずいていました。さらには、実在する人気アニメの主人公を題材にした簡単な実験を通して、他者に対する印象の抱き方の特徴を解説。同じ人物に対しても人によって捉え方が全然違うという実験結果には、高校生たちから驚きの声も。「人は、偏った情報で偏った判断をしがち」ということを体感しながら学び、新たな気づきとなったようです。

発達心理学/坂田陽子先生

 人の一生涯にわたる心の発達的変化について研究する発達心理学の領域については、デジタルゲームが及ぼす影響について坂田陽子先生が解説されました。0~2歳の赤ちゃんの脳はどのような状態か。また、赤ちゃんの脳にとってテレビやタブレットなどのデジタル刺激はどのような影響があるのか。さらには幼児期から児童期にかけては、脳はどのように発達していくか――など多様な内容を展開。坂田先生によると、脳は20歳までずっと発達し続けており、なかでも抑制機能をつかさどる脳の前頭前野が発達しきっていない10代にとって、強い刺激のあるデジタルゲームやスマホでの動画視聴は脳の発達に悪い影響がある一方で、注意力が増すといった良い影響もあるそうです。坂田先生はそれらを詳しく解説したのち、デジタルゲームやスマホの良い面と悪い面の両方の知識を持ち、使用の仕方を自分で考えることが大事だと促しました。

臨床心理学/石川佳奈先生

 国家資格である「公認心理師」が国家的な要請から誕生したように,社会的な関心が高まっている臨床心理学。公認心理師や臨床心理士を目指すうえで必須となるこの領域について,石川佳奈先生は科学的な探求と心理的な問題への介入の2つの側面を備える領域であると説明しました。さまざまな領域の心理学の理論や研究成果を土台に,人の苦悩や心理的問題の改善,解決を心理療法という技術によって支援していく臨床心理学の概要を簡単な思考課題を用いて解説したうえで,そのような知識や技術を活かすことのできる仕事についても紹介されました。例えば,臨床心理学を活かした仕事は,一般的なイメージのある病院・クリニックなどの医療分野だけでなく,スクールカウンセラーをはじめとする教育分野や児童相談所などの福祉分野,それ以外にも労働分野,司法分野など多岐にわたることを解説し,高校生たちの学問や資格への意欲を高めました。

愛知淑徳大学 心理学部の紹介/松尾貴司先生

 本講座の最後には、松尾貴司先生が本学の心理学部での履修過程や、目標達成に必要なスキルを身につけることのできる学習環境について紹介されました。心理学部では専任教員の指導のもと、1年次で基礎知識をしっかりと身につけ、2年次からは4つの領域を専門的に学びます。3・4年次に卒業研究をおこない卒業論文をまとめることを目標に、「人間の行動と心についての理解力」「実証的分析力・論理的思考力」「問題発見・解決力」「コミュニケーション力」の4つの力を高めていきます。充実したカリキュラムに加え、学習・研究のための施設や設備が整っていること、資格取得のサポート体制も万全であることを伝え、本講座を締めくくりました。

 受講した高校生たちは、スタートアップ心理学講座を通して心理学についてより具体的に実態を捉え、愛知淑徳大学の心理学部で学ぶ未来について、明確なイメージを持てるようになったのではないでしょうか。本学では現役生はもちろん、卒業生や未来の愛知淑徳大学の学生とのつながりを大切に、活動や学びをサポートしています。